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勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
第四章 神社と教会

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第52話


 不思議な鎧を着た聖騎士、サダと喋っていると、シズクが歩いて来た。

 シズクがサダを見て、


「おはようございます」


 と、頭を下げる。サダが振り返って、


「あ・・・ああ、おはようございます」


 マサヒデがシズクを見て、


「サダさん。その方が噂の鬼族です。シズクさん」


「ああ、あんたが・・・はじめまして。キョウジ=サダ。俺、ここの聖騎士やってるんだ。今日から護衛につけって言われたんだけどさ」


 んん? とシズクが胡乱な目でサダを見る。


「聖騎士? 護衛?」


「排斥派に襲われたんだってな。で、ここの教会にとっちゃ大事な人だから守っててくれ、だとさ。でも、あんた達に俺の護衛、いるかな?」


「ふーん・・・」


 シズクがじろじろとサダを見る。

 シズクの勘ではそこそこ強そうな感じはするが、どうだろうか?


「分かんない。腕次第?」


 マサヒデがサダの後ろから、握り潰された銅貨をシズクに投げる。

 ほい、とシズクが受け取って、


「ほーん。力自慢」


「ま、そんなとこかな。正直に言うと、剣はからっきしだよ」


 シズクがもそもそと懐から銅貨を出して、くっと握る。


「1枚」


 左手を下に置いて離すと、同じように潰れた銅貨が落ちる。

 2枚重ねて、くっ。


「2枚」


 2枚重ねても潰れた。

 3枚重ねて・・・くっ。


「3枚。いける?」


 3枚重ねの銅貨が潰された。これは凄まじい力。さすが鬼族・・・

 はて、とサダが首を傾げて、


「重ねては試した事がないな。まだ銅貨あるか?」


「あるよ」


 サダの手に、ちゃりり、と銅貨が置かれる。


「どうなんだろうな・・・ところで、先に聞いておきたいんだけど」


「ん?」


「この銅貨、曲げたり潰したりしたら弁償しなきゃ駄目か?」


「あははは! 奢るよ!」


「じゃ、試させてもらうよ」


 ぐ、ぐ、ぐ・・・

 サダがくる、くる、と拳を回す。


「ううん・・・重なってると感触がよく分からないな? 曲がっただけかな?」


 ぱ、と手を開くと、曲がった3枚重ねの銅貨。

 重ねてほんの少し曲げられるというだけでも恐ろしい力だが、ぴったり半分に折れている。

 おお! とシズクが笑顔になって、


「あ! 凄いじゃん! あとは木刀で私ぶっ飛ばせれば合格だよ!」


「木刀で鬼族を? 折れちまう・・・だ、ろ・・・」


 言いながら、サダがゆっくりとマサヒデに振り向いた。

 そうだ。マサヒデは試合では木刀で鬼族を壁まで吹き飛ばしていた。

 人族でもあんなに吹き飛ばそうと力が入ったら、簡単に折れるはずだ。


「・・・」


 もう一度シズクを見て、またマサヒデを見る。


「どうやったんだ?」


 マサヒデは困惑した顔で、


「どうって・・・普通に振っただけですよ」


「すまない。ちょっと良いかな・・・」


 サダがシズクの前で膝を付いて、顔を見上げ、


「持ち上げてみても良いか? ぐいっと行かないから。持ち上げれるかどうか」


「ふふーん。良いよー。上がりはすると思うよ」


 ぐ、と足を抱くように掴み、


「む・・・む・・・」


 何!? とマサヒデが驚いて目を見開く。

 以前、カオルと2人がかりで持ち上げてみようとした事があったが、微動だにしなかったシズクの足が、ぐ、と持ち上がった。ぎゅ、ぎゅ、とサダの足が地に沈む。


「くそ! これ以上は無理だ・・・」


「あはーん。その程度じゃあ鬼には勝てないぞー」


 サダが手を離すと、どすんとシズクが足を着き、にやにや笑う。


「狼族よりは力あるかなー。同じくらいかなー。でも私ら程じゃあないなー」


 ふう! とサダが息をついて立ち上がり、呆れた顔でマサヒデの方を見る。


「この重さ、木刀で吹き飛ばしたのか? 身体が崩れてたって無理だろ?」


 またマサヒデは困った顔をして、


「そう言われましても・・・ただ振っただけですから・・・」


 シズクがにやにやして、


「マサちゃんって凄いだろ? これがトミヤス流なのさ! ハワード様だって、私ぶっ飛ばせるよ!」


「本当かよ・・・俺が護衛につく意味ないな。そもそも、真剣なんかいらないんじゃないか? 木刀何本か持ってるだけで良いだろ? 相手が鎧着ててもぶっ飛ばせるじゃないか」


