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「確かに、また応援できるようになったのはつい最近だ。長いブランクがあった。だがな、俺には年季ってもんがあるんだ。終わりの見えない冬をひたすら耐えて生き抜いた苦難の時代がな。お前らにわかに、それに見合う何かがあるっていうのか?」
「そんなもんあるわけねえだろ。にわかなんだからよ。でもよ、それってそんなに偉いのか? 年季があれば威張れるって、なんかおかしくないか? 逆だろ。年季がある奴こそにわかを大事にしろよ。このプロポンピーブームを大事に育てていけよ。アンタみたいな小姑ファンがいるから、一見さんがどんどん離れて、すぐにブームがしぼむんだろうがよ」
「分かってねえなあ。まるで分かってねえ。だから俺は大事に育ててやってるんじゃねえか。お前らにわか様に試練を与えてやってるんじゃねえか。俺はな、長い冬の時代を生き抜いたんだ。その中でずっとポンピー一筋だったんだ。他のスポーツに浮気なんかしねえ。一生ポンピーファンを貫くと心に決めた。それに比べてお前らにわかはどうだ。ちょっとブームになったくらいでほいほい乗っかって、少しかじったにわか知識で女引っ掛けて。それでブームが過ぎればすぐ卒業とか言って、グッズ隠してファンだった事実さえも抹消するんだろうが!」
「決め付けるんじゃねえよ! 俺が言ってんのはアンタみたいなタチの悪いファンの存在が、後に続くファンを締め出してるって言ってんだ!」
「ああ! 嫌になったのならどんどん出て行け! この程度で嫌気が差してやめたくなったらファンなんかさっさとやめちまえ! その方がにわかのためだ! 俺は先に言っとくぞ。こんな一過性のブームはすぐに終わる。また冬の時代が来る。その冬を乗り越えられるのは本物のファンだけだ! にわかの中のひと握りだ! 俺が認めるのはその冬のさ中にも、まだポンピーファンとして頑張ってる奴だけだ。それが分かるのは、こんなブームが終わった後なんだよ!」
「そんなもんその時にならなきゃ分かんねえだろ! 最初からそうやってにわかを切り捨てて、ずっとついて行くかもしれない奴までやめさせるのが本当にいいことなのかよ! そうじゃねえだろ! すぐにファンをやめちまいそうなにわかファンを繋ぎ止めとく方がずっと困難で、価値あることじゃねえのか!」
もはやこの頃になると二人の周りには微妙な空気が漂っていた。周囲の人間は距離をおき、純太も沙耶子も、吉の字さんまで他人のフリをして飲んでいた。辰三さんはオサムの言い分に苦笑した。