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仮設風向計/詩集その3

原動

作者: 浅黄 悠

 僕の生きている時間を一本にしたテープを早く巻き取ってしまいたい

 終わりの直前まで


 僕のほか覚えている奴もいないだろう古い傷を

 スコップ持ってわざわざ抉り返しに行き

 同じ場所を何度もぐるぐると

 目が回るぐらいに歩き続ける

 考えるとはそういうこと

 答えの出ないものに必死で答えを出そうとして

 笑われる覚悟をして

 声の出ない喉を震わせる

 何かを作るとはそういうこと


 幸せを感じるのに代償なんか要らない

 笑顔になるのに遠慮は要らない

 それはまるで四則演算のように明快な

 子供の頃の僕が知っていた生き方をすればいい


 直線のように生きられたら良かった

 我儘に捨てることも得ることも出来る

 そんな生き方が出来れば良かったんだ

 あるいは苦しみを先に拾いつくしたら

 後の苦しみが減るなんて

 世の中みんなそうだったら良いのに


 悩みたがるのは何故なんだ

 教えてくれよ

 __まだ乾いていないパレットの上の絵具が

 ケースの中で眠る金管の輝きが

 瑞々しく横たわる葡萄の房が

 新調したデジタルカメラが

 削った鉛の見せる柔い黒が

 広い世界

 遠い空

 行き交う人の言葉が

 僕を揺さぶり起こすんだ


 乱暴に苦しむ

 余白に首を絞められるかのように

 手動で時間を消費する

 時に暴れる誰かの巻き添えを喰らったりもする


 こんなに苦しいのに

 何故目を瞑っていられないんだ

 僕の生きる地球は

 何故こんなに鮮やかなんだ

 今度こそ穏やかに生きていきたいと

 楽になっていたいと言っているのに

 思っているのに!





 それでも楽しいから仕方が無いなんて

 僕はそんな馬鹿野郎だったのか

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― 新着の感想 ―
[良い点] 突き刺さりました。 一行、一行、読み返しました。 こんな感情、昔は抱いていたなあ。若かったんだなぁ。 …と、若くない今の私は傍観者のようにそう思います。 ラストの二行が特に良かったです。
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