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5.天恵

「おはようございます!アナテマ!会えなくて寂しかったです!」


「………おはよう」


「今日はオムライスを持ってきました」


「は?」


「聞こえなかったですか?オムライスです!」


「いや、オムライス……?」


「はい!」


 眉を寄せて疑うような目で、アナテマがじろじろとソフィアの全身を眺める。

 ソフィアは一日ぶりのアナテマ摂取で感無量だ。


「お前小さいカバンしか持ってないだろ」


「はい!ですのでそれに入れて持ってますよ」


「……はあ?」


「魔術鞄というものらしいです。便利なものを手に入れたので使ってます。あ!鞄の中でぐちゃぐちゃになったりしないので安心してください!」


「いやそれ、ヤバイ金額のやつだろ!………お前本当に真っ当な手段で稼いでるのか?…………子供が、ダメな働き方しちゃダメだ」


「ちゃんと真っ当な手段で、危険性もなく、たくさん稼げてます!!」


「……………いや、まあ、それならいいんだ」


 ふい、とアナテマが顔を背けてしまった。

 横顔綺麗だなあ…と思いながらソフィアはオムライスを取り出していく。ちゃんと温かいままだ。こんな便利な物があるならもっと早く知りたかった。


 アナテマにご飯を貢ぎ続けたおかげか(まだそんなに経っていないけれど)、いつもよりアナテマが元気そうである。気だるげな喋り方も大好きで一生聞いていたいが、おそらく素であろう今の喋り方も大好きで可愛くて素晴らしすぎる。


「これ、なんだ?」


「ケチャップで絵を描こうと思いまして…ハートを」


「ハート?なんで?」


「アナテマが好きだからです!!」


「………お前、趣味悪いと思うぞ」


「アナテマは世界一可愛くてカッコよくて素晴らしくて美しいです!」


「………いや、違うだろ」


 スプーンをぎゅうと握り、アナテマがオムライスを食べていく。あまりスプーンの扱いに慣れていないのか、苦戦しながら食べ進めている。あ、顔がほころんだ。可愛い。


「美味しいですか…?」


「……まあ、美味い」


「よかったです…!手作り初めてだったので、アナテマに出すに相応しくなるまで作りました!」


「どれだけ作ったんだ…?いや、やっぱ怖いから聞きたくない」


 恵まれない幼少期を過ごしたであろうアナテマのために、美味しいものを、食べてみたいと羨望していたであろうものを、つまりはここらへんで一番人気な昔からあるベーグルを持っていったソフィアだったが。

 学校で過ごしている間に思ったのだ。栄養失調状態からの回復のために、体に優しいご飯の方が良いのではないかと。


 そもそも栄養失調のときに消化しにくいものを持っていったのはどうだったのか?喜んでくれたとはいえアナテマの体が一番では?───永遠と考えながら、ソフィアは思った。


 極めきった回復魔法を掛けた料理って、絶対に体に害を及ぼさない仕様になり、あらゆる状態を改善していくんだったよなあ、と。



 結果はご察しの通りである。



「お前は食べないのか?」


「食べます!」


 徹底的に安全性を確保するため、ゲシュタルト崩壊するレベルで作り食べたソフィア。

 それでも、推しと一緒にご飯を食べられるなんてそんなのご褒美だ。お金を出してご一緒したいくらい。むしろ払わせて欲しい。



 ーーーーー


 アナテマはたらふく食べ、今は満足そうな顔でお茶を飲んでいる。ちなみにそのお茶も魔術鞄に入れていた。


「アナテマ、次の料理のリクエストありますか?」


「俺は…………いや、お前が食べたいものにしたらいい」


「なら、食べ歩きしませんか!」


「…………俺、顔知られてる」


「ここに私の魔力を込めたマントがあります。これがあれば誰も気づきません」


 ぎょっとした顔で渡されたマントを見たあと、アナテマが顔を上げた。紫色の瞳と目が合って、飴みたいに綺麗だなあとソフィアは微笑む。食べちゃいたい。


「お前も、天恵ギフト持ちなのか」


「はい!天恵ギフト検査が受けられなくて知らなかったんですが、アナテマに出会ったので開花しました。アナテマとお揃いで嬉しいです!」


 ソフィアが笑顔を見せると、アナテマは凍りついたかのように硬直し、その後顔を歪ませた。


「……俺のは、そんな優しい天恵ギフトじゃない……呪いだ。呪うんだ、人を。呪って、呪って、ずっと俺はそうやって生きてきたんだ!………怖いだろ」


「怖くないです。私はアナテマの全てを愛してますから!それに、凶悪さで言うなら私の方が上です」


「いや、それはないだろ……お前、なんの天恵ギフトなんだ」


「国家指定警戒天恵(ギフト)の、『認識阻害』だと思います!検査受けられないので詳しくは分からないんですけどね」


「……確かに凶悪さだとお前の方が上だな」


 ソフィアの言葉に、ついアナテマは納得してしまったらしい。毒気を削がれたような顔で頷いていた。

 すっごく可愛い。

ハートマークが愛を意味するようになったのは、イエス・キリストの聖心崇敬(諸説あり)によるもの。また、民衆に広くハートマークが知れ渡るようになったのはトランプによるもの(諸説あり)と言われています。

ソフィアのいる異世界にて基本的にマーク(絵)の意味は同じです。


また、オムライスは日本で出来たものです。ヨーロッパの方では、気候条件があまり稲作とあっていないため米が作れませんが、ソフィアのいる異世界では普通に米の栽培が可能です。


ソフィアのいる異世界は、地球とは違う歴史を辿ってきましたが、概念や物は同じようなものが登場します。この人物がいないのに何故あるのか?というものは奇跡的に一致したと考えてください。

時代的にズレているものが後々登場しますが、それは別の歴史を歩んだことによる影響です。

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