表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

プロローグ~終わりから始まり~

 初投稿でございます。温かい目で見ていただけたら幸いです。



 俺は、現実を知る。


 昔見たヒーローものの特撮やアニメを思い出す。


 ヒーローが悪者に立ち向かっていき倒したり、子供を助けたりするという内容のものだとは皆ご存知であろう。


 そんなヒーローに憧れていた時期もあった。


 だがしかし、そんな超人的な力を持つ存在などいないことは齢九で理解した。多分この状況はそんな理由で起きているわけではないはずだ。


 これは俺の推測だが、異世界転移ものを読みふけっていたせいか、剣と魔法の世界で活躍する主人公に共感を感じ、意味も分からない正義感を抱いていたのかもしれない。


 俺は今、遠目から見ても分かるようなリアリアなカップルを走りくるトラックから守るように放り出すことに成功するも、自分は逃げきることに失敗する、というなんとも奇妙な事態に陥っていた。


 っつ……痛ってぇ……


 ブレーキを掛けることもなく突進してくるトラックは止まることを知らず、俺の体に容赦なく衝撃を与える。


 齢二十六。俺の人生は終焉の時を迎えた。







「ん?」


 俺は今、よく分からない状況に陥ってることを明記しておく。


 辺り一面真っ白な空間に、俺と美少女が二人きりでいる状況。それを女の子(三次元)と関わったことが中学生のころから、皆無な俺に説明せよというのは酷なことであろう。


 そんなことより、なんだこの子!めっちゃかわええぞ。

 紫色の透き通るような髪に、何でも見通しそうな碧眼。しかもスタイルがいい。実際は普通という感じなのだが、黄金比率と言うやつか。素晴らしいの一言に尽きる。


「あのぉ……そんなにじろじろ見られると恥ずかしいのですが……」

「あ、はい。すいません」

「いえいえ。そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。あ、自己紹介が遅れていましたね。私は女神の一人、アイリスと申します」


 やっぱり女神って言ったら、こんなに綺麗なのか。絶対に現実ではいなさそうだもんな。ん?てか女神って何?何でそこらへんにいるような平社員の俺が何で女神様と会ってんの?


