今日も冷たい彼へ①ファーストキス
一話完結型ストーリーです。
キーンコーンカーンコーン
今日一日の最後の授業の終わりを告げるチャイムと共に「このままホームルーム続けるぞー」数学担当の藤川先生は、このクラスの担任だ。
「もうすぐ三者面談あるから各自、忘れず、親御さんにプリント渡せよー」
皆は既に放課後の予定に花を咲かせ、何処に行こうか等と、少し騒がしい。
「はる、今日の放課後駅前の新しいパフェ行かない?」
クリクリのパッチリお目目をキラキラさせて誘うのは、親友の『三橋 雪菜』去年、同じクラスになって、いつの間にか意気投合して、今に至る。
名前の通り雪みたいな肌の白さに、焼けやすい私は羨ましくて仕方ない。小柄な彼女はついつい守ってやりたくなる。この学校で一、二を争うほどの可憐な美少女だ。
「ごめん、ゆき、今日は…」
私の名前は、『守衛 遥』少し茶色の髪の毛は肩よりも短く、女子の平均よりも高めな身長のせいか、名字のせいか分からないが、クラスの子からは雪菜の親友兼護衛みたいな扱いをされる。
名前順の席のため、前にいる雪菜からプリントを受けとり、断りを入れた私の顔を見るなり、にやりと笑った彼女に「な、なによ」と照れを誤魔化すように仏頂面になる。
「そっか、今日は金曜日だもんね、ラブラブで羨ましー」
美少女顔が台無しだから、その顔をやめなよって言いたいが、更に辱しめを受けそうでやめた。「それじゃ、また来週ね!ばいばい」
ばいばい、と手を振り替えしながら自分も教室をでていく。
向かう先は図書室、待ち合わせの人物はまだ遅くなるだろうと思いながらもついつい足早になる。
すーっと音を響かせないように扉を開けた瞬間、窓際で本を片手に読んでる彼が目に入る。
やばっ!もう待ってるじゃん。いつも待たされる側なのに。慌てて近寄るが、読書に集中しているせいか、此方に気付く気配も無い。
夕日に照らされて、黒髪が艶やかに光り、その端整な横顔にドキドキと胸が高鳴る。キリッとした眉に、真っ直ぐ通った鼻筋は高く、男性なのに美しいとさえ思う。その薄い唇についつい目が離せなくなった遥に、やっと気付いたのか、冷たくも見える切れ長の瞳をチラリと向けられ、心臓が飛び出しそうになった。
「龍騎、待たせてごめん、今日は早く終わったんだね」
「ああ」
ひと言発した声も少し低めで、思わず拳をグッと握り締めたくなる衝動にかられるが我慢した。
彼は、『一条 龍騎』家が向かいにあり、いわゆる幼なじみとういやつだ。同い年で、今年高校2年生。
毎週金曜日、一緒に帰るのには訳がある。
一つは、私の彼氏だから。こんな平々凡々な自分と付き合う彼の気持ちは未だによく分からない。駄目元で告白した私に「ああ」のひと言で付き合うことになったが、私のこと好きなのか?本当に付き合ってるのか?と思うほど、昔から意思表示の乏しいやつなのだ。
もう一つは、龍騎は頭が良い。私のクラスは普通科なのだが、彼のクラスは特別進学科。通称、特進。ここは一学年に一クラスのみというエリート集団みたいなものだ。その為、金曜日を除いて放課後、特別授業みたいなのをやっているらしく終わるのが遅い。一緒に帰られないのだ。
「今からカフェ行かない?新しくできたって」
「行かねー、面倒くさい」
ですよねー。人混み嫌いな彼の答えは聞く前から、分かりきったことだが、何となくガッカリする。
「じゃあ、明日休みだし、どっか行こうよ!」
「勉強あるから」
咄嗟に、「それなら、龍騎の家で勉強会しようよ!教えて欲しい」
「お前、バカだから教えるの嫌」
くそぉー、こいつは本当に私のこと好きなのか!?淡々と答える彼の首をキュッと絞めてやろうか‼そんな心の声が聴こえたのか、「ぁあ?」と、ギロリと睨み付けられる。
ひぇっ。頭一つ分は高い龍騎から凄みのきいた目線に冷や汗ものだ。ぇえい!仕方ない、奥の手を使うか…。
「ゆき達も呼んで、たまには皆で勉強しようよ」
龍騎は、少し考える素振りを見せたあと、「分かった」と頷いた。
何故か私と二人で居るのがイヤみたいだ、どうしても遊びたい時や会いたい時は親友の名前を出せば、殆ど断られない。なんだか少しモヤモヤしたが、それを口に出す勇気は皆無だ。
もうすぐ家に着く、一年前から手を繋ぎたくても自分から言い出せず、握ろうとして止めるを繰り返すこと何十回。手をグーパーしながら、今日こそはっ!と意気込むが、「鼻息うぜぇ」と言われてしまった。
相当、興奮していたみたいだ、鼻息が煩かったらしい。めっちゃ恥ずかしいんですけど!顔を赤くしながら「酷いっ!」と龍騎に訴える。
ふんっと鼻で笑われ、更に腹が立った遥は、龍騎なんか知らない!と家へと帰ろうと背を向けた。
「遥」
普段、おい、とかお前しか言わない龍騎が名前を呼んだことにビックリして、振り替えった瞬間、
ちゅっ…
遥の唇に柔らかいものがあたった。目をこれでもかと見開く遥の手を握り、ふっと意地悪そうな顔で「目くらい、つぶれよ。ばか」と良いながら、自分の家に帰った龍騎の玄関の扉を閉める音に、はっと我に帰った。
顔が茹でダコになってるであろう自分にきゃーっと心の中で叫びながら猛ダッシュで家に戻る。
その日の夜ドキドキし過ぎて、ご飯も喉に通らず眠れなかった。
読んで頂きありがとうございます。次回は未定ですが、なるべく早く更新したいと思います。