表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
第四章 神社と教会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/93

第43話


 神祇省、大臣室―――

 マサヒデ達がウキョウ神宮に向かっている頃。


 神祇大臣、オオカワ子爵が「秘」と書かれた書類の名簿を写していた。


「おのれ教会め・・・許せぬ。あのような健気なお方を・・・直訴して・・・」


 さらさらと筆を滑らせていると、ぱ! と部屋が明るくなった。


「うぬうっ!?」


「ノリスケ・・・」


 オオカワが目に手を当て、引き出しを開けて何とか拳銃を握る。


「く! 何者!」


 ぱ! ぱ! とめくら状態で銃を左右に向けるオオカワ。


「我はお主に害する者ではない。お主達は、我を戦神シャーズラと呼ぶ」


「シャっ・・・」


 神の名は軽々しく呼んではならない。

 口にしそうになって、オオカワは慌てて口を抑える。


「戦神様!?」


「此度は我の主、日輪の神の使いとして参った」


 糸のように細く目を開けると、光に人影がぼんやり見える。

 あれが日輪の神の使い、戦神シャーズラ!?


「日輪の神はかの娘をいたく憐れんでおられる」


「レイシクラン様を」


「何故かの娘が訴えを頑なに止めたか、お主は分かっておらぬ」


「な、何故でありましょうか!」


「教会に心の拠り所を求める者は多くおろう」


「はっ!」


 ごとり、とオオカワの手から拳銃が落ちた。


「教会全てが悪ではない。この言葉、お主は分かったつもりでしかと分かっておらぬ。此度の事、明るみに出れば教会に心の拠り所を求める者達は、教会を何と思おう。その者らの心の拠り所はどうなる」


「されば改宗すれば!」


「改宗とは簡単に出来るものではない。もはやどの神も信じられぬ。さような者も出よう。疑問を抱きつつも周りが教会であるから、という者も出よう。さような者達の心の拠り所はどこに。かの娘はそこを見越しておる」


「なんと・・・」


「排斥派なる輩は生きて捕えられておる。近く読売なる物で報せも広がろう。されど、狙われたのはかの娘ではなく夫のマサヒデなる者。ただの平民。それで済ませるつもりだ。己が狙われたとなれば、必ず教会に疑問を持つ者が出ると分かっておる」


「・・・」


「排斥派なる者に狙われると分かっておりながら、外に出て日輪の神に礼をと参る。自身が殺される事は構わぬが、されども人族が、と涙を流す。皮肉な事よな。かの娘のありよう、教会の言う聖女そのものではないか。教会の嫌う魔族であろうに」


「まさしく」


「日輪の神は見守り、その光で道を示すのみ。悲しき事に直に守ってやる事は叶わぬ。されども、せめて。日輪の神に代わり、お主に陰ながら支えてやってほしい。これは我儘でもあるが、どうか引き受けてもらえまいか、とのお言葉。いや、お頼み」


「日輪の神からのお頼み・・・私めが・・・私めで足りましょうか」


「そっと、陰ながら、ほんの少しで良いのだ。決して直訴するような真似をして、かの娘の思いを壊すような真似はするな。さればとお主が身代わりになどと考えてもならぬ。それでお主が苦しめば、日輪の神も、かの娘も、さぞや嘆き悲しむであろう」


