原動
僕の生きている時間を一本にしたテープを早く巻き取ってしまいたい
終わりの直前まで
僕のほか覚えている奴もいないだろう古い傷を
スコップ持ってわざわざ抉り返しに行き
同じ場所を何度もぐるぐると
目が回るぐらいに歩き続ける
考えるとはそういうこと
答えの出ないものに必死で答えを出そうとして
笑われる覚悟をして
声の出ない喉を震わせる
何かを作るとはそういうこと
幸せを感じるのに代償なんか要らない
笑顔になるのに遠慮は要らない
それはまるで四則演算のように明快な
子供の頃の僕が知っていた生き方をすればいい
直線のように生きられたら良かった
我儘に捨てることも得ることも出来る
そんな生き方が出来れば良かったんだ
あるいは苦しみを先に拾いつくしたら
後の苦しみが減るなんて
世の中みんなそうだったら良いのに
悩みたがるのは何故なんだ
教えてくれよ
__まだ乾いていないパレットの上の絵具が
ケースの中で眠る金管の輝きが
瑞々しく横たわる葡萄の房が
新調したデジタルカメラが
削った鉛の見せる柔い黒が
広い世界
遠い空
行き交う人の言葉が
僕を揺さぶり起こすんだ
乱暴に苦しむ
余白に首を絞められるかのように
手動で時間を消費する
時に暴れる誰かの巻き添えを喰らったりもする
こんなに苦しいのに
何故目を瞑っていられないんだ
僕の生きる地球は
何故こんなに鮮やかなんだ
今度こそ穏やかに生きていきたいと
楽になっていたいと言っているのに
思っているのに!
それでも楽しいから仕方が無いなんて
僕はそんな馬鹿野郎だったのか