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ここは終末世界、私は女子攻生と旅をする。  作者: 播磨播州
FBS探索編
22/43

22話 キナコ捜索と喧嘩と危機

 廃墟群には高層建築物が多く残っているとは言え、崩壊した建物も多く、まともに歩ける場所は多くはなかった。

 倒れた建造物や生い茂る草木を乗り越えながら、私たちは少しずつ奥へと進んでいく。


「キナコー! でておいでキナコー!」

「おい、ミュータントとか出てきたらどうするんだよ!」


 猫の名前を呼ぶミミを、リウが怒って止める。


「だって、名前呼ばないと見つからないよ」

「名前呼ばないようにして探すんだよ」

「どうやって」

「これ見てみろ」


 リウはそう言うと、地面にしゃがみこんで何かを拾い上げた。

 ふわふわとして長い毛だ。


「それって、キナコの?」

「ちょうど今、換毛期だったからな。所々に落ちてるから、これをたどっていけば」

「リウにしては頭いいじゃん!」


 ミミが嬉しそうに言う。


「うるせーな」


 リウは素直に喜ばずに、次なるキナコの毛を探して地面を見ながら先へ進んだ。

 私は、リウが捨てたキナコの毛を拾い上げてみる。


「ねぇ、キナコってどんな猫なの?」

「えっと……ふわふわの毛をした可愛い子ですよ。抱きつくと柔らかくて」

「ふーん」

「どうしました、ルィさん」

「ううん。なんでもない」


 私はこの落ちている毛に関しての疑問をあまり追求しないことにして、リウの後を追った。ややこしくなりそうだからだ。この猫の毛にしては、どうにも長いなという疑問を。

 それからしばらくの間、キナコの落ちた毛を追って廃墟群の中へと進んでいった。日差しは強いが、廃墟群を風が抜けるために涼しいほどだった。


「ねぇルィさん。その……なんでしたっけ。探しもの」

「FBS?」

「そう、それです。そのFBSっていうのは、どこにあるのかわかってるんですか?」

「うーん、オーからはIUVの基地があった場所にあるかもってくらいしか聞いてないんだよね」

「IUVって、守護神様がいたっていう軍隊ですよね。それから、キューさんも」

「う、うん」


 キューの告白を聞いた後だったので、素直にはうなずけなかった。いや、間違ってはないのだ。キューも立派なIUVの一員だったことは間違いない。


「けど、その基地の場所って聞いてないんだよね。黙って出てきちゃったし」

「じゃあ、どこか高いところに昇ってみませんか? そしたら見つかるかも」


 ミミはそう言うと、少し先を行くリウに叫んだ。


「リウー! あそこ行こうよ!」


 リウは嫌そうな顔をして振り返る。


「ほら、あそこ!」


 ミミが指差した先は、先程目にした半壊した時計塔跡だ。

 確かにあそこならこの廃墟群全体を見渡すこともできるだろう。


「リウとここに着た時、何度か昇ったことがあるんですよ。すっごい見晴らしがいいんですよ。村の見張り台よりも」


 ミミが嬉しそうに教えてくれた。これでわかったが、どうやらミミは高いところが好きなようだ。


「ねっ、リウ?」


 リウは変わらず不機嫌そうな顔でミミを見ている。


「どうしたの。リウ」

「どうしたって? ……もういいよ。そんなんなら、ミミはそいつと一緒にいればいいじゃん。キナコは俺が一人で探すからさ!」


 リウは振り返り、先へ進み始めた。


「ちょっと!」


 私とミミもリウの後を追うが、足の遅い私に歩調を合わせてしまったので、あっという間にリウの姿を見失ってしまった。


「なによ、リウの馬鹿」


 ミミが不安そうにつぶやいた。

 しかたなく大きな瓦礫で出来た影の下に、しばし休憩しようと二人で腰を降ろした。

 村を出る時にミミがリュックに入れてくれていた水筒から水を飲んだ。

 わざわざ煮沸消毒しなくてよいのはありがたい。

 水筒から口を離すと、一息ついて私は言った。


「ごめんね……ミミちゃん。私のせいで」

「ルィさんのせいじゃないですよ、全く。リウはいつもこうなんです。本当、子供なんですよ」


 ミミはそう言ってため息をつくが、どこか不安そうな横顔に見えた。


「私の事はいいから、先にリウを探そう?」

「いえ、こうなったら別行動です。私たちは、そのFBSを探しましょう」

「けど……」

「いいんです」


 リウは子供ながらの(といっても私とそれほど変わらないけど)頑固さであるけど、どうやらミミもこう見えて同じくらい頑固なようだ。