「ご丁寧にありがとうございます。唐突で申し訳ないのですが、僕はなぜこんな幸せな状況にいるのですかね?」

「幸せというのはよくわかりませんが……あなたがここにいるのはトラックに轢かれて死んだからですかね」


 やっぱり俺は死んだのか。なんかクソみたいな人生だったな。うん。あー、一応聞きたいこと聞いとくか。


「あのリア充二人組は助かりました?」

「それは勿論。あなたのおかげですね」


 それは良かった。彼らが死んでたら、俺は死に損というやつだったからな。


「で、俺は魂が浄化されて来世が何とかってやつですかね?」

「あ、そのことで話があるのですよ」


 なるほどな。来世の俺よ。次は俺みたいなスペック平凡な平社員じゃなくて、リア充して大出世できるようにるんだぞ。


「あのぉ……何か勘違いされてるようなのですが……」

「ん?勘違い?っていうか、俺の考えてることが分かるのが怖いんですけど!」

「まぁそれは……私の管轄内ですので」

「……不純なことは考えないようにしますよ。それより俺の勘違いってのは?」

「はい。本題に入りますね。実は……あ、一つ質問をよろしいでしょうか?」

「いいですけど」


 質問ってのは何だろう。まぁ、美少女……女神さんと話せるから別にいいんだけど。


「あなたの人生はどうでしたか?」

「そうですね。一言で言ったらつまらない人生、でしたかね。」


 貧乏でも金持ちでもない普通の家に生まれて、誰でも聞いたことがあるくらいの大学を出て某有名商社に入社。そこからは余裕もなくがむしゃらに働いて。

 正直もっと自由、というか適当にやっても良かったかもしれないと思っている。まぁ今更言ってもしょうがないと思うが、結婚ぐらいしたかったな。


「そう……ですか。いきなりで申し訳ないのですが私ってどんな神だと思います?」

「優しくてかわいい神様ですかね」

「そう言われるのは嬉しいのですが、役職ですよ、役職」

「んー、死んだ俺と対面してるってことは死んだ人を転生させるとかそんな感じですかね」

「正解です!よく分かりましたね」


 拍手されながら褒めてくれたので俺の口角が自然と上がってしまう。たぶん鏡でも持ってきたら目の前には間抜けな顔をした自分が写るであろう。


「そこで私が話したいのが異世界転移の件ですね」


 ん?転移?異世界?そんなのラノベとかWEB小説のなかだけじゃないの?何かうまい話に釣られてね?俺。もしかして、俺の魂を悪魔に売り払うとか……


「うー!私を疑っているんですかー?」


 頬を膨らませながら、俺の身体をポンポン叩いてくる女神様が天使過ぎて困る。てか身体っていう表現はおかしいかな。でも事故ったときのままだからよくわからん。


「これは私の一存です。あなたのような人は見ていて助けたくなるんですよ。勿論、私が信じられないとか、もう一度人生を送るのが嫌とかだったら、記憶を消して来世って感じですけどね」

「それが可能と言うのならぜひともお願いしたいのですが」

「その前に了承して頂きたいことをいくつかいいですかね?」


 了承してほしいことってなんだろ。まぁ、どうとでもなるし騙されたら俺の目が悪かったってことだ。元々理不尽なことは慣れてるしな。


「そんな大げさに考えることではないですよ。まず一つ目は、転移だということですかね」

「ん?どういうことですか?」

「人生をやり直すと言ったら赤ちゃんからと解釈するかもしれないからですね。まぁ多少の年齢補正はできますが。」


 転生と転移の違いなんて異世界ものを読んでたから理解している。てか年齢補正ってまじかよ。さすが神様だと言うべきか。


「二つ目は、記憶と容姿の継承です。これは、そのままの意味ですね。あなたが現在所持している記憶は転移後も有効というものですね。容姿についても同様です」


 俺が危惧していたのは、この部分だ。たとえ転移したとしても記憶がないとかだったらいろいろとやばいからな。良かった良かった。

 容姿の継承は……まぁしょうがないだろう。できたらイケメンになりたかったけど、今の顔も一応並みだと自負しているからな。


「三つ目は、ボーナスですね。私の一存で当人も了承してると言えどいきなり未知の土地に放り出されるわけですからね。生きるために必要な、武器というやつですかね」


 んー。これは異世界もので言うところのチートか?でも、チートみたいな基地外な力と言うわけではないかもしれないしな。

 ……なんか不安になってきたけど、無いよりはいいだろう。ここは女神さまの気遣いに感謝しなければならない。


「と、こんなものですかね。これが了承できるのならば私の身勝手ですが、異世界転移をさせてもらいます」

「問題ないです。お願いします」

「はい、では年齢補正のお話ですが……」


 さすがに二十六歳のおっさんでってのは何か哀しいのでここは希望したいところである。


「はい。では何歳になることを希望ですかね?」

「そうですね。十五歳で」

「はい。分かりました。十五歳ですね」


 十五歳にしたのには特に理由はない。ただ、区切れとしていいかなとこんなところだ。強いて言うなら俺の非リアが急激に加速した時期だからここから復活したいというだけだ。

 ……案外重要かもしれない。


「次はボーナスですね。何か希望とかありますかね?」


 ここの選択ででだいぶ人生の方向が変わりそうである。でも希望とかはあんまりないんだよな。いろいろと異世界もの読みすぎてて迷う。


「俺が今から転移する世界ってのは魔法とか剣の世界なんですかね?」

「そうですね。というかあなたがいた世界くらいですよ。魔法がない世界なんて」

「なんか凄いこと聞いたかも知れませんね。ていうか俺はなんて小さい世界で生きていたのか……」

「で、決まりましたかね?希望」

「まぁ、転移してすぐに死なない程の力をください」

「分かりました。それにしても欲がないんですね」

「唯一の欲は次の人生を悔いなく過ごすことですかね」


 正直欲など語っていけば語り切れないのだが、大きくまとめるとこんなものだ。


「では、そろそろですかね」

「あ、いきなりですね」

「はい、私も仕事が有り余っているので」


 とても可愛らしい笑顔で言ったのはいいが、内容が少し悲しいのはしょうがないのか。

 そんな事を言っていたら俺の身体が光に包まれていく。


「アイリス様。何から何までありがとうございました。」

「いいの。何度も言うように私の希望だから」


 そう言うと俺の身体は神聖な空間が拒絶するかのように無数の粒子になり飛び散る。


「貴方の人生に、幸があらんことを」








2月5日 修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