第31話~ティーブとの再会~
投稿が遅くなり大変申し訳ございません。
インフルエンザにより活動を休止しておりました。
本日より再開しますので引き続きよろしくお願いいたします。
炎で攻撃していたのが噓のように、メグは軽い足取りで歩いていく。それに引っ張られるファニー。辺りは次第にただの洞窟ではなく、ところどころに朽ちた建造物が残るドワーフの遺跡に戻り、カルミアに先導されながらしばらくさまよった。
「あっティーブ」
やっと見つけた従者の姿。大声で呼びかけようとして、なかなか声が出ない。小声で呟くだけだったが、隣でメグがまた口元をゆがませていた。
「ファニー様。ご無事でしたか」
「う、うん。心配かけてゴメンね」
いつもと変わらないはずのティーブの真剣な眼差しを、直視できない。目を逸らしたまま、ずっと深呼吸を続けていた。
「どうかなさいましたか?お怪我でも」
「ううん。そうじゃない、大丈夫」
「左様ですか」
ティーブはうろうろしながらファニーに視線を向け続けた。無遠慮な眼差しから身をよじらせて逃げようとしたところ、両肩をしっかりと手で掴まれ固定されてしまう。
(メグ。ニヤニヤしすぎじゃない?)
手をどけながら振り返ると、目を輝かせるメグがいた。ウィンクしながらアゴでティーブのことを示している。
「ファニー様?そちらの方は」
「あっそうだね。メグ、赤の賢者なんだって、えっ、ちょっ」
途端に剣を抜き払うティーブ。カルミアのことを睨みつけながら、剣の切っ先はずっとメグに向けられていた。
「ファニー様。こちらへ」
「えっ?えぇ?」
「赤の賢者は敵と聞いています。カルミア様、なぜ連れてきたのですか?」
「姫が望むこと」
ファニーが咄嗟に見たのは、メグの炎。剣を向けられた相手を、焼き尽くそうとしてしまうのではと思ってのこと。
「ティーブ違うの」
「それは、ご説明いただけるでしょうか」
「メグは敵ってわけじゃないよ。ちょっと意見が違うだけで、良い人だから」
「そうで〜す。ファニーとは友だちになったの〜」
抱きつきながら頬をすり寄せるメグ。目をパチクリさせながら何かを訴えるような目になるティーブ。
「これは、その」
「ティーブ君、わかりやすく説明してあげるね。赤の賢者の私はね。ルイスの敵、だ、け、ど、ファニーの友達で味方なの」
「それは、あっと、あの」
「ねぇ、どうする?私はルイスを傷つけるかもしれないけど、私を傷つけるとファニーも傷ついちゃうかもよ?」
後ろから抱きつきながら話すメグの声は明るい。炎の明かりも踊るように周りを飛び回っていた。
(なんだか楽しんでない?ルイスの敵なんて言って)
本心で敵だと言ったわけではないだろうとファニーは思っていた。なのであえてティーブを困らせるように話しているようにしか聞こえない。
「意味がわかりませんが」
「ふ~ん、わからないの~?ファニーは友達を大切にするでしょ?だから友達の私を傷つけたらファニーも傷つくのよ。ね~」
「ちょっと離れてよ~」
後ろからさらに強く抱きしめたメグは、ファニーの耳元でひそひそと話し始める。
「ねぇねぇ。ファニーはどう思ってるの?」
「なんのこと?」
「またまた~。ティーブの気持ちに決まってるじゃん。普通のガーダンなら、もっと素っ気ないよ」
完全に固まってしまっているティーブ。ふと目をやると、アスチルベは炎の明かりと一緒にくるくると楽しそうにしている。
「ルイスの敵って、嘘だよね?」
「ごまかさないの。ほら見て。どういうことか理解しようとしている。普通のガーダンなら、あんなに頭を悩ませたりしないよ」
「そ、そうかなぁ」
剣の切っ先だけは油断なくメグに向けられ続けている。
(普通なんて言われても、そんなの知らないし)
ティーブ以外のガーダンと会ったことも話したこともないファニー。2人が戦い始めてしまわないかと気が気ではない。
「ねぇティーブ。剣をしまって、大丈夫だから」
「し、しかし」
「ファニーはガーダンのこと教えてもらってないの?こんなことありえないはずなんだけど。それこそファニー恋してないと」
「えぇ?」
メグのことをずっと睨みつけ、剣を降ろそうとしないティーブ。炎の明かりはほんのりと暖かいまま。
「では、どうして、どうやってここに来たのか教えていただきましょう」
「どうしてって、お姉ちゃんを追いかけてきただけ。どうやってって、昔来たことがあるから抜け道がいくつかあるの」
「ルイス様もリズ様も、抜け道などご存じありませんでした」
「そりゃそうだよ。昔ここで戦ったのは私だけだもん」
目を細めるティーブの剣の切っ先がわずかに揺らぐ。合わせるように炎も静かにゆらめいた。そして剣は、静かに下ろされた。
「わかりました」




