王城への道、獄中の王子
まさか、あいつとまた会うなんて、思ってもいなかった。
獄にぶち込んで、王子の座を降りさせた。恨みしかないそいつを、面会禁止の独房の中に蹴り飛ばした。牢屋に蹴り飛ばして、俺が牢屋から出る時に、そいつの顔面を一発ぶん殴った。あの時の感覚は今でも覚えている。
『…海。』
先ほどの案内役…シリウスに、声をかけられる。
『殺すんじゃないぞ。…絶対に、だ。』
その心配そうな声を他所に、俺は王都最大の刑務所、第五ルーン刑務所に入って行った。
そうして俺は、第五ルーン刑務所の最下層、B8第40番廊下を、最奥へ向けて歩いていた。そこに、元王子がいる。
…俺は、あいつが嫌いだ。性格だとか、見た目だとか。そういうのが嫌いなんじゃない。見た目は良いし、性格だって良い。…ただ、とある理由で俺はその王子が嫌いなのだ。
そして、俺はそいつの牢屋の前に着いた。久しぶりに見る、上司の顔だ。こいつはいつでも図面ばかり見てるな、と。そう思いながら、俺はそいつに話しかける。
「久しぶりだな、王子様よ。」
その、元王子…ホワイトは、顔を上げて俺の方を見た。投獄する前と変わらず、健康的な顔をしている。
『名前で呼んでくれ。一緒に剣を合わせた仲だろう?』
「…囚人の事を名前で呼ぶことは禁止されている。お前なら知っているはずだが?」
そいつ…いや、ホワイトは、図面に顔を戻しながら言った。
『だが、監視も居なければ他の囚人も居ない。お前以外は誰一人としてここには居ない。何も問題は無いぞ。』
俺は、壁に体を任せながら、
「いや、だが…」
規則は規則だ、と言おうとした俺を、ホワイトが止めた。
『そんなの気にしてたら、心が持たないぞ。もう少し気楽に生きろ。…お前は強い。だからこそ、規則なんかに囚われるな。』
そう言って、図面から顔を外し、少し顔を曇らせながら、ホワイトは言った。
『そうだ、たしかに強い。だが…今のお前は、きっとあの時よりも弱い。それに…なんだか、俺よりも堅牢な獄に入れられてる様な気がしてるよ。君は、そんな簡単に捕まるようなやつだったか?』
「・・・っ」
若干、動揺した。だが、きっとこいつはそれを見逃さない。だから、俺はあくまで平静を装いながら、
「なんのことか、わからないな。」
面会終了の時刻になり、俺はその牢屋を後にした。