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6.初めての食事と第二の系統魔法

少しグロいかも


 恐る恐るネズミの方に近づいてみる。襲ってきたのは三匹だったが、二匹しかいなかった。まだまだ精密の熟練度も上がってないから、全体を狙ったつもりが、一匹は熱風に巻き込まれるだけで済んだのかもしれない。ここに残っているネズミは、どちらも黒焦げで、もともとは毛があったであろう肌も何もなくなっていた。逃げた一匹も熱風だけと言っても、至近距離で受けたはずだから、やけどしたかもしれない…

「ごめんなさい…」手を合わせて小さく謝った。

「とりあえずこれを食べるしかないのはわかるけど…食べれるのかな?」 

 実際、今からこの草むらを抜けてから食べ物を探してる余裕はないくらいお腹がすいていた。さっき自分で殺したのがショック過ぎて食べづらいというのもあるけど、そもそもネズミなんて食べたことない。 だが、海外では食べると聞いたことがある。だから、そこそこ美味しいのではないだろうか。けど、食べれるのがわかっても、まるごと食べれるかはわからないし、もしまるごと食べれないとわかっても解体も出来ない…

「でも…やるしかないよね…」

 そして、解体を始めるための準備を初めた。まず、こぶし大の石を思いっきり他の石に叩きつけて割る。あまり割れ具合にこだわれるほど石がないから、最初に出た丸っぽい破片を使うことにした。そして、草で作った皿の上に二匹のネズミを置き、

「ゴクリ…」つばを飲み込み、

「ごめんね…」もう一度謝ってから、意を決してまずお腹の中心に沿って切れ目を入れた。あまり切れ味は良くないと思っていたが、どうやらそこそこの切れ味はあったらしい。まるこげになっているからか皮を剥くときにはそこまで血が出なかったからホッとする。二匹とも皮を向いた時点で少し考えた。

(見た感じ、後ろ足が結構太いから、ここだけ食べて、その他は『供物』か発熱の燃料として使えばネズミさんに対して失礼にはならないよね…)

 まだ皮を剥いたただけだったが、それだけでも、手は小刻みに震えて鼓動がかなり早くなっていた。もし鏡が目の前にアレば、そこには顔を真っ白にした自分がうつっていただろう。

 一人暮らしだから肉を切ることは多いけど、生きていたものを自分の手で殺したのを、自分で解体するのはそれとは違ってかなり心に来るものがあった。

(けど、これを食べずに捨てるのもこのネズミさんたちに対して失礼だよね…)

そう思い、足の付け根から切り取ろうと思って肉を切ったが、骨は切れない。なので手でしっかり掴み、深呼吸をした後、両腕に思いっきり力を加えて、

「ゴリッ」と引きちぎった。動脈か何かが通っていたのだろう。血がたくさん出た。内容物のない胃から酸っぱいものが上がってきた。それでも、目に一杯の涙をためながらこらえて解体していった。

 それから、残った胴体部分のうち一つを供物にして、もう一つを燃料にして指を一回こすり合わせつつ、

「着火」そう唱えて草に火をつけた。

 2つの胴体は片方は供物として全部消え、片方は燃料として使ったからだろうか、骨だけを残して消えた。

今つけたばっかりの火で、もともと焼けていた肉を少し炙ってから、

「いただきます…」感謝と謝罪を込めてそう言って食べ始めた。

「おいしい…」お腹が減っていたからなお美味しく感じたのだろうが、それを差し引いても美味しかった。そして無言で食べながら、

(もしかしたら三匹いたから家族だったのかも…前の二匹が親で後ろにいたのが子供だったのかな…もしかしたら襲ってきたんじゃなくて、ここに家があって夜になって帰ってきただけなのかも…一匹残ったのは後ろにいたやつだろうから子供かな…これから一人で生きていくの大変かな…それともネズミは夜行性だから、親と一番上のお兄ちゃんが弟妹たちのために餌を集めに来たのかな…それならあの一匹でこれから弟妹を養っていかないといけないのかな…)事実はどうであったかなどわかるわけはないが、そんなことを考えていたら溢れそうなほど一杯に溜まっていた涙がこぼれてきた。一滴溢れると二滴三滴目は次々にこぼれてきた。

