10話
コタローが提示した条件の一つは、自身の格好の自由である。
この世界の正装がどんな物かは知らないが、何となく予想は出来る。
過去の偉人たち(ラノベの主人公たち)の経験をもつコタローには抜かりなかった。
スーツの様な物だろうと。
ただ、コタローにとってこれは許し難い。
蒸れるのだ。
長時間そのような物を着ていたら。
この男、デリケートである。
なので、作務衣に上は羽織スタイルである。
家族に今回の件について話す。
嫁たちは話し合いをし、「レッドボンド」の五人が同行することになった。
ずっと家にいた時期が長かったし、新婚旅行もしていなかったことにコタローは気付いた。
「懐刀の隠れ里」の三人は身重、副料理長のリズや「揺り籠の守り人」の四人は子供たちの面倒を見てくれることとなった。
一応、必要ないかもしれないが、乳母を雇うことにもなった。
旅の荷作りに一日を要し、コタローたちは王都へ騎士たちと向かった。
旅は馬車に乗って十日の予定。
コタローたちには専用の箱馬車が用意されていた。
王都への道中に宿泊施設は無く、基本は夜営である。
少し遠回りをすれば、集落はいくつか存在する。
今回は旅の規模が騎士たちもいて、大きい。
それ故最短距離を選択した。
休憩中や夜営のときでの出来事として、多くの騎士たちに教えを請われた。
理由は目立つ騎士に、試合を最初の休憩時に申し込まれたから。
このときのコタローの格好はThe道着。
白である。
帯の色も白である。
背中には「柴」の文字が。
実はコタロー、王都への旅に空手?の修行をしながら行こうと思い、昔服屋に作ってもらった道着を引っ張り出してきていた。
勿論、他の服は今回ちゃんと持ってきている。
コタローは目立つ騎士に、どれくらいの強さか聞いた。
目立つ騎士は、この国で五本の指に入ると答える。
それを聞いて、コタローは相手の強さを脳内の全国レベルの猛者たちに設定する。
こうして、試合が開始した。
目立つ騎士は左手に盾、右手にロングソードを装備している。
コタローは手始めに、左手を前に出して、右手を引く。
いわゆる正拳突き?の構えだ。
目立つ騎士は全速力でコタローに飛び込む。
盾を前に出して、剣は後ろに引いている。
コタローは盾に向かって、左手を引き絞りながら渾身の右正拳突き?を放つ。
次の瞬間
パンッ
と音が鳴り
ドンッッ
という音が続く。
そして目立つ騎士はいなくなった......
数十メートル吹っ飛ばされていた。
コタローは伸びきった右腕をそのままに、手首を立て、右手を祈るように伸ばし、そして手首から先を左、右、上、下と動かし、十字を切った。
昔見たアニメのキャラクターのように。
この男、日本人であり、信仰宗教はと聞かれれば、神道?と答えるくせに。
また、アニメのキャラクターとは動きが微妙に違うのだが。
真実を知らないということは幸せなのかもしれない。
何より、コタローは試合の結果よりも、このエセポーズが決まったことが嬉しかった。
ドヤ顔である。
憧れは大事である......多分。
そこからは休憩のたびに、別の騎士たちがコタローの元へ訪れ、指導を受けにきた。
そして、たまにその列に嫁たちも並んでいた。
実は、目立つ騎士は王都軍をあずかる騎士団長であるのだが、コタローが知るのはもう少し先のお話。
そう、もう少し。




