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10.ネズミの巣

 獣道に入ってどのくらい経つだろうか…未だにネズミたちの気配もあの集団の気配もしない。

(もしかしてこの道じゃなかったのかな?)

 そんな感じで不安になていたが…

「何者だ!」

 そんな心配はいらなかったようだ。足元を探してみると、そこら中の草の影とかに穴が在って、そのうちの一つから、ブラウンより少し大きいネズミが顔を出していた。

「あ!ネズミさん達こんなところにいたんだ。私、リン。人間なんだけど、今、知り合いのネズミを探してるの。ブラウンっていう灰色ネズミ知ってる?」

「なんで人間なのに俺達の言葉がわかるんだ…」

「なんて言ったの?聞こえなかったんだけど」

「あ?あー悪いお前がこっちの言葉を理解したことにびっくりしてて…」

「あぁ、魔法の力なのそれよりブラウンってネズミを探してるんだけど」

「ブラウン?ブラウン…あー!そのネズミならさっきここに来て本部からの命令を伝えに来たけど…お前の名前は?」

「さっきも言ったじゃん!リンだよ」

「え?さっきも言ったのか…それは悪かった…それよりお前がリンか、お前が来たら本拠地まで連れてこいと命令されていたんだ。」

「え?それほんとにブラウンが言ったの?」

あんなに殺す気満々だったからてっきり追い返されると思っていた。

「ブラウンは命令を伝えに来ただけだよ。あんたを見つけるまでは監視と捜索に人員を回せという上からの命令だったんだ。そしてお前が来た後は…」

ネズミさんはそこで一旦区切り、穴の中にいた他のネズミに向かってこう言った。

「本部、各前線監視員に連絡!鈴を発見これより本部へ護送する」

「ハッ。直ちに」

そう言って穴の中にいたネズミは走っていった。

「ネズミさん?私が来た後は何なの?」

「今まで、俺達の部族は人にも普通に接してきたんだ。言葉は通じないが、それでも森の中で傷ついた人間がいたら、傷の手当をして森の出口まで送っていったりしてたんだ。それなのにある時から、森の木の実をなくす勢いでちぎったり、水飲み場を占領したりするようになったんだ。」

「その話と私の質問関係あるの?」

「関係があるから話してるんだろう!俺達の部族の長老達もそのくらいなら…って住処を少しずらしたり、人間と活動範囲がかぶらないようにしてたんだ。

 けど、そんなコチラの努力をあざ笑うかのような事件が起きた。いつものように怪我をした人間がいたから、みんなで森の出口まで運ぼうとしてた時。もう少しで森の出口だという時に、人間どもが集団で襲ってきたんだ。けが人だけでも助けないとっと思ってけが人の前に出たネズミは、守ろうとしたけが人に刺されて死んだ。

 その時その場にいたネズミたちは、人間に手出しせずに逃げてきた。だけど、人間たちの追撃を受けて…それを振り切って逃げ延びたのは一人だけだったんだ…

 長老たちの間では、俺達はずっと人間たちを助けてきたのにどうして人間は襲ってくるのか…そんな議論が連日繰り返されたらしい。」

「それは、人間があなた達を食料として見ていて、しかもその食料は人間には危害を加えないとわかってるからでしょ?それよ――」

「あんたもそう思うのか?」

「ん?あなた達を食料と見てるってこと?さっきここに向かって歩いている人間の集団がそう言ってたの。」

「そっか…あの女の判断は間違ってなかったのか。」

「ねぇ、なんのことか説明して!」

「あぁすまない。で、その人間たちの襲撃からそう日を置かずして、森の中で倒れていた人間の女を見つけたのさ。あんときは、俺も含めみんなどうするべきか迷ったが、長老たちの議論の結果も出てなかったから、結局助けてやることにしたんだ。お腹を空かしてたみたいだから、巣に運んで食べ物を上げていたんだ。最初は元気のなかった女の子も少しずつ元気になっていって、言葉はわからないけど、感謝してたみたいだった。

 けどその女の子、何日か後に突然ネズミの言葉を話しだしたんだ。」

「え?私みたいに?」

「そうだ。そこで、長老たちは、人間のことを知りたくて、今までの我々灰色ネズミのしてきた事、そしてここ最近人間が取るようになった行動を全部話して、人間がこんなことをする意味は何なのかと聞いた。そしたら、その女はお前と同じように、この付近の人間が急激に増えたことで食糧難になり、穏やかな性格の我々が食料として目をつけられたからだろうと言っていた。そして、その女はこういった。

