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ここは終末世界、私は女子攻生と旅をする。  作者: 播磨播州
対インルーラー戦篇
39/43

39話 決死

「この体の女子攻生もそうだったよ。仲間を楯にしたら、すんなりと寄生することができた。お前達は人間に作られた兵器だろう? なのに、どうしてか人間と同じような精神……人格を入れられている。それがお前たちの急所となるとも知らずに」


「オーを離せ!」


 キューは何度も彼女に向かって斬りかかった。

 しかし、どれも片手で弾かれる。基礎的な力の、応用的な能力の、その全てでキューを上回っている。

 触手と化した彼女のもう片方の手の先には、依然オーが貫かれたままだ。オーは意識を失い、だらりと浮かんでいた。


「やはりお前は極端に弱い。本当に女子攻生か? まだ鍛えた人間の方が手応えがあるぞ」

「うるさい、うるさい!、うるさい!!」


 キューは怒りに任せて刀を降った。彼女がキューに突き刺す、言葉を掻き消すように。

 だが、一度突き刺さった言葉は、わずかであってもキューの心の深い所へと侵入し、ぐちゃぐちゃにかき混ぜ始めた。


「私は……私は………!」


 弱い。

 その言葉が何度も頭の中を、心の中を渦巻く。

 これまではその弱さのせいで生まれたものは、自分の世界だけで完結していた。

 弱さのせいで生まれた痛みも、弱さのせいで生まれた蔑みも。自分が我慢すればいいだけだった。

 けど今は違う。

 目の前で、自分の弱さのせいで何もかも失う瞬間が生まれようとしていた。

 300年の時を経て、弱いままではいけない理由ができてしまった。


「あぁぁ!!」


 キューは無我夢中で彼女に向かっていった。今では不安も、恐怖も、何もかもの全ての感情が入り乱れ暴風雨のようにキューの心の中で吹き荒れている。

 だが、その刃は届かない。

 それが、キューの限界だった。

 アイは呆れたような表情になると、手に持った大鎌を翻して軽々とキューを切り裂いた。

 今度は深く、キューの肩口から下腹部までが大きく裂けた。

 キューは声も無く、膝から崩れ落ちる。

 痛くて叫びそうだが、それを凌駕する自分自身に対しての失望感がキューの声を奪っていた。


「お前は寄生する価値も無い。かと言って、その辺の動物のように食う気にもならん」


 彼女の大鎌の刃先が、キューの首元に当てられた。


「通り道に生えた枝先のように、刈り取るだけだ」


 エネルギーが無くなったわけでもないのに、キューにはもう、刀を握る力は無かった。

 彼女が大鎌を構えた。


「終わりだ」


 キューの首めがけて切っ先が振り下ろされた。




「まだ終わってない」


 途端、アイの胸を矢が貫いた。驚いた彼女が咄嗟に振り返ると、触手に貫かれたままの、オーが立っている。

 手には、全ての矢が握りしめられていた。

 オーは矢を再び彼女に突き刺した。アイは避けようともがくが、オーは許さず、次々に矢を突き刺していく。

 5本あるうちの4本を突き刺した時、アイはオーから離れるべくついに地面を蹴った。

 だが、オーは逃さないように自分とアイを繋ぐ、体を貫いたままの触手を握りしめ、力いっぱい引いた。

 中空に浮いていたアイは、オーの眼前まで引き寄せられた。

 オーの赤い瞳が、アイの薄紫の瞳を見つめる。


「アイ。遅くなってごめん」


 オーは胸に突き刺さった触手と、オー自身の体を縫うように、最後の矢を突き刺すと、呟くようにして言った。



「〈システムオーバレヴ・フェイルノート〉」




 オーの両の瞳が煌々とした赤に輝くと、二人に刺さっている矢が帯電を始め、空気を切り裂く音が加速していった。


「お前……」


 アイが言葉を言い終わる前に、オーとアイはキューの目の前でまるで小さな太陽が生まれたように光り輝き、轟音と衝撃波を放ち、爆発した。


ここまでお読み頂きありがとうございます!


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