「いや、木刀だと、相手が真剣で振ってきたら切り落とされてしまいますし」


「じゃあ鉄パイプで良いんじゃないのか?」


 ぷ、とマサヒデが笑って、


「ふふ。それはちょっとどうかと・・・腰に鉄パイプだなんて、後ろ指ですよ。それに、刀は刀で使い方がありますから」


「どんな」


「降参しろって脅す時は、刀の方が迫力が出て良いでしょう?」


「ふ、ははは! そりゃあそうだ! その刀は脅迫用か!」


「ははは! この先もそうであって欲しいと思いますよ」



----------



「良い勉強になりました! ありがとうございました!」


 クレールがマイロ牧師に頭を下げ、どさ、と小袋を置く。


「おお、こんなに。ありがとうございます」


「お収め下さい! それでは、また来ます!」


 ててて・・・とクレールが小走りに走って行き、カオル、イザベル、ラディと教会を出て行った。子供のようなクレールの後ろ姿を見て、マイロ牧師も微笑みを浮かべる。服装は平民層と変わらなかったが、あれは裕福な貴族の子供であったのだろう。


 自分の説法を聞いて、小遣いを出してくれたのか。

 それよりも、自分の話が勉強になった、と喜んでもらえた。

 温かい気持ちになり、出て行く者達を見送って、寄付の箱を持ち上げて奥に持って行く。机に寄付箱を置き、す、と先程の子供が置いてくれた小袋に手を添える。


 初めて来てくれた子であった。

 大事な小遣いを出してくれるほど、喜んでくれた。

 自分の説法をそれほどに喜んでくれた事が、何よりも嬉しい。


(ありがとうございます)


 神様と子供に感謝して、そっと小袋を開ける。


「うっ!?」


 ぎょっとして、マイロ牧師の手が止まった。金貨・・・

 銀貨、銅貨ではなかった! これは金貨の小袋!?

 恐る恐る小袋を開けて、じゃらら・・・と箱の中に開ける。

 全部、金貨。

 ぷつぷつと汗が額に浮いてくる。


 こんこん。

 は! としてマイロ牧師がドアを見る。


「マイロさん。サダです」


「サダ君か・・・入ってくれ」


 がちゃ、とドアが開いて、サダが入って来た。


「ははは。今日も閑古鳥ですか」


「いや・・・いや、サダ君、これ見て」


 ん、とサダが寄付箱を覗いて、ぎょっとして固まる。


「何ですか、それ・・・」


「さっき、子供が寄付してくれたんだ。背は小さかったが、多分、14、5くらいかな・・・」


「子供? 貴族の小遣いって額じゃないですよ。もしかして王族だったんですかね」


「分からんが・・・」


 は! とサダが顔を上げ、


「ああっ! あいつか! ほら、奥方、とんでもなくでかい魔の国の貴族だって教えてくれましたよね。さっき、トミヤスさんが外に来てたんです」


「何!?」


 がば! とマイロ牧師が顔を上げた。


「その子供、きっと魔族ですよ。トミヤスさんの奥方だったんじゃ」


 マイロ牧師が慌てて教会を飛び出して行ったが、表では子供が遊んでいるだけだ。

 道に飛び出たが、いつもの景色。


「・・・」


 サダが歩いて来て、マイロ牧師の横に並び、苦笑を浮かべて、


「トミヤスさんの護衛は断られちゃいましたよ。俺じゃあ役に立つどころか、足手まといになるだけです。木刀で鬼族ぶっ飛ばせるなんて、人族だって信じられませんよ。本当は龍人族とかじゃないんですか?」


 きゃあきゃあと、教会の庭で子供達が遊んでいる。

 かくん、と膝が抜けて落ちそうになったマイロ牧師を、サダが受け止めた。


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