「ごめんなさい…ごめんなさいっ…」謝罪の言葉を口にしながら食べた涙の味がするお肉は、今まで食べてきたどんなにおいいしいお肉よりもありがたいものに感じた。



お肉を食べた後、いっときは無心で草の紐を編んでいた。しかしずっとそうしてるわけにもいかない。

(これからどうしようか…ここにいたら、そのうちここは人でいっぱいになるだろう…その人たちが友好的とも限らないし…もし襲ってきたら…今度はその人たちに向けて…)

「うっ」さっき食べたものが出てきそうになり慌てて飲み込んだ。

(とりあえず遠くに行こう。そこでここみたいな草原を見つけてこのネズミ夫婦の墓を立ててそこに根を下ろそう。)そう決めたのだった。…あの二匹のネズミが夫婦だったかどうかはわからないが。

そして、現実時間の時計を見てみる。

(まだ八時前くらいの時間だ。十二時でやめるとして、ログアウトするまでに五日間くらい出来る。けど5日じゃそんなに遠くまで行けないだろうし、今日は準備に費やして、明日移動しよう。)そう考え、長距離移動に必要なものを考えた。まず水だろうか…これは収束の魔法でどうにかなるんじゃないか?

そう考えて、草を両手に握り…

「収束!」

狙いを、『草の中の水』と意識しながら唱えてみたのだが無理だった。なんの効果も示さないまま草は地面に落ちていった。

「やっぱり水を作るためには水系統魔法とか必要なんだろうな…」

(水について考えるか…てか、サバイバルゲームのはずなのに体より頭を使うじゃないか!)そんな感じで水に関して考え始めた。

 まず基礎からいこう。私が今欲しいのは液体の水だ。水には氷、水蒸気、そして単に水と言われる3つの状態がある。

普通の気圧の時、氷と水の間の境目は0℃、水と水蒸気の境目は100℃。…流石に小学校で習うレベルの内容だけあってこのくらいじゃ水系統は手に入らないらしい。じゃあもう少しレベルを上げていこう。

水は化学式でH2エイチ・ツー・オーだ。体積比で水素と酸素の混合気体を燃焼させると、発熱反応を経て水蒸気になる。水の分子量は18。いろんな物質を溶かす溶媒として優秀…そんな感じで水に関してあれこれ考えてみたが…

まだ水系統を開放出来ないらしい。

(このゲーム、魔法の会得条件はまだしも、系統を開放するのは普通の人には難しいんじゃないか?けど、火の系統は簡単に開放できたよね…なんの違いだろ?)

そういえば、あのときは火をつける条件を考えていたんだった。じゃあ、深い理解ってのはそれを作る条件を考えればいいってことかな…けどさっき水素と酸素でできるって考えたから、もしかして、存在する条件なのかな?そう思い、少し視点を変えて水について考えてみる。

(実験室内の話でいえば水を作るには、水素と酸素を程よい混合比率で燃やせばできるけど…)

一応もう一度作る条件について考えてみたが…天の声無反応

(存在できる条件…そういえば、火のとき、空気があることって条件を入れなくても開放されたってことは、地球上ってのが根本的な条件なのかも…ん?)地球上では、ほぼすべての場所に水は存在するはずだ。大気圏内なら、砂漠であっても空気中には水蒸気として存在している。海は言うまでもなく、地中は、浅いところでは、地下水として、もっと深いところでも鉱物中に結晶水として存在している。じゃあそれより深いところは?それより深いとなると、ある程度の知識はあるものの、まだ解明されてることのほうが少ないくらいだから、お手上げだ。だからそれ以外をまた考えてみよう。

 多分、『どこにでも存在する』って言うのでも天の声は何も言ってこなかったからどこにでもあるわけじゃないんだろうな…地球上に水が存在しない場所なんてどこにあるんだ…それこそ、科学実験とか、いろんなものの製造工程とかしかないだろ。

(ナトリウムとかって水に触れると爆発みたいなことが起こるらしいし)

そんなことを考えていた時、

《条件 1.魔法の素質2.単一現象への深い理解 のクリアを確認しました。【水】の素質を確認しました。水系統魔法の行使が可能になりました。》

…え?そんなことでよかったの?天の声さん?

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