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勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
第七章 血闘、暗殺者

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第69話


 朝食を終えてレストランを出た時、船の上から港に入ってくる者達が見えた。

 マサヒデが足を止め、


「あれって、奉行所の方では」


 む、と皆も足を止めて歩いて来る者達を見る。

 カオルが目を細め、


「そうです。どうしますか」


「アルマダさん、クレールさん、ラディさん、カオルさん、イザベルさん」


 昨晩来ていた者の名を呼び、レストランの方を見る。

 アルマダが頷いて、


「ま、そうですね」


 と、レストランに戻って行った。クレール達も続いて入って行ったが、イザベルが残り、


「マサヒデ様。私が迎えに出ます」


 と言い残し、さっさと歩いて行ってしまった。


「お願いしまーす」


 イザベルの背に声を掛け、マサヒデもレストランに戻って行った。



----------



「朝早くから失礼します。はい、私、えー、ウキョウ南奉行所のムラナカと」


 随分と腰の低い同心だが・・・船にびびっている、という感じではない。

 何か違和感を感じる。ちらっと皆を見ると、ラディ以外は油断ない目をしている。

 この男、何かおかしい。


「どうも、私は筆頭同心のサワイと申しまして」


 ムラナカが驚いた顔でレストランを見回し、


「や、随分と凄い船に乗られておりますな」


「まあ、妻の持ち船といいますか。妻の家の船です」


「あ! なるほど。奥方様の。奥方様は、どこかの貴族で」


 ごす! とサワイがムラナカを小突く。


「いた! サワイさん、何するんですか・・・」


「こら! ムラナカさん、ちょっとこっちに来なさい!」


「はあ」


 ムラナカは同心に引っ張られていき、こそこそとこちらを見ながら、ええ? とか声を上げながら、ちらちらとこちらを見ている。しばらくして、サワイとムラナカが戻って来て、ムラナカが頭を下げ、


「や、これは大変失礼を」


「ほおんと、もう。このムラナカは礼儀というものを知らなくてえ。奥方様がレイシクラン家だと知らなかったんですう。お許し下さあい」


 サワイなる同心も、揉み手でへこへこ頭を下げる。


「ああ、いえ。そりゃあ、このウキョウは広いですから、仕方ないですよ。同心さんなら、他に知っておかないといけない事は沢山あります」


「ありがとうございますう。ほら! ムラナカさん! お礼!」


「は。いや、ありがとうございます」


 このムラナカ・・・何かおかしい。何か引っ掛かる。


「で、本日は、昨晩の事情聴取ですね」


「は。そういうことでして。と言いましても、昨晩連れて来てくれました連中は素直に喋ってくれましたので、後は皆様の見た所と合わせまして。ま、確認して終了と。そういう訳でございますな」


「はい。どうぞ、お尋ね下さい」


 ムラナカが懐から紙の束を出して、指を舐めてぺらぺらめくり、


「ええと、まず・・・あ、これこれ・・・」


 カオルやクレールの忍の事は隠して、問われるまま正直に答えていき、すらすらとお調べは終わった。


「・・・とまあ、そういう訳です」


 うんうん、とムラナカとサワイが頷く。


「ま、これで証言も一致しました、と。指名手配犯の賞金首なので、賞金の受け取りがございますが、こちらはいつ頃」


「賞金」


 人を斬り、金をもらう・・・

 ぐっ! とマサヒデに引っ掛かった。

 マサヒデは首を振って、


「ナカタさんの葬儀に使って下さい。残った分は、半分をウキョウ神宮に、半分をウキョウ新教会に」


「葬儀代じゃ釣りが出過ぎますが。かなりの額の寄付になりますけども」


「それは構いませんが・・・あ、でも、人を斬って出た金は・・・寄付されても、嫌でしょうか」


 ムラナカが笑い、


「ははは! 金にゃ変わりゃしませんよ! 飛び上がって喜ぶに決まってます。ねえサワイさん」


「こら! 全く・・・」


「今時、そんな坊主はどこにもいやしませんて。口じゃお偉い事を言ってますがね、実際の所、金がなきゃ寺も神社も教会もやってけないんですから。残念ながら、神様はお金降らしてはくれないんですよ」


