40話 最終形態
爆風で何メートルも吹き飛ばされたキューは、立ち上がることもできずに土煙の向こう側を見つめていた。
「オー……」
土煙が晴れると、オーがいた場所に小さなクレーターが出来ていることがわかった。
キューはようやく立ち上がる。爆発の衝撃で体中に痛みが走り、片足が上手く動かせない。それでもどうにか一歩踏み出し、よろよろとクレーターに近寄った。
クレーターの中心に、オーが倒れているのが目に入った。
「オー……!」
キューは足を引きずりながらオーに近寄ると、抱き起こした。
オーは、四肢はどうにか無事だが、爆発による裂傷が酷く、体中から血液が溢れ出している。
「……キュー」
ゆっくりとオーの目が開いた。口をゆっくりと動かすが、それ以上声が聞こえない。
かろうじて、生き永らえている状態のようだ。
ふと、影がキューを覆った。
振り返ると、巨大な肉塊がキューを見下ろし、なおもその大きさを増やしている。
「これは……」
見ると、あちこちに寝かされていた元村人であったミュータントや、そのミュータントに命を奪われた村の人々の遺体が集められていき、巨大な一つの生物となっていくようだ。
そしてあっというまに、10メートルはあろうかという巨大な肉塊が現れた。
目の前の肉塊に、急激に殺意が駆け巡る。
急いでキューは、爆発の衝撃で手から離れていた自分の刀を探した。
あった。だが、数歩駆けなければならない場所に突き立っている。
拾わねば。そう思考した時には、すでに肉塊はその芳醇な体から突起型の触手を生やし、キューに向けて突き伸ばしていた。
触手は眼前に迫る。咄嗟にキューは目を閉じた。
触手が眼球を突き抜け、脳を突き抜けた。と思った。
だが実際は、3発の銃声が聞こえたのみだった。
「キュー!」
振り返ると、ルィと、村の少年と少女が大柄な銃を構えて立っていた。
「キュー、大丈夫!?」
ルィはそう叫びながら、少年少女とともに何発も銃弾を、肉塊となったインルーラーに撃ち続けている。
「駄目です、ルィ……逃げて!」
キューの言葉を無視して、ルィはなおも撃ち続ける。
「キューが死んじゃったら、私はどうしたら良いの? 私をシャングリラに連れて行くんでしょ!? 絶対に勝たないと!」
しかし肉塊は、再び触手を伸ばし、少年少女の銃を持つ腕を貫いた。少年少女は痛みで、銃を取り落としてしまった。
「ミミ、リウ!」
次いで、ルィの首に触手が巻き付く。
「あっ……!」
そのままルィは触手で宙に浮き、ゆっくりと肉塊に引き寄せられた。
「ルィ!」
キューは今度こそ立ち上がり、刀を手にした。が、肉塊から数え切れない本数の触手がキューに襲いかかり、キューの体全体に巻き付いた。
そして、そのまま締め上げ始めた。このまま握り絞り殺す気だ。
巻かれていく触手の間から、最後に見えたのは、肉塊の頭上に達したルィと、その真下が大きく開き、無数の歯が映え揃った巨大な口だった。
「……ルィ!」
そうしてキューは、もはや声も出すこともできなくなった。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
是非是非ブックマーク、評価をお願い致します!
大変、励みになります!