「はい」


「日輪の神のお言葉、しかと伝えた。かの娘が日輪の神の照らす道を歩めるよう、お主が支えてくれ。ノリスケよ。我からも頼むぞ・・・」


 だんだん声が遠くなり、ふわあ・・・と光が消え、人影も見えなくなった。

 オオカワの目から滂沱として涙が流れる。


「御神託、承りました。必ずや」


 涙を流すオオカワの後ろで、姿の見えないレイシクランの忍がにやりと笑った。

 外の茂みの後ろに、気を失ったオオカワの影護衛が倒れていた。



----------



 ウキョウ神宮。


 おお、とマサヒデ達が鳥居を見上げる。

 クレールが観光案内を広げて、


「ええと、これが第一鳥居で、高さが大体3丈半(10m超)。第二鳥居が日輪国で一番大きくて、高さ4丈もあるんですって!」


「はあー・・・ヤセキ神社とは比べ物になりませんね・・・」


「あっ! 宝物殿の隣に道場がありますよ! 弓道、柔道、空手、合気道をやってるみたいですね」


 お? とマサヒデが観光案内を覗き込み、


「剣術はないんですか? 北之天社みたいに」


「ないですねえ・・・でも太刀があるみたいですよ」


「太刀? 国宝とかですか?」


「だと思います。鹿神の祓太刀ですって。きっと鹿神流の宝物ですよね。原野斎さんも使ったんでしょうか」


「え!?」

「何ですって!?」

「は!?」

「まさか!?」


 マサヒデ、アルマダ、カオル、イザベル。4人が大声を上げる。


「クレールさん! それ剣術! 鹿神流の事ですよ! 鹿神流の抜刀術です!」


「えーっ!?」


「ちょっと貸して下さい」


 アルマダが観光案内をふんだくって、ぱらりぱらりとめくる。

 すすす、と指を滑らせ、


「神誠館・・・16番、16番、これだ。弓術、柔道、空手・・・武道錬成科? 合気道、柔術・・・鹿島の祓太刀! 鹿島の祓太刀は専修科。専修科? 専修科・・・ない。載ってない。ううむ! 一般公開はしていないのか!」


「アルマダさん、お話だけでも出来ませんかね。一手ご指南なんて贅沢は言いません」


「そうですね。行きましょう。一番奥です」


「待ったー!」


 急いで歩き出したマサヒデとアルマダをクレールが大声で止める。


「む」


「ちょっと待って下さい!」


「どうしました」


 び! とクレールが奥の社殿を指差し、


「ここは神社ですよ! 一番偉い日輪の神様がおられるんですよ! まずはご挨拶です! お参りです! 道場にもそれから顔を出すべきではないですか!?」


「・・・(ちっ)」


「マサヒデ様!? 今、舌打ちしませんでした!?」


 ぷい、とマサヒデが横を向き、


「神様の前でそんな事しません。さ、さっさとお参りして道場に」


 クレールがぷんぷんして拳を握る。


「駄目です! 庭園にも行かないと! 王子がおられたらどうするんです! ご挨拶しないと!」


「居ませんよ。そんなにしょっちゅう城を抜け出るわけないじゃないですか。ね、アルマダさん」


「そうですよ。さ、お参りして道場に行きましょう」


「こらー!」


 怒るクレールを無視して、マサヒデとアルマダは歩いて行く。

 イザベルがクレールの肩に手を置き、


「急いで参りましょう。マサヒデ様とアルマダ様がああなったら止められません。正直に申しますと、私も先に道場へ参りたく」


「駄目です! 庭園には行くんですー!」


「ささ、クレール様」


 カオルが横に立ち、クレールの背を手を置いて、押して歩いて行く。

 後ろからトモヤとシズクとラディが並んで歩く。


「騒がしいのう。あれぞバチ当たりではないか?」


 はあ、とシズクが深く被ったローブの下で溜め息をつく。


「だーよねー」


 ちらちらとラディが周りを見る。


「恥ずかしいです」



----------



 菅笠を取って、軽く会釈。

 ちゃりりん、賽銭箱に銅貨を5枚。5つの円で良いご縁。

 二礼二拍手一礼。

 ぱん! ぱん! すっ。

 20秒。


「はい。終わりました。行きましょう」


「しっ!」


 クレールがマサヒデに注意して、ぶつぶつと何か祈っている。


「・・・」


 マサヒデは口を尖らせてクレールの後ろで腕を組んでいる。

 アルマダも少し焦れた顔で遠くを見ている。


 離れた所に居たシズクがマサヒデを手で招いて呼んだ。

 ん、とマサヒデがシズクの所に歩いて行く。


(あ)


 歩いて行く途中で気付いた。見られている・・・

 早く道場、鹿神流、と焦れて気付かなかったが、はっきり感じる。

 シズクの前に立ち、


「まさか、神社で?」


「ここ広いもんね。離れてついてきたのかな。最初から隠れてたのかな?」


「さすがに隠れてたってのはないでしょう。勇者祭の者はほとんど来ないんですよ。来てもここで流血となると、勇者祭は関係なくしょっぴかれます」


「庭園でくるかな」


 マサヒデは鳥居の向こうの庭園を見て、


「あれ、王宮庭園ですよ。御用です。道場の中か、出た所か・・・道場の中は難しい。殺気立って入って来たら即叩きのめされるんじゃないですか。出た所ですね」


「その門弟だよ。魔族いないかな。ここ、魔族も普通に入れる神社でしょ。ここの道場の門弟だったら、腕に覚えあり。勇者祭に参加。ありそうじゃない?」


「なるほど。ありえます。カオルさん」


「は」


 いつの間にかカオルも後ろに来ていた。


「そういう事で、道場、見てきてもらえますか? 庭園で待ってます」


「は」


 カオルが右手の西口の鳥居に歩いて行き、すっと見えなくなった。

 マサヒデはクレールの方を向いて、


「全く・・・まだですか。クレールさんは何をお祈りしてるんでしょう」


「世界平和じゃないの? じゃなきゃ商売繁盛」


「ははは!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