『私事情があって集団に属さないといけないけど人間の集落のトップの人たちとうまくいかなかったの。だからあなた達の仲間にしてほしいの。あなた達には助けられたのにお礼も出来てないし、あなた達は優しそうだから…わたしにできることなら何でもするから!お願い』

 そこで、長老たちは、その女の子を人間の知識を持つ者、いや、それ以前に、初めてこちらの善意に答えてくれた人として仲間に加えた。それから、その女の子を加えて、人間はどんなことを思ってネズミを襲うのか、どうすればそんな人間と極力争わずに済むかなどを長老たちが話し合った結果、巣穴を掘る要領で森全体に連絡用の穴を張り巡らせて、その中に隠れながら生活して、それと同時に新しい住処を探すことに決めたんだ。」

「新しい住処を探してるのがブラウンだよね?」

「ブラウンとその両親は住処を探す奴らの中で一番遠くまで足伸ばすはずのやつらだった。だが、そいつが昨日出たと思ったら、今日の早朝にここに一人で帰ってきて、少ししてまた出ていったんだ。そして今度は泣きながら戻ってきた。俺は何があったのか聞いたが、『長老に報告に行く』そう言っただけで言ってしまったんだ。そして、それから少しして帰ってきてこういったんだ。『前線監視員を増やして、リンという女の人間の捜索をしろ。そして、もし見つかったらすぐに本部に連れてくるように頼む。』そう命令されたんだ。だから一緒に本部に来てくれないだろうか?」

「わかった。けど…私はネズミさんたちみたいに小さくないから、この穴に入れないんだけど?」

とりあえず、事情はわかったし、半部に言っても危険はないだろうこともわかっているけど、そのネズミが出てきた穴は、私の頭が入るかどうかという大きさだったのだ。

「ん?あぁ、あんたにはここから入ってもらうわけじゃないよ。少し森の奥にはなるが、ちょっと入り込んだところにあんたでも入れるような入り口があるだ。そこからあんたの迎えが来る手はずになってるから心配すんな。」

なるほど、それは安心。

でもその答えを聞いてまた疑問が出てきた。

「なんで、ネズミの巣穴にそんなでかい入り口があるの?」

「ん?お前知らないのか?あぁ…お前があったことがある灰色ネズミって、ブラウンと俺くらいだもんな…まぁ迎えが来てみればわかるさ」

「何よそれ」

 来たらわかるなら来るのを待てばいいだろう。そう思いながら、私は待ってる間何もすることもなく、ネズミさんと色々話をしていた。

 このネズミはオスで、フレンという名前らしい。それから、女の子から、この世界がゲームで、最近襲ってくる人間はプレイヤーだろうという話は聞いたらしい。だが、それがわかっても、彼らは私達プレイヤーを普通の人(ゲームの説明書に載ってた原住民)とは区別出来なかったそうだ。

私が、『よくそんなゲームとかいうものが信じれたね』と聞いたら、『実際に、目の前で『ろぐあうと』なるこの世から魂のみを抜け出させる魔法を見せられるたら信じざる負えない』と言った後、『あの魔法を見たら、集団に属さないといけないと言っていたあの女の言葉の意味もわかったしな。』そう言ってた。


そんな感じでいっとき話していたら、そのうちかすかにではあるが、地響きのようなものが聞こえてきた。

「何この地響き?」

「俺達の灰色ネズミの種族は、細かく言えば3つほどの種族にわけられるらしい。小さいが、足の早いブラウンたちのようなもともと草原に住んでいた種族、ブラウンたちよりも少し大きくて、木登りが得意な俺達のようなもともと森に住んでいた種族、そして…」

その時地響きの正体が目の前に現れた。

「え…」

「…そして彼らのように、大きくて力強いもともと山に住んでいた種族。」

目の前に現れたのは、馬ほどの大きさのネズミだった。

「ふ、フレンたちの中で一番大きいネズミさんなの。彼は」

驚きつつフレンに聞くと、

「まさか、これでもあの女が、『人間の女の子に大きなネズミを見せたら腰が抜けちゃうよ』と言ったから、かれは、山の種族の中から一番小さい部類だよ」

また驚かされた。一番大きい個体は、このネズミもっと大きいらしい。

「こ、これで!?」

「まいいから、早く乗って」

そう言ってフレンが鼻を向けた先には、大きなネズミの上に、足をかける紐と、座布団のようなものが置いてあった。

「まぁ、ふかふかしてそうだしここまで気を使ってくれたんだからいかないといけないよね」

そう言ってネズミの背中に乗った。

そして、リンをのせたネズミと護衛のフレン、二匹のネズミとともにリンは人間の女の子もいるという本部に向かった。

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