4.噂話F
黒騎士と白騎士は騎士学校の寄宿舎に入った時からの付き合いである。ときどき喧嘩もあったようだが、すぐに仲良くなった。
孤児院出身の黒騎士と貴族の次男の白騎士。
寮の部屋が同じになったことから交流を深め互いに好敵手として切磋琢磨し、成績は2人で常にトップを争っていた。卒業してからも、2人とも評価は高く、まだ若いが、小隊長を任されるようになっていった。
黒騎士・白騎士と呼ばれるのは、黒髪の黒騎士とブロンドの白騎士という元々の容姿もあるが、わかりやすく色分けしたこの国の師団の黒師団と白師団にそれぞれ属しているからである。鎧や剣もその色で作られ、髪色も相まって彼らにとてもよく似合っていた。
ジークの妹シャルロッテとそのかしましいお友達をはじめ、女性たちの間では、どちらの方が好みだのという話題が度々出ていた。
しかし、彼らに特定の女性の噂はなく、最終的に立てられた仮説が
『彼ら同士が思いあっている』
のではというものだった。
同じ寮部屋に住んでいた、とても友達とは思えない贈り物をしている、あれは匂わせでは、この前の魔物狩りでは、など眉唾から真実のことまで、数多の噂が飛び交い女性たちのおしゃべりの場を賑やかせていた。
しかし、ある種それが、決定的なことのように言われたのは黒騎士が亡くなってからだった。彼は、任務の成功報酬に長期休暇を求め、屋敷に籠り、そのあとに会った人の噂によると、真っ黒な喪服を着ていたそうだ。喪に服すため休暇を取ったのだ。家族はともかく友人にまでそのようなことは求められていない。そして、彼が復隊を決めたのは、邪竜討伐の折り、粉々に砕かれてしまった黒騎士の剣が復元が成功したからだと言われている。黒騎士の黒剣を背負い舞い戻った白騎士は今までにも増して勇猛に活躍している。もう悲恋の物語扱いだ。
詩人も美しく盛り立てて、黒騎士と白騎士の絆は、庶民にまで響きわたる定番の美談となった。