初めての森1
城を出る。
目の前にはどこまでも続く青い空が白い雲を浮かべているのかと思ったが、空には色がなかった。
強いていうなら灰色の空に、銅色の異様な輝きを放つ太陽と思われるものが俺を焼き尽くすかの如く浮かんでいる。
焼き尽くすとは言ったものの、気温はそこまで高くなく、過ごしやすいといったところであるが、そもそもこの身体自体が自分の体でないため、実際の気温は把握できない。
もしかしたら、45度を超えるような灼熱地獄かもしれないし、-30度を下回るような極寒の地かもしれない。
少なくとも、王の息子の身体はこの気温に慣れているようだ。
眼前には吊り橋があり、この城と陸地を繋いでいる。
この城周辺の土地はここだけ盛り上がったのか、他のところだけ削られたのかわからないが、飛び出るような形になっている。
にしても。
…どこが北か全然わからない。
北に進めと言われたが方位磁針もなければ、目印もないし、地図もない。
とりあえず周りを見てそれっぽいところを探すしかない。
城の周りを一周することにした。
基本約半径10キロ圏内は森で囲まれているようだが、ところどころ川が見える。
また、その川の近くに煙が上がっているところもあるから、おそらくそこが村なのだろう。
イメージとしては吊り橋を12時とすると3時の方向である。
頭の中で場所をインプットしたので、吊り橋を渡って、村だと思われるところに歩いて行くことにした。
俺は吊り橋を渡りながら、色々心配になってきた
。
まず1つ目は、無事に村までたどり着けるかどうか。
途中現れると言っていた敵がどういう敵かが全く予想できない。獣なのかゾンビなのか小動物なのか大きい虫なのか…
どうやって戦い、どうやって倒すか、全然検討もつかない。
身体がいつもより遥かに軽いことを考えると身体能力は上がっているとしても、どこまでの動きが可能でどこからが不可能なのか。
また、相手がいわゆる魔法のようなものを使ってきた時に対処しきれるか否かもわからない。
いっそダッシュで村に駆け込んでしまおうかとも思うが、相手のスピードも自分のスタミナも不明瞭なので、とりあえず、無理せず頑張ることだけ決めた。
もう1つは、さらにどうにもならない話であるが、言語である。
村にいるのが同じ人間だからと言って同じ言語を使うとは限らないし、ましてや日本語を使う人種は日本人だけである。
俺は英語をカタコトでしか話せないし、向こうが英語を話せるかどうかもわからない。長くこっちの住人であれば、言葉もこっちの言葉であるはず。
ただ、王と会話をすることはできていた。
王がこちらの言語に合わせていない限り、通じる可能性はあると考えていい。
自分が話している言葉はもはや日本語ではないのかもしれないし、ここの言葉が日本語なのかもしれない。
通じなかったら通じなかった時に考えるとしよう。
そんなことを考えている間に吊り橋を渡りきった。随分と高いところから来たものだ。こういう時高所恐怖症出なくてよかったと思う。
迷うと面倒なので、頭上に吊り橋を見ながら城の根元まで行き45度回って吊り橋が視界ギリギリになったあたりで今度は城を背に森の中へと歩いて行く。