1話
馬車の窓から王都の様子が見えた。
前回来たときには気付かなかったが、街に比べると圧倒的に活気に溢れていた。
街に活気がないという訳ではない。
規模が違うのだ。
そんなことをコタローが考えていると、馬車が停車した。
目的の宿に着いたのだろう。
何故王宮ではないのか。
実はコタロー、ここでも条件を一つ提示していた。
それは、王宮で用があるとき以外は王都の城下町で過ごすというもの。
今回は、コタローにとって新婚旅行のようなものなのだ。
嫁たち以外とは極力関わりたくなかった。
目立つ騎士は渋ったが、何とか許可が下りたのだった。
馬車を降りた六人は、目の前の宿屋を見上げ......
落胆した。
目立つ騎士から、王都で最高級の宿を用意すると聞いていた。
建物は五階建てだが、明らかに小さい......
「柴桜城」に比べると。
最高級宿は、内装、部屋、大きさ、風呂、食事、サービス、あらゆる面で残念だった。
多くは語らぬが、六人の心は流石夫婦?一つだった。
料理長を呼べ!
ウチの!!
十日間の馬車旅では、まともな食事にありつけず。
それでも旅だからと、自分たちで受け入れていた。
しかし、ここにきて王都最高級宿(笑)の食事である。
ウチの料理長は、変人に鍛えられ、しかも醤油と味噌まで使いこなすのだ。
もはや鬼に金棒であった。
何より「柴提燈」料理長の凄いところは、その探求心。
主にお菓子作りにベクトルが向いている気がするが。
それでも、料理に関しては、四人の料理人を率いて、更なる向上を目指している。
たまに、物凄く甘い料理を自信満々で出してくるが。
副料理長のリズが苦笑いをしながらも。
それでもコタローは文句を言わず、完食している。
感謝しているから。
料理人たちに。
だが、ここのヤツらは、料理を持って来るたびドヤ顔を連発し、あまつさえ、こちらが食べている様子を観察してくるのだ。
そして極めつけは、「いかがだったでしょうか?本日は大変貴重なーーーー」である。
コタローたちは言ってやりたかった。
塩とコショウの味しかしねぇよ!!!!!!
と。
もう十日も「柴提燈」の料理を食べていなかった六人は、ホームシックと「柴提燈」シックを併発させていた。
ムカついたコタローは、チップ代わりに皮肉を込めて、無言で金貨が詰まった巾着袋を支配人?に渡して、食堂を後にした。
翌日、朝起きた六人は食事を最高級宿(笑)の外で食べようという意見で一致した。
そして、出掛ける準備をしているとき、悪魔のノックが部屋に響く。
「お食事の用意が出来ましたので、食堂へおこし下さい。」
六人は心の中で叫んだ。
いらねぇよ!!!!!!
と。




