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宇宙船に興味なし


 裏山を少し上ったところに銀色の宇宙船が隠してあった。見たことがない流線形のフォルムが近未来を彷彿させる。


 宇宙船のハッチがプシューっと開き中から白いドライアイスのような煙が出てくる。たぶん演出だろう。

「ちょっとだけ中を見せてあげましょうか?」

「いらん!」

「いらぬ! 新車を見せびらかせたい若造か!」

 自慢されたって、ちっとも嬉しくなんかないぞ! ……ガントレットの指先で五本傷をつけてやろうか……。

「さっさと乗って帰れ」

「必要以上にこの星の空気を吸うな」

「どいひ~」

「「どいひ~って言うな――!」」

 宇宙人を宇宙船にぶち込んでハッチを外から乱暴に閉めると、魔王様は宇宙船を大気圏外へと瞬間移動(テレポーテーション)で強制送還した。


 魔王様のお陰により、この星の危機は救われたのだ。たぶん……。



 玉座の間へと戻ると、折り畳み式の檻を片付け始める。近くのホームセンターで買ってきたペット用の安物の檻だ。ネジが手締めのタイプだから分解しやすい。


「宇宙人など、都合よく他の星の資源をむさぼり繁殖を続ける輩に過ぎぬのだ」

 玉座に座り、片付けを手伝ってくれない魔王様がそうおっしゃった。

「……なぜそう言い切れるのですか。中には友好的な宇宙人もいることでしょう」

 もし私が逆の立場で他の宇宙人と接することとなれば、紳士を貫き通せる自信があります。さっきの宇宙人なら……話は別だが。

「人間を見るがよい。新たなる大陸を求め自国の富と権力を増やすのに必死ぞよ」

「……たしかに」

 人間は欲望の塊だ。富と権力欲しさに人間同士が平気で戦争を起こす。だが、我ら魔族は違う。魔族は魔族同士が土地争いすることはない。


 ……全部魔王様の物だから……とは言えない~。


「さらには、宇宙進出や宇宙ビジネスに乗り出しておる。一方でCO2削減を唱え一方で宇宙開発を進めるのに矛盾を感じるかもしれぬが、根底にあるのはただ一つ」


 ――新たなる星の新たなる資源を得て、自分の種を永続させるためぞよ――。


「……冷や汗が出ます」

 「剣と魔法の世界」を「宇宙とビジネスの世界」に修正しなくてはなりません。異世界ファンタジーからほのぼのヒューマンドラマに修正しなくてはなりません!

 読者が離れてしまいそうで冷や汗が出ます。キャー!


「もし……火星に国産和牛がたくさん住んでいれば、躊躇なくステーキぞよ」

「……」

 ごくりと唾を飲む。騎士である私はたとえ宇宙(そら)へ出たとしても、紳士を貫き通さなくてはならない。でも、たしかにステーキは食べたい。

 火星にたくさん国産黒毛和牛がいてほしい。もしいれば、それらを食べることに躊躇などしないだろう。

 逆に食べきれるかどうかお腹と相談したい。

「食べられる側にしてみれば、それは侵略と虐殺ぞよ」

「――はう!」

 侵略と……虐殺。まさにその通りだ。綺麗ごとでは済まされない。

「ですが魔王様もお考え下さい。……国産和牛ですよ。目の前にたくさんいたら……食べるでしょ。一頭や二頭くらい」

「食べるぞよ~! ジュージュー焼いてウェルダンでウェルカムぞよ!」

 親指を立てグーのジェスチャーをしないでほしい。

「食べるんや。やっぱり魔王様も」

 ……説得力の欠片もございません。だめだこりゃ。冷や汗が出る。古過ぎて。

「だから駄目なのだぞよ。無限の魔力を使い未知なる宇宙の星や異世界などから食料や鉱物を調達してはならぬのだ」


 星で生まれたものが星に帰るのは、崩してはならない宇宙の定めなのだ――。

「――!」

 宇宙の定め――!

 話が大き過ぎて意味すら分からないぞ~――! とは言わない。


「ですが、宇宙人の中には友好関係を築ける宇宙人もいる筈です」

 宇宙は広いのです。行ったことないけれど魔王城の男湯よりも数千倍は広いでしょう。

「いくら友好関係を築けたとしても、その宇宙人の存在により我々の進化を大きく捻じ曲げる。優れた技術や思想は他からもたらされてはならぬのだ」

「もたらされてはならない……自分達で築き上げなくてはならないのですね」


 それが間違えた進化や文明であったとしても……。


「うん。赤ちゃんに44マグナム持たせるようなものぞよ」

「……」

 たとえが……分かりにくいぞ。


 ――はっ!

「ですが、であれば、我ら魔族は多種多様なモンスターが互いに干渉をしているではありませんか」

「うむ」

 それはよろしいのでしょうか。

「スライムにゾンビやグールやドラゴンまでもが余計な入れ知恵をし、干渉しております」

 この前、スライムにスケルトンがタバコの吸い方を教えようとしていたから厳しく叱責したのだ。


 スケルトンが……タバコ吸うなよ。っていうか、どうやって吸うんだと……。肺無いやん……と。


「そのようなモンスター同士の干渉はよろしいのでしょうか」

「よい」

 ガクッとなるぞ。

「なぜ。ホワイナット」

 理由をお聞かせ願いたい。

「それは、剣と魔法の世界だからぞよ」

「……」

 魔王様の満面の笑みが……なんか腹立たしい。

「まるで夢オチのような後口の悪さでございます」

 冷や汗が出る。


 だったら宇宙人もいいじゃん! ってなりそうで……。


最後まで読んでいただきありがとうございました!!

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また次の作品でお会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます! 今回、魔王様が宇宙人にやたらと厳しかったのはジャンル違いの住人だったからっぽいですね……。
2021/06/04 08:49 退会済み
管理
[一言] 完結お疲れ様です! 魔王様が良いことをおっしゃってるんですが…… なんか宇宙人が可哀想だった感(笑) 本気でもう2度とやってこなさそうです。アレな好物…… いえいえ、鉱物もないし(笑) …
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