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第30話~救出とお姫様抱っこ~

「ティーブ。あれかな」

「はい。間違いないかと」


 ロバートはゴブリンに囲まれているのに倒れたまま動かない。間に合ったようだが、まだ2日しか経っていないことを考えればギリギリだったようだ。

(あの様子だと3日保たなかったかもな)

 綺麗に整えられていた服はあちこち破けてボロボロになっていた。じっと待っているということができず、後先考えずに動き回っていたことが見て取れる。


「早く行った方が良いかな?ゴブリンに囲まれちゃうけど」

「囲まれるのは避けたいところです。救出し、そのまま離脱するのはどうでしょう?」

「ちょっと待って」


 ティーブとの相談を終えたファニーは集中しゴブリンの位置を調べる。離脱まで考えるならば、どこへ駆け抜けるのかまで考えなければならない。理想としては開けていて戦いやすい場所まで離脱したい。


「じゃぁ、あっちに抜けて、迂回しながら野営地まで行きましょ。行けそう?」

「はい。問題ありません。ですが問題がありまして、ロバート様は動けないと思われますがいかがしましょうか」


 倒れたまま動かないロバート。走るどころか歩くのもままならない様子だ。一緒に離脱できるとは到底思えない。

(というより、万全でも無理なんじゃ)

 大して鍛えてもいないロバートの体。仮に元気な状態であっても、ゴブリンから逃げ切れるだけの足があるのかと問われれば難しそうだ。


 突撃して、救出して、離脱。その間、ティーブにはずっと先頭を切り開いてもらわないといけない、近づく敵を剣で追い払ってもらわねばならない。そうなると手が空いていてロバートを運べるのは、必然的にファニーということになる。


「私が運ぶしかないかな」

「え~、なんでファニーちゃんがそんなこ、」

「ア~ちゃん、ごめんね。今は大事な話をしているから」


 抗議するアスチルベの口を塞ぐ。ファニーにとって決してやりたいことではないが、そうするしかない。


「私が運ぶから」

「承知しました。急いだ方がよろしいかと」


 ロバートに目を向けると、ゴブリンが少しずつ近付いている。特に急ぐ様子もなく、周りを警戒するような素振りを見せながら近づいていく。


「準備はいい?」

「問題ありません」


 ファニーが合図を送りティーブが突撃する。森の中を突き進み、行く手を何体かのゴブリンに阻まれるが、剣と弓で容易く蹴散らせる程度の数だった。


 完全に不意を突くことが出来た。戸惑って足を止めているゴブリンをティーブの剣が切り伏せていく。そのままロバートのところまで辿り着き、ここまでは順調だったのだが案の定囲まれてしまった。


「ほら!起きて」

「う、う~ん」


 弱ってはいるが、生きている。手足が微かに震えており、肌が冷たく乾燥していて青白い。でもまだ大丈夫。


「これを飲んで」

「あ、ああ」


 急ぎ水を飲ませ、食べ物は後回しにする。ゆっくり食べてもらう時間はなく、まともに食事が出来る状態でもない。ティーブはゴブリンを食い止めてくれており、早く準備したい。


「掴まってください」

「う~」


 返事がかなり怪しい。弱弱しい腕でなんとか掴まってもらおうとするが上手くいかない。仕方がないのでなんとか両手で持ち上げる。


「こっちは大丈夫」

「承知しました」


 ティーブは離脱を開始するが、突撃の時よりかなりゆっくりと進んでいく。人を抱きかかえたまま足場の悪い森の中を進むのは一苦労で、なんとか後ろを付いていく。


「わ~。ファニーちゃんがお姫様抱っこしてる〜。おっもしろ~い」

「ちょ、それを言わないで」


 ファニーが気にしないようにしていたことを、アスチルベはハッキリと言ってしまう。お姫様抱っこで運ぶというのは少々恥ずかしいことであった。かといって肩に担ごうとすると弓が邪魔になる。

(本当に余計なことを言うんだから。こんなところゼンデに見られたら絶対からかわれちゃう)

 誰にも見られていないことが唯一の救いであった。ロバートは思った以上に衰弱しており、掴まる余力も残っていない。そのせいで不安定になり、進むのが遅くなる。結果としてゴブリンに追いつかれそうになってしまった。


「ファニー様!」

「大丈夫!行って」


 運びにくいが、なんとかならなくもない。早く離脱しないと完全に囲まれてしまう。今のところティーブは問題なくゴブリンを処理しているが、数が増えるほどに難しくなっていく。


 ゴブリンを振り切ることに成功し、隠れるように森の中を進んでいく。見通しの悪い森の中、目に映るゴブリンはとにかく射抜いていく。


 物音をなるべくたてないようにしながら進み、ある程度進んだところでロバートを運ぶ係をティーブに代わってもらった。身軽になったファニーは周囲を警戒する。ティーブは軽々と運んでいき、全員駆け足で野営地まで逃げ切ることができた。


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