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仲間が出来ました?

とりあえず、こんな世界に来て動揺してたけど、きちんと現状確認して、情報整理しないと!まず、目立った外傷がないか、普段からよく着ている白色のジャケットと水色のパーカーを捲って体を確認してみる。特に外傷はないけれど、ぼくのお気に入りのジャケットとパーカーが汚れてた。


「もうっ、召喚するならするで、ちゃんとした場所にしてほしいなぁ…」


汚れたパーカーを見つめ、誰に言うのでもなく、一人でぶつぶつと文句を言うぼく。ぼくがずっと気になってることは、ここがどこなのか、と言うことと、なんでこの世界の勇者?らしいぼくをいきなりこんな森に置き去りにしたのか、と言うことだ。ぼくだって、ちゃんとした場所でちゃんとした人達がいたなら、きっともっと容易(ようい)にこの世界を受け入れてたと思う。だって、異世界で勇者になるとか子どもの夢じゃん!かっこいいし、誰もが一度は経験したい……よね?



「__ーい !」



遠くから女の人の声が聞こえてくる。何故だか急に胸がきゅうっとして、目尻から涙が零れそうになる。…おかしいな?ぼく、別に悲しくなんてないのに。最初は小さな影でしかなかったおねーさんは、ぼくに向かって手を振りながら走ってきた。おねーさんの容姿を一言で表すなら『女神』のような人だった。神々しいほど白く輝いて見える長い髪、まるで全てを見透かされているように感じるほど澄んだ若葉色の瞳。白く透き通った美しい肌。ぼくは、こんなに綺麗な人アニメや漫画の世界にしかいないと思っていた。ぼくよりも、5~6歳ほどしか離れていないように見えるおねーさんは、ぼくを見つけるとより一層、足を早めてこちらへ向かってくる。



「勇者様ー!」



…勇者様って言われたのは聞かなかったことにしよう。…ぼくまだ勇者だってこと認めてないし、帰れるならば今すぐにでも帰りたい。お父さんとお母さん、そして弟も心配するだろうし。なんて、ぼんやりと考えていると先程のおねーさんが膝に手をつき、肩で息をしながらぼくの目の前にいた。


「えーと、おねーさん?何でそんなに急いで来たの?」


「そんなの、勇者様がここに居るって分かったからですよ!」


「そっか!そうなんだ!ぼくの名前はアマギ・ミツルだから気軽にミツルって呼んでくれたら嬉しいな!(勇者様って言われるのって結構恥ずかしいもん…)」


分かりましたと言わんばかりに首を縦に振るおねーさん。…そんなに首振って痛くないのかなぁと眺めるぼく。見つめられて何故か少し頬を赤に染めるおねーさん。


「……そうだ!おねーさんの名前教えて欲しいな!」


「あ、私は《勇者召喚機構》のフレア=ミレアムと申します。」


聞き慣れない言葉に思わず顔を(しか)め、首を傾げるぼく。それを見て、何かに納得したようにフレアおねーさんは胸を張り(張るほどの胸がなかった!)、自信満々に言ってくる。


「ふふん、私は勇者様…つまり、貴方を召喚するために存在する組織に入ってるんですよ!」


何を言っているか理解はあまり出来てないけど、フレアおねーさんの組織が僕を呼んだらしい。


「じゃあなんで、こんな森に召喚されないといけないのさ!」


「あ、それは私のミスです。」


…さらっと自分のミスをさも当然のように言ってきたんだけど?!あれ、ぼくの耳がおかしいのかな…?


『…………』


空白の時間が流れていく。その空気に耐え切れなくなったのかフレアおねーさんは手を握りしめ、その手を上に掲げた。


「よーし、じゃあミツル早く行くよ!」


「あ、はい…。」


今まで敬語だったフレアおねーさんが急にまるで友達に話すようにぼくに話しかけてくる。…まぁ正直敬語は堅苦しいから嫌だったんだけど…なんだろう、このもやもやは…。


「ほーら、早く行きますよ!ミツル!」


先程の友達口調をやめるフレアおねーさん。きっと、自分でも違和感があったのだろう。手を引っ張ってくるフレアおねーさんに、ぼくは「はいはい…」と少し疲れたように返事をし、フレアおねーさんと手を繋いで歩く。なんだか恥ずかしくて、ついフレアおねーさんに、


「ねぇ、いつまで手繋いでるの?」


別に手を繋ぐのは、嫌じゃないのだけれど、ぼくはもう小学5年で大人だから、もう手を繋ぐなんて子どもみたいなことしないんだよ!…世間一般的にはまだ子どもなんだろうけど。


「ごめんなさい、勇者であるミツルに出会えて嬉しかったので…。」


フレアおねーさんが、僕の手を離すと、居場所を失ったようにぼくの手が空中を彷徨(さまよ)う。ほんとは手を繋いでフレアおねーさんの暖かさを感じていたい。だって、フレアおねーさんの手はぼくの母さんの手みたいに柔らかくて、そっくりだったから。余計な考えを消すように、ぶんぶんと(かぶり)を横に振る。今はこの世界に集中しなきゃ…。だってぼくはこの世界の勇者らしいのだから。しばらく沈黙の時間が続く。ただフレアおねーさんが先に歩いて、あとからぼくが追いかける。そして、その沈黙に耐えきれなくなったぼくはフレアおねーさんに、なるべく元気に尋ねる。


「ねぇ、今ってどこに向かってるの?」


「説明してませんでしたね。今向かっているのは、『フルーフ村』ですよ。ここから東に進めば、フルーフ村への道へ出るはずです!…多分。」


「あれ、今多分って言わなかった?!言ったよね?!」


「…………」


無視された。ぼくが悪いのかな…。もう、無視だって立派ないじめになるんだぞ!少しだけ不機嫌になるぼくに気付かず、フレアおねーさんは、呑気に歩いている。まだ、フレアおねーさんのことは良くわからないけれど、これだけは言える。フレアおねーさんはきっと、ぼくが思っている以上に"駄目な人"だ。

見てくださった方、ありがとうございます!

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