「しっ! もう、そんな事は言わない! 申し訳ありまっせえん」


 ふ、と皆が小さく笑う。

 マサヒデも笑って、


「ま、それもそうです。向こうが嫌だって言うなら、連絡下さい。取りに行くので」


「分かりました。じゃ、サワイさん、行きましょう」


 じろっとサワイがムラナカを睨み、マサヒデ達に頭を下げ、


「長い時間、お手間をお掛けしました。それでは失礼致します」


 皆はにこにこしながら2人が出て行くまで見送っていたが、目は笑っていなかった。

 2人が出ていってしばらくして、笑いが消える。

 カオルが険しい目で、


「あのムラナカなる同心・・・人斬りです」


「え」


 驚いたのはラディだけ。皆が険しい目をしている。

 アルマダがため息をついて、


「厄介ですね。人斬り同心ですか」


 ラディがきょろきょろと皆を見て、


「あの、捕物などで斬るのでは」


 カオルが首を振る。


「違います。あれは金で人を斬る者です」


「金っ・・・」


 ラディが絶句する。

 マサヒデも腕を組み、


「あの人、並の腕ではないですよ。もう一人のサワイさんとやらは大した事ないですけど・・・あのムラナカさん、剣の腕は隠してるんでしょう。アルマダさん。ちらちら見えましたよね」


「ええ」


「金で、か・・・こっちに来ないと助かるんですが・・・」


 アルマダも顎に手を当て、


「同心ですから厄介ですよ。下手に返り討ちなんかにしたら、お縄になる可能性が高い。排斥派があの方の事を知らなければ良いのですが」


 ぱん! ぱん! とクレールが手を叩くと、給仕がワゴンを押してテーブルに来た。勿論、忍の変装だ。


「あの同心に監視をつけなさい。くれぐれも感付かれないように」


「は。機があれば始末なさいますか」


「今は監視だけで結構です。動きがあれば報せて下さい。危急の際は任せます」


「は」


 からからとワゴンを押して、忍が下がって行った。


「さてと・・・次の問題を片付けないと」


 そう言って、アルマダが首を振る。

 ん? とマサヒデが怪訝な顔をして、


「何かありましたか?」


 じろ、とアルマダがマサヒデを睨み、


「会見です。マサヒデさん、大量に来ますよ。人斬りシンノスケを果たし合いで斬ったと。この話、あっという間に広まりますよ。夕方には首都中の記者が集まります。明日には号外が出るか、一面か」


「げっ!?」


「私達も見届人でその場に居たんだ。会見には出ないと・・・ええい!」


 アルマダが首を振る。


「ああー・・・また会見ですよお・・・」


 のぺーっとクレールがテーブルにべったり倒れ込む。

 はあ・・・とイザベルも息をついて、首を振る。

 ち、とアルマダが舌打ちをついて顔を逸らし、


「まあ、仕方ないですけどね・・・やらなければ、こっちがやられていたんです。命と引換には出来ませんよ・・・マサヒデさん、正装を用意しておきなさい。イザベル様、シズクさんと一緒に会場の準備願えますか」


「はい」


「申の刻(16時)開始くらいで良いでしょう。ぞろぞろ入ってこないように、港の入口に申の刻からと高札を立てておきましょう。警備隊にお許しをもらって、急いで高札を立てておかないと・・・早い者はすっ飛んでこっちに向かってきます」


 がた! とマサヒデが椅子を鳴らして立ち上がり、


「そんな! たくさんの人の前で会見だなんて、私、緊張しますよ!」


「あなた、陛下の隣で大量の貴族に囲まれてお話してたでしょう。全然ましです」


 どさ、とマサヒデが座り込み、頭を抱える。


「ああ・・・」


 ラディが頭を抱えるマサヒデを見て、


「あの、私も?」


「当然です」


「ああ・・・」


 ラディも頭を抱えた。

 は、とアルマダが溜め息をつき、


「ホルニコヴァさんも正装の準備をしておきなさい。香水は必要ありませんから。警備はうちの皆と、シズクさんにやってもらいましょう」


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