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「ちょ、ちょっと先輩、痛いっス。ギブギブ。でも、大丈夫っスかねえ? オフ会っつったら、かなりコアなファンとかもくるんじゃないんスかあ? 俺、ちょっとだけ怖いっス」
純太がそう言うのも無理はなかった。二人はポンピー競技がプロ化して、そのブームに乗っかってファンになった、いわゆるにわかファンなのである。その知識はほぼテレビやネットで仕入れただけの、底の浅いものであることは本人達も重々承知していた。
「そう怖がる必要ねえよ。確かに俺等はにわかだが、この日本中、全部のプロポンピーファンは大体そんなもんだろ。それに、コアやにわかで格差がある必要もねえ。ファンは平等だ。同じ応援をしていてコアが偉くてにわかが駄目だなんて、そんな話があってたまるか」
「そうっスよねえ。さすが先輩、言うことが違うっス。オフ会なんて初めてだから、めちゃくちゃ緊張するっスよー。可愛い女の子とかとお知り合いになれたらいいっスねえ」
やたら男臭い競技であるプロポンピーは女性ファンが極めて少ないが、少数ながら存在するのも事実である。仕事柄、女性と知り合うきっかけの少ない二人にはまたとないチャンスでもあった。
「ったく。一体なにを目的に参加するんだか。まあ、気持ちは分からなくもないけどな」
などと窘めつつも、気持ちの上ではオサムも純太と同じだった。
二人はしばらく歩いてオフ会の会場に指定された居酒屋の暖簾を潜った。そこにはプロポンピーのユニフォーム、キャップを着用したり、顔にPのペイントをしたりして、ひと目でプロポンピーファンと分かる大勢の人がひしめき、狭い店内に熱気が満ちていた。
とりあえず空いていた席に着く。もちろん、さりげなく数少ない女性ファンの近くに陣取った。
「えー、それでは、皆様も集まったことですし、記念すべきプロポンピー初の最終戦のオフ会を開催したいと思います」
発起人らしい男がグラスを手に開催の宣言をすると、店内に拍手と歓声が起こる。
「いつもは応援するチームと共に、敵味方に分かれていることと思いますが、今夜はその垣根を取り払い、楽しく親睦を深めましょう!」
乾杯の音頭が取られると更に大きな歓声が上がり、フリータイムとなった。