隊長総会
10/22 更新
「それでは隊長総会を始める。新任の隊長もいることじゃし順序よくな」
総会場に着くともう既にほかの隊長らは集結していた。総会場は任命式をやった魔王城の反対側。徒歩で行くとものっそい時間のかかるところなので、隊長は移動魔法かなんらかの方法で来るのが通常だ。
総会場の見かけはこれまた城。内装も人間界のものとほとんど変わりない。
「まず、新任の隊長らに自己紹介をしてもらおうかの。ではまず三隊隊長から」
「はっ。三隊隊長を務めることになりました、魔界部隊ハーモニー養成学院スコア、普通科出身のアリウス・ペイジと申します。武器は槍を使用。以後お見知りおきを」
「うむ。アリウスはスコアを三百年前に主席で卒業した学院生でな。たった百年で数字隊士に……つまりウェイブに。その後百年で副隊長に上り詰めた天才じゃ」
「へぇ~、僕と同じじゃないか~」
一隊隊長がそこまで言うと、高い声が横から入る。
「恐縮です、七隊隊長。ですがあなた程ではありません」
「僕のことはいいよ~。ふうん、キミ、相当強いみたいだね~」
だんだんと七隊隊長の顔がやらしい顔になっていく。
あの可愛さは異常だ。百五十センチちょっとしかない背丈にクリクリとした綺麗な目。魔界でもあの人に惚れる男が少なくないのが悲しい。
「いいな~、いいね~、戦りたいな~」
「七隊隊長、いい黙らんと……仕置くぞ」
一瞬、ゾッとするような殺気に襲われる。やべぇ。流石に第一隊の隊長やってるだけのことはあるな。
吐くかと思った。
でも七隊隊長は一隊隊長の言葉にさらにニヤける。
「え~、別に僕は構いませんよ~。戦いは気持ちイイし~」
「話にならんな。では次は五隊隊長、自己紹介をせい」
やっと緊張した雰囲気は溶けた。
んで俺の番に回ってくる。
ここは気分よく行こう。
「あー、えー、五隊隊長になりました、スコア特務科出身のフリードヒリ・クラム・ジズでーす。弓兵でーす。とりあえず頑張るんでよろしくお願いしまーす」
俺の自己紹介が済むと一同気の抜けた顔になった。
誰だ、ため息をついたのは。
「はぁ。リードはまぁ……アホなので言うことがない。言うとしたらアホと……ああ、もう言っておったか」
しばくぞ、じじい……とは言えないので黙っておく。
言えば最後、灰と化すだろう。命は大切にね!!
七隊隊長を見れば、ずっとリウに目線がいっている。羨ましいことこの上ない。あんなに可愛い顔がとろけたロウソクのような顔になっているのだから……クソ、爆発しちまえ。
「では、逐次報告を行う。二隊隊長から頼むぞい」
「……あ、ゴメン。聞いてなかった。何だって?」
どうやら二隊隊長は今まで凛としていた顔とは裏腹に、別のことを考えていたようだ。
てかヤバイ、そろそろ一隊隊長がキレそうだ。口から出る炎が赤から黒になってる。
「逐次報告です。二隊隊長」
ナイス、リウ!
「ナイスだ、リウ君!」
俺と三隊隊長の息が合ったところで二隊隊長は言う。
「あ、逐次報告? それなら何もなかったよ。強いて言うなら人間界の服業界が活気溢れてて楽しくて仕事サボって買い物に行きたいぐら――」
「そうか、おまえ後でしばく。では次、三隊隊長」
あ、二隊隊長が『シュン』ってなった。
負けるな、二隊隊長!
頑張れ、二隊隊長! 俺は応援しています。
「はっ。人間の地獄堕ちに関して報告します」
「話せ」
「ここ数日、地獄からの逃亡者の数が増加しております。私の管轄下である『憤怒の獄』はまだ少ない方ですが……内通者がいるものかと」
リウは静かに告げる。自分の管轄の獄の人数計算ちゃんとしてるんだ。隊長になったのはお互い一昨日からだけど、俺まだ数えてないよ。
加えて、他の獄も調べてるとか……真面目すぎる!!
「あ~、それは僕も気になった~。最近計算が合わなくて困ってたんだ~」
七隊隊長はクスリと笑って話す。
その顔がなんとも……あ、別に俺、そういう趣味じゃないけどね。
そういや――、
「あー、俺のとこもそうっス。昨日副隊長が言ってたんで多分同じだと」
「ほう、三つの部隊が……よろしい」
何がよろしいんだ?
長く生きすぎてボケたのかもしれない。
だとしたらウケる。
「三隊隊長」
「はっ」
「五隊隊長」
「うぇ!?」
「七隊隊長」
「は~い」
「これからおまえらを地獄逃亡捜査の幹部とする。調査後、犯人の拘束を命じる。……みな異論はないな?」
『承知』
俺以外の全員が同じことを言う。
なんだ、その息の合いっぷりは。
というか、
「新隊長の初任務じゃ。おまえらに期待しておるぞ」
なんでそんなに清々しい顔で言うのだ、一隊隊長よ。
隊長総会
いきなり大役を任せられると奇声を発するのは私だけではないはず。
>д<