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社会的死亡

作者: ヨッシー

物語は、突然、謎の廃校に閉じ込められた高校3年生のクラスメイトたちの混乱から幕を開けます。教室のモニターに現れた「謎の男」は、この中にいるクラスメイトを監禁した張本人を特定するため、**「社会的死亡」**を賭けた投票ゲームの開始を告げます。

クラスには、かつていじめが原因で自殺した生徒がいたという重い過去が横たわっていました。最初の投票で選ばれたのは、いじめの主犯格だった女性。謎の男は彼女が真犯人ではないと告げつつも、彼女の**「ものすごいドMな趣味」に関するプライベートな映像を全世界に晒す**という、残酷な「社会的死亡」を執行します。この光景はクラスメイトたちの理性を崩壊させ、廃校は地獄絵図と化します。

夜明け、他の生徒が眠る中、ネットが得意な男性が教室で**「計画はうまくいってます」とLINEを送信**。その送り先は、なんと過去にいじめで自殺したとされていた生徒本人でした。彼こそが、このゲームの真の仕掛け人であり、すべてを裏で操っていたのです。彼の復讐は、クラスメイトたちを精神的に追い詰め、やがて一斉に自殺へと追い込むという形で達成されました。

しかし、物語はここで終わりません。

シーンは一転し、別の家の寝室へ。そこには、最初に「社会的死亡」を受けたはずの女性が、何事もなかったかのように目覚めます。彼女には、廃校での凄惨な出来事も、プライベートが晒されたことも、一切の記憶がありません。大学へ向かう彼女は、道行く男性から好奇の視線を向けられ、馴れ馴れしく話しかけられます。これは、彼女に課せられた「社会的死亡」の映像が世界に残っており、その「刑期」が記憶なきまま一生涯にわたって続くことを示唆していました。

そして、別の家のテレビに映し出されたニュースが、この物語の核心を明かします。それは、凶悪犯が増える社会で、政府が試験的に導入する**「社会的死刑」**のニュースでした。その執行方法は、麻酔で眠らせた囚人の脳に電磁波を送り、夢の中で悲惨な光景を見せ、その後、逮捕される前までの記憶を消去して家に帰すというもの。

つまり、廃校での出来事はすべて、この**「社会的死刑」という刑罰の仮想現実(夢の世界)における執行**であり、ネットが得意な男性は、その執行がうまく進んでいるかを確認する監視者として、仮想現実に入り込んでいたのです。

そして、この「社会的死刑」を受けていた女性の真の罪は、「電車でターゲットに痴漢の因縁をつけ、お金をむしり取る行為を繰り返していた」こと。物語の背景にあった「いじめで自殺者が出た」という設定は、彼女に罪の意識を植え付けるための仮想のプログラムの一部に過ぎませんでした。さらに、彼女を裁くための「制裁の映像」ですら、政府によって作り上げられた虚偽のものだったのです。

この作品は、「ネットの情報は何でも信じてしまう時代」に警鐘を鳴らし、**「虚偽の性的な罪を、虚偽の性的な暴露で制裁する」**という、極めて残酷で皮肉な構図を通して、情報操作、国家権力、そして「真実」と「正義」のあり方を深く問いかける、記憶に残る傑作となるでしょう。


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