プロローグ
いつもの日常が退屈でもっとスリリングな日々を望んでいた主人公が夢を叶えた後の台詞は大体こうだ。
「俺はこんな世界に来たかったわけじゃない!」
こんな御都合主義の奴がクライマックスには
「この世界にこれて本当に良かったよ」
ふざけているのか世界を拒絶して新しい世界を見つけてなお満足せず最後には平和になった世界、つまり最初の世界と大差ない世界に満足している。
このことから分かるのは人間は欲が深い。
一つ手に入れるともうひとつ欲しくなってしまう。
(だから俺はなにも望まない)
ただ退屈な世界を平和と思い過ごしていく。夢は見ない、今ある現状が全てなのだ。そう考えにふけっていると家の前に立っていた。ポストをみると久しぶり手紙が届いていた。
《君は正義になりたい? それとも悪? もしも僕と同じ考えなら仲間になって協力してくれ》
何かの宗教の勧誘だろうか、そう思いながら俺は家のなかに入ろうとした。
「スルーはひどいな、なんとなくわかってたけどさ、でも少し驚いてほしかったな」
とても大きな声が俺の耳にキーンと響く
「誰だ、この手紙をここに入れた奴か?」
彼女の服装はとても奇妙だった、大きな帽子と真っ黒なローブ、まさに魔女を連想させるような格好だった。
彼女はなにも言わずただ俺を見つめるだけだった。
「お前はゲームのCPUか、とっとと答えろ」
そう言うと彼女は深いため息をして呆れたような顔で俺を見た。
「無言は肯定と理解してくれたまえよ、スプラッタ君だってこのくらいわかるぞ」
手に持ってるあの血だらけの人形、絶対あれだよな、スプラッター感めっちゃでてるもんな。
「その通りだ、君にしては理解が早いじゃないか」
「そうかそうか……って俺はなにも言ってないぞ!どういうことだ」
彼女は俺が言ったことを的確に当て、答えてきた。自分が声に出していたなんてことはないはずだ。
「いいね、その驚きよう! 昔の君は無表情でまさに機会って感じだったもん」
俺の過去を知っている人間、それだけで俺は興味がわいた。親が居て、姉がいたことくらいは覚えていたが他はさっぱりだった。12歳くらいの時に大きな事故に遭い親を失い、ついでに俺は右目を失った。姉は家に引きこもりがちでその時も家にいたため無傷で済んだらしい。
そのあとしばらく保険金で生活をしていた。金がなくなったら顔も見たことのない姉が口座に大金を振り込んでいてくれていた。
「俺の冒険の書は1度バグっちまったんでな、セーブデータはないんだよ。」
そういうと彼女は、少し驚いたような顔をして、少し考え込んでやっとまとまったのか満面の笑みで俺を見つめていた。
「君がゲームか、本当に面白くなったね。昔の君も好きだけど今の君はもっと好きだよ。よし、本題に行こうか」
「本題というのは中二全開のあのメッセージか」
「世界はね悪と正義が存在して成り立ってるんだよ。そんなとき快楽を求めた一人の人間がゲームを始めたんだ。それは異能の力を使ったものなんだ。まあこれは超能力と思ってくれていい。
4人の魔女をリーダーとする殺し合い、そしてこのゲームに勝利したチームはどんな願いでも叶えられる。つまりこれは死と快楽が隣り合わせになったゲーム、天秤ゲームさ!」
そんな話バカバカしいこれが世間一般の主人公の反応だろう。だが俺は今ものすごくドキドキしている。まさに俺が望んだ世界、退屈から救い出してくれるイベントと言ってもいいだろう。だが、どんなイベントにも終わりはある。また平凡に戻ってしまう。
つまり俺の選択は一つだ。
「人には二種類ある。勇気のある人間と、決められない人間だ、そして俺は後者だ。」
彼女が俺の心を読んだこと、過去について知っていること、突拍子もないゲームの話全てにおいて興味はあったが俺は今の生活が、なにも起きない生活が好きだ。
「興味はあるけど一歩踏み出す勇気が……はっ、笑わせるねその屁理屈のせいで君はあの時も! いや、なんでもない忘れてくれ」
また心を読まれた。そして俺はこいつと昔に会っていて何かしらひどいことをしたのか。わかったことは昔の俺も選択するのは苦手だったということだけだ。このことも気になるが、まずは心を読まれる理由を先に考えよう。流石に何かトリックがあるはずだ。説明に出てた異能の力とやらなかもしれないな。
「そーだよ、僕は四人の魔女が一人年業輪廻、異能の力は『以心伝心』相手の心を読む能力さ。」
『以心伝心』四字熟語にそんな言葉があった気がする。あまり勉強のできる方ではないがそのくらいならわかる。
「大当たり! 能力は主に四字熟語がベースとなってる、まあ例外もありえるけどね」
彼女は俺を睨みつけながら言った。もう日も落ちてきてあたりが漆黒につつまれる。
「さあ君の答えを聞かせてくれたまえ」
初めて作った作品なので誤字、脱字があるかもしれませんが、よろしくお願いします。