 ここで押し問答を続けていても埒が明かないので、私はミミのお言葉に甘えることにした。

 ミミはが差し伸べてくれた手を取り、私は立ち上がった。


「まずはさっき言った時計塔に言ってみましょう」

「おっけー」


 時計塔まではおよそ500メートルほどに見えた。運良く瓦礫の積み重なりも少なく、そこまで苦なく到着できそうだった。


「銃、重くないですか?」


 私の先を行くミミが、振り返って聞いた。


「軽くはないかな。けど、ミミたちはこういう銃を毎日担いで巡回してるんでしょ?」

「もう慣れちゃいました。それに、その銃が何度も身を守ってくれましたから」


 少し高い段差があり、ミミが先に昇って私を引き上げてくれた。

 昇りきると、私は一息つく。


「なるほどね。思い出の銃ってわけなんだ?」


 ミミはどこか懐かしそうに、私の肩にかかった銃を見た。


「その銃は死んだ父の銃なんです」

「お父さんの……?」

「はい。父は私が10歳の時にミュータントになりました。母も私を生んですぐに亡くなっていたので、それから1人になっちゃって……けど、その銃を持っているときだけは父を感じられて寂しくないし、何が起きても大丈夫って気持ちになれるんです。今はもう平気なんで違うのを使ってますけど、それでもたまに巡回に持っていくこともあります」

「そ……そんな大事な銃を私なんかが持ってていいの……?」

「違いますよ。だから、持っていて欲しいんですって。何か起きても、その銃が守ってくれますから。ルィさんを」


 ミミはそう言うと、ふふっと笑った。


「それは……頼もしいね」


 頼もしいが、絶対に失くしたり壊したりできないなという私はプレッシャーに似た重圧を感じた。絶対に生きて村に戻って、ミミに返そう……。


「1人で暮らすの、大変だね」

「そうでもないですよ。村の人達は色々助けてくれますし、守護神様もいつも心配して色々身の回りのことしてくれたり、相談に乗ってくれたりしてくれますし」

「へぇー、オーが」

「見た目はあまり変わらないのに、親みたいで。それに、リウも色々助けてくれますし……」


 ミミはそこまで言うと口を閉じてしまった。これは早いところ用事をすませて、リウを探して仲直りしてもらわないと。


「さ、もう着きますよ」


 ミミが立ち止まり言った。

 視線を上げると、いつのまにか時計塔跡が間近に迫っていた。

 時計塔跡は近づくとさらに高く感じるだけでなく、草木が生い茂った巨大な建造物というものの異形さにどこかワクワクとした興奮を感じた。


「あれって、上まで昇れるの?」

「中に階段があるんで大丈夫です。それにところどころには、はしごが掛けられてるんです。多分、昔の人達が使ってたんじゃないかなって」


 昔の人。と言っても、私からしたら未来の人なんだろうな。この300年の中で、この廃墟群で生活していた人たちがいたとしてもおかしくない。

 しかし、またはしご。そしてまた高いところか……いやいや、これもFBSを手に入れるため。キューを目覚めさせるためだ。


 と、そこまで考えてふと思った。私はキューを目覚めさせてどうする? このままキューを眠らせたままというのが後味が悪いからと、勝手な理由で勝手な行動をしているわけだけど、その先に待っているものもまた勝手な結果なのではないだろうか。

 だってキューを回復させたとしても、キューの任務を続けることは出来ないのだから。

 このまま一緒にオーの村で暮らそうよ。なんてキューに言ったところで、キューが納得してくれるだろうか。いや、してくれるはずがない。じゃあ、このままほとんど眠ったままにさせておくのが正解なのだろうか……?


「うーん」

「……どうしました?」


 思わず、ぐるぐると答えのない思考の末の情けない声が出てしまい、ミミが心配そうに私の顔を覗き込んだ。


「なんでもない、ごめんね。とにかく、昇ろう」


 ミミは「変なルィさん」と言って小さく笑った。

 その時。

 どこからか耳鳴りのような機械音が聞こえたと思うと、時計塔を見上げる私の首に何かがぶつかった。


「え?」


 手で首のあたりに触れた。すると、何か鉄の輪のようなものが首に巻き付いている。巻き付いていると言うか、完全に嵌っているというか……。


「ねぇ、ミミちゃん……これって」


 と、口にしたのも束の間、私はそのまま力いっぱい後ろに引っ張られた。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

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