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婚約破棄?悪役令嬢ゴリラは動じない

作者: 黒の課長
掲載日:2026/09/27

「公爵令嬢ゴリラ! お前との婚約を破棄する!」


 王宮の晩餐会、第一王子ゴリラの咆哮が轟いた。

たくましい胸筋を叩き鳴らす王子。

その傍らには、可憐に寄り添う男爵令嬢ゴリラの姿があった。


「ゴリラ様はひどい方ですわ! わたくしを階段から突き落としたのです!」

涙を拭うフリをしながら、己の分厚い胸板を叩いて被害を訴えるゴリラ。


 対する悪役令嬢は、優雅に腕組みをしたまま見下ろした。

「あら、証拠はあるのかしら? わたくしが本気を出せば、突き落とすどころか壁を突き破っていきますわ」


 ゴリラはそう言うと、近くにあった全高三メートルの巨大な石像を片手で持ち上げ、粉々に粉砕してみせた。


 会場の貴族ゴリラ達が「さすが公爵家……」「物理的説得力が凄すぎる……」とざわめくなか、王子は胸を張り直した。


「口答弁は無用! 正義は我が拳にあり!」

 修羅場が物理的な殴り合いに発展しかけたその時……静かに間に割り込む影があった。


 公爵家の執事ゴリラである。

「皆様、お鎮まりください。……真実を知るための『聖なる儀式』を執り行いますぞ」


 執事が恭しく銀のトレーの布を剥ぐと、そこには黄金色に輝く最高級完熟バナナが鎮座していた。

「嘘をつく不義の者に、この至高の甘みは理解できませぬ。真実を知る者は、己を賭けてこのバナナを掴み取るのですぞ!」



「「「バナナ………!!!」」」


 その瞬間、言葉による議論はすべて消し飛んだ。

 王子ゴリラ、公爵令嬢ゴリラ、男爵令嬢ゴリラ、貴族ゴリラ、全ゴリラが眼光を鋭く光らせる。


「ウホッ!!(あれは渡さん!)」

「ウホホッ!!(わたくしのものよ!)」

「ウホホホホッ!!!(これは渡しませぬぞ!)」


 理性を捨て去ったゴリラ達が、一斉にバナナへ向かって突進する!

ドレスを破り捨て、タキシードを吹き飛ばし、会場内を縦横無尽に跳びまわる大乱闘。


 もはや婚約破棄も濡れ衣も関係ない。

そこにあるのは「一番強い奴がバナナを喰う」という原始の掟のみであった。



 数十分後―――。

ボロボロになった会場の中心で、一番大きいバナナを山分けした全員が、肩を組んで笑顔でバナナを頬張っていた。


「美味いな、ゴリラ!」

「ええ、ゴリラ様! 争いの後のバナナは格別ですわ!」

「ウホホ〜イ!」


 こうして婚約破棄の泥沼劇は終わり、会場は全員が笑顔で踊り狂う『ゴリラパーティー』へと変貌を遂げたのであった。



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― 新着の感想 ―
 どんな結末となるのかと期待させて全てを台無しにするオチに笑いました。ですがこういう問題のすり替えも結果が良ければそれでよし。見事に大団円となりましたしね。  そう、結果が良ければ全て良し。シェイクス…
 黒の課長さん、こんにちは。 「婚約破棄?悪役令嬢ゴリラは動じない」拝読致しました。  流行の悪役令嬢もの。ただし、令嬢はゴリラ。うん、ゴリラ。  大丈夫。王子も周辺も、みんなゴリラ。ただ、それ…
ゴリラはゴリラであることが1番ですねー!(ᵔᴥᵔ) 私もアザラシを殴る気持ちを思い出そうかな˚✧₊ʕ•ᴥ•ʔ 読ませて頂きましてどうもありがとうございました! m(_ _)m
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