プロローグ
「いってきまーす!」
雲一つない晴天の中、小学生であるぼくの声が響く。小学1年生から小学4年生まで、全ての通信簿に『声が大きい事がよくあります。良いことですが、時には周りを見ることも大切です。』と書かれていただけあって、ぼくにとって声の大きさは少し自慢である。だって先生が声の大きさを褒めてくれてるし!…でも、周りを見ろってどういう事だろう?
そんなぼくだけど、友だちから「背が低いのに良くそんなに大きい声出るな…」と呆れるように言われたことがある。確かに、クラスの中で身長が一番低いから、背の順で並ぶ時、両手を腰に当てないといけないけど、何かリーダーみたいでかっこいいじゃん。思わず歩きながら頬を膨らませるぼく。周りから見れば変な人だ…。
色々と思いを巡らせながら歩いていると、突然ぼくの周りが眩い光に包まれる。目を瞑るぼく。視覚を捨ててなお、ぼくを襲う光。
「なに…これ?!」
現実ではありえない現象がぼくを苦しめる。眩しいし、目が痛い。目を瞑ったままどれくらいの時間が経っただろう。例え、10秒程度だとしても、ぼくにとってはその10秒が何時間も経っているような錯覚を起こす。しばらくして、光が収まり始める。先程までの光は何だったのか、想像すら出来ないが元々頭があまり良くないぼくが考えても無駄だろうと思い、意を決して目を開ける。
すると目の前には__。
見たことのない森。360度どこを見渡しても、森でしかない。しかし、ここはぼくの知らない世界だと決定付けるには充分すぎるものがある。それは、日本にはいや、世界中どこを探しても存在すらしないであろう、ぼくよりもずっと大きく、巨大な草花。先程まで歩いていた見慣れた場所の面影すらない。木々の隙間から見える太陽の光は、とても幻想的で普段の僕ならば思わず感嘆の声を上げるだろう。
でも、今は状況が状況な訳で__。
「ここは、一体、どこだよぉおおお…!?」
まるでその問いを待っていたかのように頭の中に声が響く。
『貴方は勇者としてこの世界へ召喚されました。今から貴方には、この世界に潜む闇を払い、この世界を救ってもらいます。』
淡々と、まるで機械のように事実を告げてくる誰かにぼくは固まる。
勇者、召喚…闇を払って世界を救う…?何それ、ぼくにそんなこと出来るの…?纏まらない考えにうーん、と唸るぼく。
「…………」
うん、分かんない!もう知らない。こういうのは現実逃避?ってやつだって言われるかもしれないけど、そもそもここが現実じゃないかもしれないし!…おもむろに自分の頬をつねるぼく。
…痛い。
と言うことはことは夢じゃない__。
えーと…つまり、小学5年生であるぼく__天木光は"勇者"として異世界へ召喚されたらしいです。
見てくださった方はありがとうございます。小説を書き慣れていないので拙い文章ですが、暖かく見守ってくれると嬉しいです。