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任命式

10/19 更新


新作です。

苦手な方は戻るボタンを押して、良作を探しに行くのが吉です。


「これから新隊長任命式を開催する。呼ばれたものは前へ」


 総轄職のじいさんの声が式場に響く。あのじいさんはずっと前に第一隊隊長を務めたけど、見た目にはそうは見えない。


 どちらかというと、なんつーか……そう、出世コースまっしぐらで来た人って感じだ。


「ふぁあ。眠い」


「リード、自分の任命式だ。真面目に受けろ」


 と、学院からの友人であるリウが俺の手の甲をつねる。


「……へ、へいへい」


 ここは大声を出してはいけない。歯を食いしばって声を殺す。


 後で覚えてろよ。このクソ真面目野郎。


「アリウス・ペイジ。フリードリヒ・クラム・ジズ……前へ」


「「はい」」


 二人揃って前へ行く。コイツ、俺より背が高いからムカつく。


「アリウス・ペイジ」


「はっ」


 リウが一歩前へ出る


「お主を第三部隊隊長に任命する」


「我槍にかけましてお受けいたします」


 そう膝ついて言う。じいさんはじいさんで隊長の証であるマントをリウに付ける。


 おーおー、真面目な言葉だねぇ。リウならさぞ立派な隊長になるだろうよ。


「フリードリヒ・クラム・ジズ」


「あ、はい」


 やべ、ぼーっとしてたから間抜けな返事しちゃった。だが時すでに遅し、背後からウチの現当主から殺気のこもった視線が俺に突き刺さる。


 ゴメン、後で説教聞くから今はやめて!


 真剣な顔をしてじいさんを見ると、呆れた顔をしている。ああ、不味ったな。


「…………お主を第五部隊隊長に任命する」


「……我弓にかけましてお受けいたします」


 俺もリウと同じように振舞う。


 マントは肩にかけても着てもいい。


 というかマントじゃなくて、普通に隊長服って言えばいい気がする。


 隊士服と隊長服って違うし、このマントだって本当は着れるんだからさ。


 なぁーんてそんなことを後日、ポロっとこぼすと第二隊隊長が飛んできてボコボコにされましたとさ。


 めでたくなくなし、めでたくねぇよ。


 そんなこんなで式が終わり、帰れることになった。


 が、俺の背後には魔力を帯びた悪魔の矢が迫っていた。





















「あの」


「何?」


「あ、えと」


「何? 私に言いたいいことあるの? ああそうなの……だとしたら死ね」


 くそう。


 なんで俺がこんなに頭低くならなきゃいけないんだ!


 隊長は俺なんだぞ!!


「あのね、だから、あのぉ」


「ああ、ウザい。海より深くウザい。何故私の兄はこんなにもウザいんだろう。もうここまで来ると殺したくなるくらいウザいんだけど」


 涙が出そうになる。兄なのに。


「ウチの品格を下げるような行為をするなと何度言ったらわかるの、この鳥頭が!!」


 と、うちの妹は右足で俺の左横腹に蹴りを入れました。


 正直とても痛い。


 そのまま左手を地面につき、右足で俺のみぞおちを踏み付ける。


「ゴハッ! 妹は体術も強し……」


「当たり前だ。リードの妹は愚かな兄よりスコアで抜群の成績と才能を持っているのだからな。順調にいけば卒業して100年後にはウェイブの一人になっているかもしれん」


 リウが自然と説明する。


「……でも俺は隊長になれたぜ?」


「そうだな。リードのことだ。どうせ運だろう」


「はい。私もそう思います、第三隊隊長」


 おい、そうやってうんうん頷くんじゃない。我が妹よ。


 対してリウはというと、


「嬉しいが、名称は変えなくていい」


「いいえ、一、スコア生が隊長に礼儀を欠いてはいけませんので。これからも愚兄共々よろしくお願いします」


「それを言えば、君だって貴族であるジズの当主だ。わかっている。こちらこそよろしく」


「おいおい、なんでそんなに謙遜しあってるんだか。メンドイからそういう肩っ苦しいのはなしにしようぜッ……!!」


 俺がそう言い切ると同時に後ろからげんこつが飛んだ。


 一体誰だ! 俺は第五部隊隊長のフリードリヒ・クラム・ジズだぞ!!


「馬鹿もんが。礼儀が無くて何が隊長じゃ」


「そうだぞ、リード。ありがたい大先輩の言うことだ。ちゃんと聞きなさい」


「ゲッ!」


「『ゲッ』とはなんだ、『ゲッ』とは。せっかくお前のためにケーキを焼いてきたというのに……」


 振り向くとそこには、第一隊隊長と相変わらずキモい第四隊隊長が肩を並べていた。



任命式


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