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朽ちた白バラ  作者: uknight
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王との対話2

目が醒めると高い天井が広がっていた。

今まで見た景色の中で一番近い光景としては体育館で寝転んだ時のものであるが、実際の景色はもっと華やかで、でも手入れは行き届いておらず、蜘蛛の巣や糸が天井から垂れている。


…夢じゃないのか。

もう現実を受けざるを得ない。


起き上がるとやはり目の前に男が座っている。


「起きたか。死んだ気分はどうだった?」


…やはり俺は一度死んだのか。

普通なら理解し得ない言葉のはずなのになぜか落ち着いている。

というよりホッとしている。

死ななくていいということに対しての安心感。

心のどこかで死んだ方がいいとは思いつつも、死への恐怖があった。


…本当に死への恐怖は消えたのだろうか?

俺が感じたあの痛みをもう一度受け付けられるのだろうか…?

胸の焼けるような痛み。意識がなくなったからいいものの、なくならなければどれだけ苦しいことか。

死がなくなるということは、それだけ死を経験することになるということになる。

とんだ矛盾に富んでいる理論だが、そういうことなんだろう…


しかし、今問題なのは多分そこではない。



「俺は何をすればいい?」


そう、俺はただいたずらに生かされたわけではないはずである。不死身になったからには理由がある。


「よく聞いてくれたね。君にはして欲しいことがある。」


「この世界の王になってほしい。」


またもや理解し得ない言葉がこの男から飛び出してきた。今度は本当に厳しい。


この世界の王になってほしいっていうくらいなら自分がなればいい。そもそも、凡人の俺に、王家の血とか王族の末裔とかでもない俺にそんなことできるはずがない。


「俺を倒して、王になってくれ」


…ああ、お前さんはこの世界の王様だったのか。んで、倒してほしいと。倒したら王になる制度かなんかなのか?なら、今すぐにでも殺してやるよ。


「なら、おとなしく死んでくれ。」


世界の王がさっき俺の胸を空けた剣を手に取り、世界の王に向ける。

刺そうとした瞬間、何が起きるわけでもなく、刺さった。

…正確には当たった。

俺が非力なせいなのか、こいつの身体が異様なほどに頑丈なのか、剣は王の身体に入っていくことはなかった。


「そう簡単には殺せないぞ。俺だって痛いのは嫌だからな。」


くそ、やはり無理か。俺はそのまま下に剣を落とす。


「危機を察すると無意識に防御してしまうのだ。」


なるほど、さっきの硬さはこいつ本来の硬さではなく、何かしらの力なのか。


「今のは何もしてないがな。」


俺が非力なだけだったか。

…果たして俺はこいつを倒せるのだろうか。なんせ俺はただの人間だ。しかも、この世界には俺の知らない魔法やらなんやらがある。かなりのハンデがあるというものだ。強くなる方法があるか、それなりに強い武器があるか、それともよほどの覚悟がないと難しい。覚悟なんてものはないのだから、残りの2つがないと一生かかってもこいつを殺すなんて出来やしない。


「俺はどうやったら強くなれる?」


「うーむ、たくさんの敵を倒すことかな?なんせ、俺は初めから強かったからな。」


…ムカつくが聞く相手を間違えたと今更気付く。最後に倒す相手という時点で聞く相手ではない気もするが、それ以上にこの世界の王だ。初めからある程度強かったに決まっている。

正面からの攻撃で、且つ向こうはノーガードだったにも関わらず傷1つないんだ。今のままでは指一本で殺される、どころか、途中で他の奴に殺される。

…まぁ死なないのだが。


「お前にはこの剣をやろう。きっと使いこなせるはずだ。」


そう言って俺が落とした剣を拾って俺に渡してきた。


「この剣はお前さんの世界では起きない現象、いわゆる魔法や異能力といった類を吸収し、放出できるものだ。」


なるほど、それは便利だ。


王から剣を受け取る。

こいつはこれを使いこなせると言っていたが剣の振り方だってわからない。見様見真似で練習するしかないか。

剣の使い方もイマイチわからない。

だが、戦いの教科書は山ほど読んできた。負ける気がしない。…マンガだが。


…しかし、世界の王にこの剣の持つ能力を知られているというのに、果たして俺はこいつに勝てるのだろうか。


剣を見る。十字架を思わせるようなロングソードは今までいろんな術やらなんやらを吸収してきたような、全ての色を加えたような黒鉄色をしている。刃は不思議な形状をしており、右側は普通のV字なのだが左側はW字になってる。

おそらくW字の方で吸収、V字で放出することになるんだろう。

刀身は細身であるが長さはあり、1mと言ったところである。重さは割とあるはずなのだが、片手で簡単に持てている。


…ここで違和感に気づく。

目線が少し高い。身体も心なしか軽い。肌もいつもより黒いように思える。何故…


自分の身体じゃない…?


「おい、この身体は誰の身体だ…?」


王は、少し顔を曇らせて答える。


「息子の身体だ。新しい魂を入れなければ保てなかったのだ。」

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