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行方知れずの私  作者: 秋月カナリア
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恭子7

 教えてもらった駅に着いたのは夕方だった。

 涼子の家から直接来たからだ。まだ明るい時間帯だけれど、このまま行っても良いのか、少しだけ迷った。


 どんな場所なのかも、誰がいるのかも、涼子がそこにいるのかもわからない。

 そもそも、今から行く廃校が、涼子が好きな人に会うために行っていた場所なのかも、本当ところ自信はない。

 都内ではない可能性もある。

 ただ涼子が迎えを呼んだ駅というのが、周辺に学校と病院しかないような場所なのだ。

 そして駅の近くに、統廃合のため閉校になった中学校がある。


 移動中に調べてみると、思っていた以上に都内には廃校があった。

 もう何年も経っていて校舎は既に存在しないものがほとんどであるようだけれど、中には再利用されているところもある。

 芸能事務所の本部、歴史資料館、撮影スタジオ。

 向かっている廃校もレンタルスペースとして使われているようだった。


 涼子が両親に迎えを頼んだ日は、JRと私鉄が止まっていた。

 乗っていた電車が動かなくなって、あの駅で下りたという可能性もある。


 でも涼子は一人だった。

 たとえば本当に友達と、どこかへ遊びにいっていたとしたら、その友達が一緒にいたほうが自然だ。

 その友達は、先に家族が車で迎えにきたのだろうか。


 いろいろな可能性が次々と浮かんでいく。

 考えてもしょうがない。


 いきなり当たりを引き当てたのかもしれないのだから、楽観的に喜んでも良いのかもしれない。


 確信がないままでも動くしかないのだ。慎重になっていたら、手遅れになってしまうかもしれない。


 悪い想像がどんどん膨らんでいって、私はいつの間にか、涼子のことがとても心配になってしまっていた。


 大通りから住宅街の方へと道を曲がり、そこからさらに細い路地へと進む。

 道の先に校門があった。タクシーが一台停まっている。


 周囲にある建物や樹木のせいで、辺りは薄暗い。


 静かだった。


 駅から歩いてくる途中、犬の散歩をする人をたくさん見かけたけれど、この路地には入ってこないようだ。


 緊張してきた。


 悪の根城に乗り込むような気持ちになっている。


 停まっていたタクシーがこちらに向かってきたので、道の端に避ける。

 タクシーから降りたのは男性と子供だった。校門を開けると二人とも中に入っていってしまった。


 今日はなにか催し物があるのだろうか。


 男性は若いようだったから親子ではないだろう。歳の離れた兄弟かもしれない。

 誘拐のようには見えなかった。

 ちょっとした仕草だけれど、男性は子供を気にかけていたし、子供は男性を信頼しているように感じた。


 そうだ。一般の人に貸し出しているのだから、危ない人たちが根城にしているわけはない。


 笑い出したくなった。

 緊張が少しだけやわらいだ。 


 場所だけを確認して、後日また来ても良い。今度は誰かと一緒に来ようと、そう思っていたけれど。


 今、行こう。


 私は二人を見失わないように、急いで校門に走った。

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