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ここは終末世界、私は女子攻生と旅をする。  作者: 播磨播州
対インルーラー戦篇
34/43

34話 ルィとキューの再会と阿鼻叫喚

 私は、本当の意味で初めて、女子攻生という過去に戦争のために生み出された生体兵器の、その強さを目の当たりにした。

 緊急事態として閉じられた村の入口を迂回して、私とミミとリウは、キナコが逃げ出した穴から村へ帰り戻った。そこは入り口からは離れており、人もいない。

 遠く、入り口方向へ私たちは目を向けた。

 そこはミュータント化した村の人と、それと戦いながらも襲われ、またミュータント化して他の村の人を襲うというまさに阿鼻叫喚。さらにどこからか火が燃え延焼し、所々で火の手が上がっている。もう夜も暮れ始めているのに村の中は煌々と明るい。

 地獄絵図であった。


「なにが起きたの……?」

「ねぇ、あれ!」


 ミミが指差したのは、村の入口付近。そこに少女の姿が見えた。ただの少女ではない、頭は獣の耳が生え、お尻から伸びたシッポが愉快そうにふよふよと動いている。見た目はキューやオーのような女子攻生にそっくりだ。

 唯一違うのは、両手から伸びた触手。

 間違いない。この村に来る前に私たちと戦った、インルーラーだ。

 私がその事を2人に教えると、ミミとリウは銃を構えその少女の元へ向かおうとした。


「ちょっと待って! どうするの?」

「戦うに決まってるだろ!」

「駄目だよ! キューですら勝てなかった相手だよ」

「そりゃ、弱かったからだろ!」

「キューは弱くない!」


 いや、ここでそんな喧嘩をしていても仕方がないのはわかっている。けど、いくらこの2人であっても、あのインルーラーに勝てるとは思えない。


「ルィさん。勝てる勝てないじゃないんです。村を守らないと」


 ミミが説得するように言った。落ち着いているように見えるが、すぐさま駆け出したい衝動をどうにか抑え込んでいるようだった。


「ルィさんこそ、あの穴を通って村の外へ。隠れていてください」


 そこまで言うと、ミミもリウも有無を言わさずにインルーラーの方へ振り返った。

 その時。

 日が落ち闇に包まれた夜空に突如、光の筋が現れたかと思うと空からミュータントの群れに突き刺さった。次の瞬間には、雷鳴のような轟音を上げ、ミュータントが青白く光った。


「守護神様だ」


 リウが言うより早く、光の筋は再び夜空を駆けて他のミュータントに突き刺さり、轟音を持ってミュータントを殲滅していく。

 その光の出処に目を向けた。赤髪の少女が洗練された動作で矢を放っている。1度放てば5本の矢が空へ飛び出していくのだが、不思議なことに矢は無くならない。よく見れば、放たれ、ミュータントを屠った矢が意思を持ったように宙へ浮かび上がり、矢筒へ舞い戻っていた。


「あれが、オーの力……」

「ねぇ、あれって!」


 ミミがオーと村の入口の中間を指差した。

 そこには闇より深い漆黒の刀を振り、村の人々に襲いかかるミュータントを真っ二つにしていくキューの姿があった。


「キュー!」


 目が覚めたんだ。どうしてかはわからないけど、キューは起き上がり、そして戦っている。

 だが、ミュータントをまさに蹂躙していくオーとは違い、キューは息も切れ切れにかろうじて戦えている。そんな状態であることが、ルィのいる場所からもわかった。

 このままだと、また意識を失ってしまうかもしれない。


「キュー!」


 私はもう一度、彼女の名前を呼んだ。自然と足はキューの元へ向かっていく。

 阿鼻叫喚の渦中へ。


「ルィさん……駄目です、戻って!」

「おい、何やってんだ!」


 後ろでミミとリウの叫び声が聞こえた。けど、足は止まらない。

 私には、届けないといけないものがある。

 今、ここで渡さないといけない。どうしてか、今、ここでなんだ。その思いが体を包み、操作するように足を動かす。


「キュー!」


 私がもう一度叫ぶと、キューが私の声に気がついて目を合わせた。




「ルィ!」


 良かった、無事だった。キューはホッと胸をなで下ろした。

 その矢先。

 ルィの背後に、現れた少女が一人。逃げ惑い、恐怖の表情を浮かべる村の人間たちとは違い、その表情には笑みが浮かぶ。

 過去に戦い、そして寄生された女子攻生。今は、インルーラーとなった、過去の英雄の1人。


「逃げて!」


 キューの声が届くより先に、女子攻生の姿となったインルーラーの両手は、するすると触手を伸ばし、あっという間にルィの体に巻き付いた。

 キューはすぐさま助けに駆けようとしたが、急激に全身の力が抜けて、刀を地面に突き刺して膝から倒れ込んでしまった。


「ルィ……」


 触手がルィをがんじがらめにする寸前、ルィは何かをキューに投げたのが見えた。


「キュー……お願い……」


 ルィが投げた銀色の棒状の物体が、弧を描いてキューの目の前に落ち、地面に刺さった。

 両翼を背景に、女性の顔が描かれているのが目に入る。

「……これは」


「驚いた。FBS、見つけたんだ」


 いつのまにかキューの背後に立ったオーが言った。


「キュー、それを使ってルィを助けるんだ」

「……けど、私には倒せません。一度負けているんです。だからこれは、オーが使ってください。オーじゃないと……」

「私は、村の人間を守るだけで精一杯だよ。それに、さっきも言っただろう? キュー、君の武器は……力は、私よりも強いんだ」

「そんなわけがありません」

「キュー。必要なのは、心の強さなんだ。君の心に強さを宿すんだ。そうすれば、君の器の本当の力が現れる」

「心の……強さ」


 オーはもうそれ以上何も言わず、ただ頷いた。そして、キューに背を向けて再び村に溢れたミュータントに向かって矢を放った。

 心の強さ。それこそが、キューには必要だとオーは言った。

 そうすれば、器の本当の力が現れる。


「……器」


 キューはルィに視線を戻した。両手足だけでなく、首にまでインルーラーの触手が巻き付いたルィは、地面から浮かぶように持ち上げられて、苦しそうに息を漏らしていた。

 わからない。オーが言っていることは、何もわからない。


 だけど。


 今、やるべきことは一つしか無い。それはわかる。

 それが、ようやくわかった。


 キューは、地面からFBSを拾い上げると蓋を外し、露出した針を勢いよく首に突き刺した。


少し仕事が立て込み更新に間が空きました。

あと少しで一区切りですので、お付き合い頂ければ幸いです。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

よろしければブックマーク、評価など頂けると大変うれしいです。

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