頼まれます
「ただいまー」
「おう、お帰りー」
俺は先程の依頼人を無事に目的地まで送り届けたあと、自分の勤める会社、『GMM』まで戻って来た。
向かえてくれた声の主は、俺の叔父の橋本圭二だ。
37歳で、ここ『GMM』の代表取締役をやっている。
体を鍛えるために、父に頼んで弟子入りしたのが叔父さんだった。
噂じゃ数々の伝説を持っていて、この業界じゃあ知らない人はいない程の有名人らしい。
今考えると少し後悔している。あれは体を鍛えるとは言わない。結果的に強くなれたのは確かだが…。
内容については割愛させてもらいたい。思い出すと泣きたくなるので。いつか語るかもしれないが。
この会社に就職したのも叔父さんがいたから就職した。つーか、強制的にさせられたんだけどな…。
「依頼人から完了報告があったぞ。お疲れだったな。それと、今回お前を襲った二人組だが、ただのヤクザ崩れらしい。依頼人の秘書が黒幕だったらしく、頼まれて襲ったそうだ。ちなみにその秘書はすでに警察に連行されたそうだ 」
秘書が黒幕って、何やったんだあのおっさんは?
まぁ依頼人のプライベートには踏み込まないのが民間警備会社の掟だし、別に知りたくもないけど。
つーか叔父さん情報早いな、一体どんな情報網を持ってるんだか。
「帰っき来て早々悪いんだけどね、またひとつ依頼が来てるんだ」
「ーは?誰か他の人に頼んでくれよ。俺明日から休暇なんだけど…」
「そこをなんとか。他の従業員じゃ駄目なんだ。お前にしかできないんだ。頼む…」
休暇は捨てがたいが、叔父さんには大変世話になってるし、この人に頼まれたら断れない。
「…わかったよ。これが終わったら今度こそ休暇もらうからな」
俺がそう言うと、叔父さんは申し訳なさそうだった顔を一転して笑顔に変えた。
「いやー、お前ならそう言ってくれると思ってたよ。悪いねー」
ちくしょー、はめられた。
まぁ言っちまったんだからもう後には引けない。
「…で、今度の依頼はどうすればいいんだ?」
「……」
叔父さんは少し黙った後、
「…女装してほしい !!!」
と、何故か力強く言ってきた。