王との対話
目が醒めると高い天井が広がっていた。
今まで見た景色の中で一番近い光景としては体育館で寝転んだ時のものであるが、実際の景色はもっと華やかで、でも手入れは行き届いておらず、蜘蛛の巣や糸が天井から垂れている。
あれ、さっきまで山の中にいたのに。
俺はそう思って起き上がると、声が聞こえてきた。
「どうやら成功したようだな」
声のする方を見ると玉座で、1人の男が悠然と座っている。
…どうやらこいつが俺をここに連れて来たようだ。
てか、なんでここにいる?
俺は確か父親の葬式を終えて、家に帰る途中、少し街を探索してる時に祠を見つけて…
胸のあたりが熱くなって…
「頑張らなくても生き続ければいいようにしてやるとはどういうことだ?」
「目が覚めて開口1番の発言がそれか!」
王は何かご機嫌なのか口を大きく開いてわははははと笑う。
「それはお前さんを死なない体にしてやるということだ。」
俺は、、、夢を見ている。
そう思って、話を聞くことにした。
それにしても体が軽い。
そう思ってみると、やはり自分の体ではなかった。
夢の中では仕方ない。
ともするといつから夢を見ているのだろうか…
夢なら急に場面が変わって、今まで全然関わりのなかったかつての友人が出て来たり、正体不明の何物かが追いかけて来たりすることがあるから特段この夢がおかしいとも限らない。
電車の中で寝たのだとしたらなかなかまずい…
起きなければ…
起きなければ…
起きれない。
朝見る遅刻する夢を見て危機感を抱いた時とか、恐ろしい敵に殺されそうになったりとかで目が醒めるはずなのに、起きようとしても起きれない。
そうだ。こいつに殺されてみよう。
相手の男はさっきから俺がずいぶん黙ってしまったようだからか、首をかしげてこちらを見ている。
俺はこの男に試しに聞いてみた。
「俺を殺してくれ。」
「だから無理だと言っただろう?」
…あ、そういえばそうだった。
こいつに俺を殺せるはずがない。
すっかり忘れていた。
なら、ちょうどいい、こいつに俺を殺さないことを証明してもらおう。それできっと目が醒めるはず。
一思いに剣とか銃とかで殺してもらおう。
「俺の心臓に剣を刺してくれないか?」
俺は男の懐にある剣を指差して言った。
男は一瞬、何を言われたかわからない表情をしたがすぐに笑い出した。
「心臓を一刺しか…だいぶ痛いと思うが覚悟は出来てるのか?」
…想像するとゾッとするがこれは夢だ。痛いも何も起きれば関係ないのである。
そう思えばさっさと刺して欲しいと思えるもので、俺は男の元へ歩み寄る。
「構わない。さぁ早く刺してくれ。」
「そこまでいうなら仕方ない。悪く思うなよ?」
これで起きれる。悪くなんて思うもんか。
そう思った瞬間、剣が身体に刺さる、というより一瞬激痛が走ったと思ったかと思えば、燃えるように胸が熱くなる。
声も出ない。胸を押さえても焼けるような痛みは治らない。呼吸も荒くなり、他のところに力が入らない。
どうなってる⁉︎夢ではないのか⁉︎そんな思考も一瞬で通り過ぎ、ただただ痛みだけが残る。
悪夢は醒めることなく、俺は痛みのショックでその場に倒れた。