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勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
第十章 忍術道場

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第94話


 翌朝。

 レストランでの朝餉の時間。


「忍術道場に参りませんか」


「・・・」


 皆が箸を止めてカオルを見た。


「何ですって? 忍術?」


「民間の忍術道場を見つけました」


「ええっ!? そんなのあるんですか!?」


 マサヒデが驚いて声を上げる。


「それもイノカシ流。見世物商売の自称忍者の道場ではなく、正統な流派です。情報省はブデン流が主流ですが、多少は教えております。軍諜報部の主流の流派です」


「行きましょう!」


「はあー! 忍者道場ですか!」


 予想通り、クレールが目を輝かせる。


「クレール様、レイシクランの皆様にも良い機会。何か盗めるかもしれません」


「そうですね! 行きましょう!」


 が・・・シズクも喜ぶかと思ったが意外と反応が薄い。


「ふうん・・・」


「シズクさんは興味なさげですが・・・何か?」


「強いの? そこの人。何か忍って弱っちい感じするもん。お前も剣術やり過ぎで怒られてるくらいだろ」


「先程申した通りイノカシは軍に多く、道場主は達人と言われております」


 ぱ! とシズクが顔を変え、


「じゃあ行く!」


「・・・」


 ラディは黙々と箸を進めている。やはり興味なさげ。


「忍には忍者刀という一風変わった刀がございまして」


 ぴくっ。


「行きます」


「では、ハワード様にもお声がけして参ります」



----------



 忍術道場は港湾区からは遠く、城をぐるりと回って北東の農業区の山裾にあった。到着した時は、昼もとっくに過ぎてしまった。


「おおー・・・忍者が居そうですねえ・・・」


 マサヒデが笠を上げる。

 詫びた庵と、小さな道場。

 入口に『黄龍穴道場』と力強い筆で書かれた看板。


「ううむ、いかにもって感じがしますね。商売ですから当然でしょうけど」


 すん、とイザベルが鼻を鳴らし、耳を立てる。


「マサヒデ様、おかしいです」


「どうしました」


「今は稽古時間のはず。全く音がしません」


「む、確かに。お休みでしたか・・・」


「いえ。人はおります。複数です」


「・・・」


 皆が顔を見合わせる。空気が一気に緊張した。


「行きましょうか」


「のう! ワシも行って良いかの!」


 後ろからトモヤがうきうきと声を上げたが、


「お前は少し待っていろ。何かおかしい」


「・・・なんぞおるのか。待ち伏せか」


「かも、しれん。すぐに馬車を出せるよう、そこに居てくれ」


「む、分かった」


 マサヒデ達が馬を下りる。

 マサヒデは馬車の後ろに行き、


「ラディさん、そこの垣根に隠れてて下さい。鉄砲はすぐ撃てるように」


「は、はい」


「クレールさんもラディさんと一緒に。蜂・・・いや、蝶を出して、私達の後ろから見てて下さい。蜂は出しておいて地面に。飛ばしておくと音でバレます。狭いから、虎より蜂の方が良い。毒蛾は出さないで下さい。私達もやられますから」


「はい」


「シズクさんは私達と一緒に」


「分かった」


 戦闘準備をして、マサヒデ達が道場に近付いて行く。


「・・・」


 玄関の前でマサヒデにも分かった。

 確かに複数の人の気配がある。だが、物音ひとつしない。おかしい。


「開けますよ。シズクさん、目潰しに注意して。火薬の臭いがしたら、壁ぶち破ってでも急いで飛び出て下さい」


「分かった」


 からからから・・・


「こんにちはー!」


「どうぞー! お入り下さーい!」


 皆が顔を見合わせる。返事が返ってくるとは?

 声に殺気は感じないが、相手は忍。油断は出来ない。

 マサヒデがアルマダとイザベルを見て手で合図。

 2人は、そーっと縁側の方に回って行く。


 ぎし・・・

 先頭のシズクが床を鳴らして入って行く。

 マサヒデ、カオルが脇差を抜いてついて行く。


 すー・・・とシズクが鉄棒の先で戸を開け、慎重に道場を見渡す。


「・・・」


 誰も居ない。

 確かに返事はした。

 道場の奥の上座には『忍道』と書かれた掛け軸が掛かっている。


 奥の隅には、ぼろぼろになった畳が立ててある。

 おそらく、手裏剣の練習に使っているものだ。


 ぱ! とシズクが入り、ささ! とマサヒデとカオルが左右に立つ。


 その時、き、と小さく壁が鳴った。


「何奴!」


 かかん!

