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第18話~世界のふもと~

 次の日の朝。祝勝会を終えたファニー達は朝食の席に座っていた。3日間の魔物討伐は無事に全て終わり、リーダーと街の代表から感謝の言葉を伝えられる。そして、世界を旅するために十分なお金が貯まり、世界のふもとへの旅を再開しようと相談していた。


「ねぇルイス。そろそろ道とか教えてくれても良いんじゃない?」

「道?」

「んっと。行き方とか、必要なものとか」


 この街に到着してからお金を稼ぐことに注力しており、世界のふもとへの旅の具体的なところをファニーは聞きそびれてしまっていた。


 急ぎたい理由もある。もしかすると、追手が差し向けられているのかもしれないからだ。ガーダンであるティーブを連れていたことで、どこまで噂が広まってしまったのか未知数だ。


 ファニーが元令嬢であることもルイスが黒の賢者であることも、街の住人にはほとんど知られていない。そのことを知っているヴィンダーや街の代表が通報することはないと信用できる。

 それでも可能性を捨てきれない。



 宿の中にある食堂で、パンとスープを食べながらファニーはルイスに聞いていた。世界のふもとへ行くという同じ目的で旅をしている。その全容を知りたいと思うのは自然なことだった。


「ん〜。なんて言ったら良いのかなぁ」


 ルイスは天井を見ていた。そして黙りこくってしまい、なかなか答えが返ってこない。ファニーと違ってルイスは一度世界のふもとに行ったことのある賢者なのだから、答えられないということは考えられなかった。

(私に気を使っているのかな)

 ファニーの余命は3年。旅の全容を知ってしまえば、たった3年では到底たどり着けない事実を突きつけることになりかねないと心配してくれているのではとファニーは考えていた。


「私のことは気にしないで。やっぱり3年じゃ難しいのかな?」


 宮殿を飛び出したときから、たった3年で行けるような場所ではないとファニーは薄々気付いていた。それでも世界を旅したかったのは、自分の幸せを決めつけられたくなかったから、幼い頃の夢を追いかけたかったから、そしてルイスと共に過ごしたかったから。


「ねぇねぇファニーちゃん。どこ行くの?」

「えっと。世界のふもと」

「3年で?そんなの絶対無理だよ。それよりさ。3年なんて言わないで、ずっと一緒に旅しようよ。楽しいよ」

「う、うん。そうだね」


 テーブルの上でパンを頬張っていたアスチルベが質問する。ファニーはルイスのことをちらりと確認していた。3年で絶対無理という言葉を、否定するようなことはしなかった。それが答えなのだろう。つまり余命3年では世界のふもとにたどり着けないということ。


「どうしたの~?」

「それは、」

「アスチルベ。ファニーは20歳までしか生きられないと決まっているんだ。だから3年以上旅することはできないし、3年後にはお別れだ」

「え」


 アスチルベはファニーのことをジッと見つめたままだった。ファニーは本当なのかと目で問いかけられた気がしていた。目を逸らし黙りこくってしまった。


 まるで時が止まったかのような静寂。それを破ったのはアスチルベの泣き声。


「ア~ちゃん?泣くことないのに」

「だぁって~」


 両手で目を押さえながらアスチルベの涙は止まらなかった。実はファニーは、余命3年と聞いて泣きだす人に出会ったのが初めてだった。


 ファニーの母も祖母も、20歳で寿命を迎えている。だから宮殿の人達が慣れてしまっていたのだろう。早く結婚した方が良いというようなアドバイスをする人ばかりで、涙を流すような人はいなかった。


「うぇぇぇん。3年なんてアッというまじゃん」

「そ、そうだね。でも行けるところまで行ければなって」

「えぇっっう。ファニーちゃん、ごめんね」

「い、いいよ。気にしてないから」


 アスチルベは食べかけのパンで涙を拭いていた。涙を吸い込んで固まってしまったパンをテーブルに置き、飛び立つ。


「よ~し、安心して。私が何とかするから」

「へっ?」

「ファニー!!」


 ルイスの叫び声が聞こえたのは一瞬だった。彼が伸ばした腕は、ファニーに届かない。


 アスチルベの指先が眩く光る。ファニーは身を守るように腕を上げたが、その瞬間に強い力で引っ張られるのを感じていた。


 そこでファニーは意識を失った。あまりに強すぎる力で引っ張られ、意識を保つことができなかった。



 意識を取り戻し、最初に聞こえてきたのはアスチルベが起こしてくる声。どれだけの時間が経過したのか、ファニーにはわからなかった。


「ファニーちゃん、ファニーちゃん。起きてよ」

「ん~。なに?」

「へっへ~ん。見て見て」


 ファニーは地面に横たわっていた。起き上がり目を開け周囲を確認する。


 先ほどまで朝食を食べていた食堂ではなかった。先ほどまで泊まっていた街ですらなかった。人の住んでいる場所なのか定かでなかった。ファニーの生まれ育った国なのかわからなかった。

(ここは、どこ?)

 うっそうとした森。


 アスチルベと2人で、見知らぬ土地の森に放り出された。


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