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ここは終末世界、私は女子攻生と旅をする。  作者: 播磨播州
対インルーラー戦篇
38/43

38話 元女子攻生

「いつも、いつまでも、邪魔をするのはお前たちだ」


 女子攻生の姿をしたインルーラーが、感情の無い声で言った。

 戦場に降り立ったことのないキューは、目の前のインルーラーが直接出会った初めてのインルーラーであった。だから、ここまで全く違和感無く寄生している事に驚きを覚えた。

 目の前に立つ少女は、どこからどう見ても女子攻生にしか見えない。

 その身長はオーよりも頭一つ分小さいが、代わりに顔と同じくらいの長さの耳と、ふわふわで太長いシッポが生えている。


「彼女の顔と声で話しかけないで欲しいね」


 オーにしては珍しく、その言葉に怒気が込められているのをキューは感じ取った。


「彼女を知っているんですか?」


 女子攻生は百人に満たないとは言え、所属部隊に任務によって顔も知らない者も多くいた。そのため、目の前の元女子攻生にキューは見覚えが無かった。


「彼女はアイ。私の部隊員だった」


 その言葉に対して、キューは何も掛ける言葉が見つからなかった。オーも何かを言ってほしかったわけではないようで、そのまま言葉を続けた。


「第3次首都奪還作戦の時に行方不明になってね。戦闘後、私達は必死に探したんだけど見つからなかった。その後、IUVのお偉方は敵前逃亡だって記録したんだ。けど、私はそんな事信じちゃいなかった。仲間の皆だって誰も。人一倍、インルーラーを憎んでいた彼女がやつらから逃げるはずがない。けど……」


 結果、アイという女子攻生はインルーラーとの戦いで敗れ、その体に寄生されて乗っ取られた。それは死ぬことよりも遥かに恐ろしく、敵前逃亡よりも不名誉なことだろう。


「ちゃんと死なせてあげる」


 オーがそう呟くと、アイの頭上に光線が煌めいた。いつのまにか放たれたオーの矢が、彼女めがけて降り注ぐ。

 矢に帯電したエネルギーが空気中で爆ぜ、地面がえぐり取られる轟音は、まるで爆撃のようであった。その威力もまさにそれで、彼女の中心に地面が吹き飛び、土煙が勢いよく舞い上がった。


「すごい……」


 改めてオーの力は凄まじいとキューはその肌で直に感じた。

 つい先程、オーから懇願された願いを思い出す。


『私を殺してほしい』


 そんな事、いくらエネルギーが充分だとしても不可能だろう。

 同じ、人間から生み出された人造兵器である女子攻生だとしても、その差は天と地ほど離れているはずだ。


 だが。

 突然、土煙の中からアイが現れキューに突進してきた。手には何か細い棒を持っている。 

 まるで苦し紛れにその辺りから拾った鉄の棒のよう。

 あれが彼女の武器なのだろうか。

 インルーラーは女子攻生に寄生することはできても、女子攻生の持つ対インルーラー兵装までは奪えなかった。そういうことなんだろう。

 そう思ったキューはすぐさま、距離を近づける彼女にカウンターを与えるべく刀を構えた。


「駄目だキュー、避けろ!」


 オーの言葉をが耳に届くと同時、アイの姿が消えた。

 視線を落とすと、地面スレスレまで腰をかがめて加速したアイが、キューの足元まで到達していた。そしてアイの手に持った細い棒はスルスルと長くなると、先端部分にまるで植物が成長するようにすて半月状の刃先が生まれ、その形は大鎌へと変形した。


「なっ……」


 アイは大鎌を下から上へ薙ぐように振り上げた。

 咄嗟にキューは後ろへ体を引く。

 しかし、長さのある大鎌から逃れきれず、キューの体を刃先が切り裂いた。


「うぅっ!」


 キューは倒れそうになる体を、刀を地面に刺してどうにか踏ん張った。

 自ら、傷に触れてその程度を探った。

 大丈夫。オーの声があったおかげで回避が間に合い、動きが制限されるほどのダメージではない。

 だが、目を上げるとアイは振り上げた反動を使ってまるで踊るように回りながら、そのまま2撃目をキューに振り抜いた瞬間であった。

 間に合わない。

 突如、アイの大鎌部分に次々と矢が突き刺さる。その威力で大鎌はキューの目の前の地面に突き刺さった。

 見るとオーが全ての矢を、アイの大鎌の刃先に放ったところだった。


「今だ、キュー!」


 反撃だ。キューは刀を地面から抜いた。

 だがその間にアイは大鎌を捨てると、キューを無視して片手の五指を触手に変形させて、オーに突き出した。

 触手はオーの両手足、そして胸に突き刺さった。


「オー!」


 キューはアイの首元をめがけて刀を振り抜く。

 しかしもう片方の手も触手化させていたアイは、いつの間にか大鎌を拾っており、キューの攻撃を難なく受けた。


「弱い者から狙おうと思ったら、こうも上手くいくとはな」


 無表情だったアイの口元が釣り上がり、笑った。

 女子攻生が持つことのない、どす黒く、悪意に満ちた笑み。

 それは紛れもなく、インルーラーの笑みだった。


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