 マサヒデとカオルが投げた棒手裏剣が刺さり、ぱぱ! と2人が拳銃を抜く。

 ば! とアルマダが庭から縁側に跳び上がり、イザベルが庭で長い剣を抜く。


「ちょっと! ちょっと待って下さい!」


 壁がくるりと回り、忍装束の男が出て来た。

 マサヒデ達を見て、ぎょ! と驚き、


「うわっ!? ちょっと! 何ですか!?」


 び! と男の顔の目の前に、シズクが棒を突き出す。


「てめえ・・・誰に雇われた。顔潰されたくなきゃ吐きな」


「は!? は!?」


 マサヒデが拳銃を向けたまま男の横に回り、


「カオルさん。縛り上げて」


「は!」


 カオルが拳銃をしまい、懐から縄を出す。


「待って! 待って! 勘違いしてます!」


「何を」


「僕はここの道場主! サービス! これ忍者の見世物です! 初めて来た人に驚いてもらうってだけです! 襲うつもりないですから!」


「・・・」


「本当! 嘘じゃないですから!」


「・・・カオルさん。身体調べて、持ち物全部取り上げて。話はそれから聞きます」


「は!」


「シズクさん。この人の股ぐらに棒を入れておいて。動いたら天井にぶっ飛ばして」


「分かった」


 すう・・・と男の股に棒が差し込まれる。これで横にもぱっと動けないし、前後に動こうとしたら睾丸を潰せる。


「鉄張り!?」


「中まで鉄さ」


 ばさ、とシズクがフードを取る。


「鬼っ・・・」


「大人しくしてな。私がこの棒を軽く上げただけで、天井に頭突っ込んで、てるてる坊主する事になるよ」


 こくこくと男が頷く。

 カオルがぱぱぱ、と男の身体を調べていく。


 腰の刀と脇差。

 背中からも脇差。

 手裏剣。棒と十字。

 竹筒。慎重に蓋を開けると、撒菱。


「これはこれは」


 鎖分銅。危険な武器だ。

 帯から鉄線。

 手甲から針。

 足袋にも棒手裏剣が隠されている。


 もう一度、上から下まで調べていく。


「もうありません」


 マサヒデが頷き、壁の方を向いて、


「お仲間さん。出てこないとこの人を斬ります。10数えます。0までに出て来て。10」


「待って待って!」


 くるりと壁が回り、中からばたばたと忍装束の者達が出てくる。


「本当です! ただの見世物です! 初めて来た人に見せるだけの!」

「何もしません!」

「助けて下さい!」

「先生を殺さないで下さい!」


「・・・」


 マサヒデ達の冷たい目。これは斬られる!?

 門弟達が平伏して、


「嘘ではありません!」

「お願いします!」

「害意はないんです!」

「殺さないで下さい!」


 マサヒデが拳銃を門弟達に向けたまま、男の首筋にぴたりと脇差の刃を当てる。


「聞いても無駄だと思いますが・・・誰に雇われました」


「誰にも雇われてないです! 僕はここの道場主です!」


「カオルさん。変装してませんか」


 カオルがす、す、す、と男の顔や首を触る。


「しておりません」


「私達・・・何度も闇討ちにあって・・・暗殺者まで送られてきましてね・・・」


 すすす・・・すすす・・・

 マサヒデが脇差で男の首を斬らないように、刃で撫でる。


「ちょっと過敏に反応してしまうんですよ。許して下さい」


 拳銃をしまい、脇差を納める。

 シズクを見て頷くと、シズクが男を睨みながらゆっくりと棒を引いた。

 さ、とカオルが後ろに回る。

 ふう、と男が息をつき、ちらっと後ろのカオルを見て、


「ど、ど、道場破りですか? あなた達、誰なんですか?」


「道場破りではありません。見学のつもりで来たんです。私はマサヒデ=トミヤス」


「ええっ!?」


「あなたは」


「ぼ、僕は、ここの道場主の、黄龍斎=シノです」


「そうでしたか。驚かせてしまって、申し訳ありません」


 す、とマサヒデがカオルに向けて低く手を上げると、カオルも脇差を納めた。

 それを見て、アルマダも剣を納める。

 カオルが壁から「かすっ」と棒手裏剣を抜き、1本をマサヒデに渡し、1本を懐に入れた。


 はあー、とシノが息を吐いて、うんざりした顔をマサヒデに向けた。


「冗談抜きに、死を覚悟しましたよ」


 そう言って、ぺたぺたとマサヒデの脇差で撫でられた首に手を当て、血が着いていないのを見て、また息をついた。


 が・・・マサヒデの目は険しいまま。

 この男、シノはこんな事を言いながら、冷や汗ひとつかいていない。

 一見、驚いて怯えたように見えてはいたが、何か余裕があるのを感じる。


 門弟達の方は、ほっと胸を撫で下ろして、マサヒデを見上げた。

 これが噂の剣客、マサヒデ=トミヤス・・・

 ごく、と門弟達が喉を鳴らした。


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