お弁当が盗まれた。
なろラジ参加作品
昼休み。クラスメイトは各々のランチタイムに入る。
俺も、朝買ったコンビニのおにぎりを机の上に置いて、鞄に手を入れるが、その手は空を切るばかり。
底まで手を伸ばすも、中には何もない。入っているはずの弁当が無い。
朝、母親が鞄に詰め込んだし、2時間目まではあったから間違いなく持ってきてるのに、ない。
ファスナーを全部開けて中身を覗くが、やはり何もない。
「お袋の作った弁当がない!」
つい、声を荒らげてしまうと、女子がクスクス笑う。
「お母さんのお弁当なくて涙目とかヤバ」
「田貫ってマザコンだったんだ、ダサ」
バカにする声が聞こえるも、反応してくれたのは、幼馴染みで親友の木常だ。家は隣同士のベタな幼馴染み。残念ながら同性だ。
「え、ヤバくね? ……盗まれた?!」
木常のその声を聞いたクラスにいる連中は、一斉にこっちを見た。
クラスに泥棒とか嫌なのはわかるけど、俺は被害者だぞ。
「犯人、探さなきゃ!」
「泥棒なんて、そんな事今からしてたら大変な事になる」
正義感の強い一部の人が声をあげる。クラスメイトたちは、今いない連中へ、メッセージを送ったりして確認してくれる。
「ってか、なんでそんな必死なんだよ。マザコンすぎでウケるんだけど」
派手女子がケタケタ笑うので、俺はスマホのとある画面を見せた。
「なに? え、このお弁当ヤバ、可愛い〜!」
「お袋が作ったやつ、オンスタにアップしてる」
女子は目を輝かせて、映え弁当を作ったお袋のことを褒めちぎる。
「けど、まずいんだ」
「何がまずいのさ、どうみても可愛いじゃん」
「味が壊滅的の、まずい。そのくせ、バズるレシピを発信してる配信者の真似して、酒飲みながら料理しやがるんだ! いまうちの父親、食中毒で入院してる」
食中毒で入院。
今は冬に差し掛かっている。なのに食中毒。話の流れで母親のご飯が原因だというのを察した面々。
木常はお袋のヤバ飯を理解してるので、深く頷く。
みんな慌ててスマホを手に取って、今いないクラスメイトたちへ電話をかけたりメッセージの追撃をする。
幸いクラスメイトの中に泥棒はいなかった。被害者が出なくてよかった。
が、翌日、隣のクラスのやつが腹痛を訴えて搬送されたのを知った。
接点のないやつだったが、どうやら母親のオンスタフォロワーらしい。
今日の映え弁当投稿を見て、つい欲しくなったそうだ。3時間目、うちのクラスは理科室に移動していた隙に……。
後日母親のフォロワーは、ひとり減っていた。