27話 追跡
私たちは広い通路をライトを消して真っ暗闇の中を進んだ。
この先に、ミミを捕らえたままの略奪カンパニー男3人がいる可能性が高い。そうなると、この暗闇でライトを点けていれば、いくら後ろからだとしても私たちの存在にすぐに気づかれてしまうだろう。それで逃げられるならまだしも、待ち伏せでもされたらどうしようもないからだ。
真っ暗闇の中を進むことなど不可能に思えるが、リウには見えているらしい。(私はすでに視界には闇しか映っていないが)
リウは村の中でも夜目がかなりきくほうで、ミミが落ちてきたと思われる崩落場所から漏れた光を頼りに、難なく進んでいる。
私はリウから差し出されたライフル銃の底部分を掴み、目を開けていても閉じていても変わらない闇の中をビクビクしながら進んだ。
リウはフラフラと右へ左へと揺れながら歩く。たまに私の肩や腕に硬いものが当たった。恐らく何かしら障害物が多くて、それを避けながら歩いているのだろう。
しばらく歩くと、またもや穴の空いた天井が見えた。それも一つだけではなく、進む先に大小様々に穴が空いている。
この辺りは、地盤が不安定なのかもしれない。私たちの真上から崩落されたらと考えると恐ろしくてたまらないが、反対にその穴から漏れる光のおかげで、私の視界もようやく光を得ることが出来た。
「わぁ」
私は思わず声を上げた。様々な種類の車両が通路を満たすように並んでいた。私のいた時代で目にしたことのある車種もあれば、どこか近未来的な(今の時代から考えれば前時代的な)フォルムをした車種まで。
その数々の車両が隙間なく並んでいる。綺麗に等間隔とうわけではなく、後続が押し込んで押し込んで詰まっていったという感じで。
何かから逃げようとしたのかもしれない。車両の中には死体の痕跡は無かったので、乗っていた人々は車を降りて徒歩で先を急いだのだろうか。
改めて、私が眠っていた間に、私が生きていた土地で大きな戦争があったという事実を肌で感じた。
リウが1台、車のボンネットを開けた。
「オルタネーターは無事そうだ」
リウは所狭しと並んだ車列を見て言う。
「これだけあれば、村の発電機を増やせるかもな」
オーの村は自給自足のシステムがしっかりと構築されていて驚いたが、こういった旧文明の資産をしっかりと受け継いでいたからだろう。
「なんにせよ、今はミミを追おう」
私が視界を得ることが出来たおかげで、ミミを追うスピードは格段に上がった。
同じようなタイミングでこの地下に落下したとしても、あちらは捕らえたミミを連れて歩いてる。きっと歩調はそこまで速くないはずだ。もう少しで追いつけるはずだ。
通路はまだ先へ続く。どこかの施設跡に入って、入り組んだ構造の中で追いかけるよりは遥かに良いのだが、先程から何度か私たちの前や後ろ、時には目の前に天井が崩落してきた。
私たちが歩く少しの振動でも崩落する可能性がある。それが心配だった。
今の所、人が2人3人通れるくらいの大きさの穴で済んでいるが、この天井全体が落ちる危険性だってある。
そう考えると、ミミに追いつけるかという焦りとは別に、背筋が凍えるような嫌な焦りも追加された。
「ミミちゃん大丈夫かな……」
「あいつはお前とは違って強いから」
「どうせ私は弱いですよ……けど、ちゃんと信頼してるんだね、ミミちゃんのこと」
「……はぁ?」
「大丈夫。私はミミちゃんのこと取らないから」
「なっ……なんのこと」
リウが怒りなのか恥ずかしさなのか驚きなのかわからない表情になる。けど、顔が赤面していることは確かだった。
それを見て、私は思わず「ふふっ」っと笑った。
「お前、覚えてろよ」
「ちゃんと覚えておくよ」
リウが更に言い返そうとこちらを見たが、すぐにその表情が変わった。
「伏せろ」
リウは小声でそう言うと、私の腕を掴んで並ぶ車の影に引き込んだ。
2人して顔だけ覗かせて先を見る。
いた。略奪カンパニーのあの3人が、1台ずつ別れて車の上に座っている。
水筒から水を飲んだり、パンのようなものをちぎって食べていることから、休憩中のようだ。
「ミミちゃんは……?」
ここからでは、ミミの姿が見えない。少なくとも男たちのように車の上にはいない。
「こっち。静かにな」
リウに連れられてそっと、男三人の元へ進む。
車列のおかげで、姿を隠しながら近づくのは容易だった。
「スラバキの村はミュータントにやられたらしい。悪くない取引相手だったのにな」
男たちの声が聞こえる距離まで近づいた。再び私たちは顔を出して様子を伺う。
「最近、ミュータントの数が増えてる気がしますわ。今年だけで七体は殺りましたから」
ニット帽男が、リーダー格の男に言う。
「あいつらは、俺達の中からも生まれるからな。最後にこの星に立ってるのは、俺達じゃなくてあいつらだろうよ」
「若い女を喰うと、ミュータントにならないってききやしたぜ」
ヘルメット男がニヤニヤしながら言った。
「だったらどうしてガウグランドのやつらもミュータントになってんだよ」
ニット帽男が反論した。
「そりゃ、ありつけなかったやつもいるだろうよ。若い女なんて、中々見つからないだからよ」
ヘルメット男が答えた。
「そんな話、いくらでもあるだろ。迷信だ、迷信」
リーダー格の音が笑って言った。
「じゃあ本当なのか、こいつ喰っちまうってのはどうですか」
ヘルメット男がそういうと、手に持った鉄条の紐を引いた。
「うぅっ」
小さく呻く声が聞こえた。
紐は、地面に向かって垂れていた。
私はばれないように慎重にちょっとずつ背を伸ばして、紐の先を辿った。
……ミミだ。
ミミは地面に伏せるように倒れていて、殆ど動かないでいた。
彼女の顔や体には多くのアザが出来ており、口からは血が垂れていた。
きっと抵抗したんだ。それで……。
「馬鹿野郎。こいつ喰っちまったらもう商品が無くなるだろう。全く、信じられねぇよ。三匹もガキが手に入ったって言うのによ」
リーダー格の男が呆れたようにそう言った時であった。
「お前らっ!!」
リウがあっという間に車を乗り越えて飛び出し、銃を乱射しながら男たちの元へ駆けていった。
とりあえずの第一章てきな区切りは考えいて、現状3分の2くらいです。
と言っても、書いてるとどんどんと書きたいことが増えていきますね。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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