選択肢はない
「お前も知ってると思うが、彼女が麻生コーポレーション社長、麻生幸太さんの一人娘の麻生翔子さんだ」
「えっ…、だって彼女の住んでる家って普通の一軒家だし、金持ちだなんて思えないんだけど…」
そんな設定だったかな?
言われて見るとゲームの舞台だった学校が金持ちが集まる学校だと、妹が言っていたような。
「俺も社長に聞くまで全然知らなかったよ。言われて見れば、確かに翔子ちゃんはお嬢様っぽかったよな。」
叔父さんの言う通り確かに翔子ちゃんは教育が行き届いていたように思う。しかし、俺も見たことがある、人が良さそうなあの麻生の叔父さんが大会社の社長だなんて。
「でも何で普通の一軒家に住んでるんだ?」
俺が聞くと叔父さんは後頭部をぽりぽりかきながら、
「麻生社長が普通の家に住んで見たかったからだそうだ」
と、叔父さんは言った。
なんだそりゃ?金持ちなの考えることは良くわからん。
「とにかく、お前には一週間後にある 入学式に出てもらうことになったから。学園の理事長には既に話は通してあるらしいから。」
「依頼を拒否する訳には…「いかん!!」デスヨネ…」
「既に前金ももらっているしな。(こんな大きなな依頼は、手放す訳にはいかん。報酬もいいし。)
おい、聞こえてるぞ。
「報酬に目が眩んだな?」
俺が言うと、叔父さんは冷や汗をかきながら言った。
「そ、そんなことはナイゾ?」
明らかに動揺を隠せてないんだけど 。
「俺は、昔から知っている翔子ちゃんと社長を守るためにこの依頼を受けたんだ。お前だって、翔子ちゃんを守りたいだろ!?」
「…まぁね」
確かに翔子ちゃんとは年は離れてるけど、たまに遊んであげたり、面倒をみてあげたこともあったのだ。見捨てるなんて選択肢はない。
「とにかく、今日は帰って休め。明日からマナーやダンスの練習が始まるからな。」
「うげぇ。そんなのやったことねーよ。」
「心配するな。俺の知り合いに専門家がいる。明日から来てもらうことになっているから遅刻するなよ。ああ、後、お前には女装の技術も覚えてもらうからな。そちらのほうの専門家も手配しておく。」
なんて事を宣う叔父さんの言葉を聞いて、明日からの苦労と、今日の仕事の疲労で、鉛のように重たく感じる体を引き摺るように帰宅する俺だった。