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プロポンピーの記念すべき第一回優勝決定戦は大きな感動を呼び、拍手と歓声の中、半年に及ぶリーグ戦の幕を閉じた。
栄えある初優勝を果たしたチーム、スカンクスのファンは抱き合って喜び、惜しくも敗れたチーム、プードルズのファンは悲しみ、涙する者さえいた。
ペナント中、両者の応援はヒートアップし、いがみ合う場面もあったが、優勝が決まるとすべてのファンが選手達の健闘を称え合った。
試合会場で戦いを終えた選手たちが抱き合い、監督の胴上げ、優勝トロフィーの授与、応援してくれたファンへのお礼等々のセレモニーが終了すると、ファンは夢心地で会場を後にする。もちろん、興奮冷めやらぬ一部のファンは感動の余韻に浸るため、プロポンピーファンが集うオフ会へと繰り出すのだった。
「いやー、最っ高の試合だったっスよね。俺ら、間違いなく歴史の証人になっちまったっスね、先輩」
そう話しかけてきたのは職場の後輩であり、プロポンピーファン仲間でもある純太だ。
「だなー。有給とって見にきたかいがあったぜ。まさか最終戦のチケットが買えるとも思ってなかったしなあ」
しがないパート従業員のオサムと純太が有給を取るのは正直、上司にいい顔はされなかったが、日本中でムーブメントを巻き起こしているプロポンピーの優勝決定戦を観戦できるとなれば、二人にキャンセルという選択肢はなかった。
「ところで先輩、ここまで来てまっすぐ帰るなんてのはナシですよね? 当然、どっかで打ち上げの予定を入れてるんスよね?」
「タリの前田よ。ふっふっふ。実はな、この後プロポンピーファンが集うオフ会への参加を申し込んでたんだが、OKが出たぜ」
オサムが自慢げにオフ会の場所を示すスマホを純太に向けた。
「うわー。マジっスかあ? さすが先輩っス。抜け目がないっス。仕事以外なら頼りがいありまくりっス」
「ひと言多いんだよ、おめーはよ。事実だから反論の余地はないけどよ」
オサムが純太をヘッドロックしておでこを小突く。だが純太も抵抗はするが嫌がるそぶりはない。二人は職場の同僚であると共に、気の置けない友人同士でもあるのだ。