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勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
晩餐会

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第36話


 教会、魔族排斥派の者がマサヒデ達を狙う。

 勇者祭以外の者がマサヒデ達を狙う・・・

 まだはっきりはしないが・・・


「魔族排斥派、という名前で、魔族を嫌っている連中だとは分かります。ですが、実際に斬りにくる・・・ん、ですね」


 キノトは難しい顔で、


「そうさ。教会ってのはどういうのか知ってるか?」


「詳しくは・・・まあ、あまり魔族を好いていないというくらいです」


「そう。そん中で特に危ねえ奴らを排斥派って言うんだ。この国はあんまり教会は幅を利かせちゃいねえから、まだマシな方だぞ。大勢でとっ捕まえて火炙りなんかされる国もあるんだ」


「そんな事を・・・キノト先生はなぜ彼らと」


「俺は陛下の即位前からちょくちょく影護衛やってたのさ。陛下が魔族と融和する考えを持ってるから、何度も襲われてな。そりゃ極端な魔族至上主義ってんならまだ分かるさ。融和って、別に贔屓とかなしに普通にしてりゃいいだろ、くらいだぜ」


「ううむ」


「それでしばらく休みだーって寝てりゃ、まず護衛やってる俺の首をって奴がちょくちょく来てた。即位が決まった時とか大変だったんだぜ」


「今もですか」


「さあな。でも外に出る時は必ず護衛つけてる。トミヤス君、しばらくここにいるつもりなんだよな」


「はい」


「お仲間が来るかもしれねえから、気を付けろよ。勇者祭じゃねえなら降参はきかねえ」


「覚悟はしてます。武術家がふらふら旅をしていれば、必ずどこぞで狙われますから・・・」


「ま、そうだな。で、今日来たのは3人?」


「はい」


「3人な・・・あんたらが乗ってる船に? 随分とでかい船だそうだな」


「はい。900人乗りの客船です」


 うーん、とキノトが腕を組んで首を傾げる。


「鬼族とレイシクランがいて、港にゃ警備兵もいるよな。明るいうちにそんなでかい船に3人? 血気に逸ったって奴かな? 押さえがきかねえのもいるからな」


「私は外で風をと思って、船から出てたんですが」


「ううん・・・にしたって、3人? トミヤス君を相手に? あんたの腕は知られてるはずだぞ? そんな使い手だったか?」


「まあ、それなりに」


「斬ったのか?」


「いえ。昏倒させて縛り上げて箱に」


 腕に差がありすぎた、という事だ。


「その程度が、たった3人、ね・・・他に見なかったか?」


「いえ」


「船の入口って、いくつくらいある? トミヤス君が戦ってる間に入られたとか」


「貨物室入口、あと船の横に港へのタラップが・・・こっちはいつも船員さんが回ってますし、必ず誰かに見つかりますが」


「うーん・・・様子見を送ったって所かな・・・にしても、って感じじゃねえか? やっぱ血気に逸った野郎共かな? ハワードさんはどう思う」


 アルマダも腕を組んで首を傾げる。


「おかしいですね。ううむ・・・港の警備兵に仲間がいると見るべきでしょうか」


「・・・まあ、その辺もありそうっちゃありそうだけど、真っ昼間だからな」


 あ、とアルマダが顔を上げ、


「む。そうか、船ですよ。もしや、爆弾?」


 マサヒデが首を振る。


「いや、そんな大きな荷物は持ってなかったですよ。あの船じゃ小さい爆弾では何ともないのでは」


「では・・・魔術の掛かった武器、でしょうか」


 キノトが頷く。


「なるほどな。それならあり得る。鬼族も斬れる得物ってことだな」


「マサヒデさん。その輩の荷物は」


「まとめて貨物室の奥に隠して置いてあります。まだ調べてはいないです」


「帰ったらそいつらの荷物、すぐ調べるんだな。あと、レイシクランのお嬢にゃ、忍がわんさか付いてるんだろ? あいつら口が固えから、薬でも使って口割らせた方が良いぞ。排斥派のそういう奴らは寝床をちょくちょく変えるし、バラバラで固まってないからな。中にゃ普通に昼間は町人として働いてて、なんてのも多いんだ。まんじゅう屋の親父が実は大幹部だった、とかな」


「分かりました」


「それと」


 キノトが会場を見回す。


「付き合う奴らは考えろよ。この中にも排斥派は居る。直接じゃなくても、資金を流したり、情報流してたり、な・・・大体貴族連中ってのは顔にも態度にも出さねえから分からねえぞ。中にゃあ何人も個人的な忍を飼ってるようなのもいる」


「例えばどなたが」


「ううん、尻尾が出ねえからなあ・・・そうじゃねえかってくらいで良いか」


「はい」


「サネミツ=ミスジ。アキト=アリミヤ。タルト=コマツ辺りは怪しいな」


 何? とアルマダが怪訝な顔をして、


「ちょっと待って下さい。ミスジ公爵は外務大臣。魔の国との外交もしていますね。アリミヤ殿下もコマツ殿下も陛下のご親戚ではありませんか」


「そうだ。教会に行ってる所も仕事以外じゃ見た事ねえ。むしろ寺や神社だけど・・・怪しいな。怪しいってだけだぞ。変に警戒するなよ」


「なぜ、怪しいと」


「色々あるが、陛下の親戚だからだ。分かるか?」


 アルマダがしばらく考え、は! と顔を上げた。


「陛下と王子を始末すると・・・王位継承権があるこの2人は」


 ふふん、とキノトが笑う。


「そういう事だ。アリミヤ殿下は陸軍大将。コマツ殿下は近衛都督。怖えなあ。もし・・・なあ? 近衛なんて、いつも陛下のお側にな。俺が教会だったら、押さえたいのはこの2人と外交官だし。3人共、頭が古いし・・・な。ちょっと失礼」


 キノトが給仕の所に言って、小さな徳利を持って戻って来る。ぐっと盃を煽り、会場に盃を向け、


「この会場、おかしいと思わねえか」


 マサヒデとアルマダが首を傾げる。何かおかしな所でも・・・


「魔族、やけに少なかねえか。ほとんど人族ばっかり。ぽつぽついるけど、ほとんど女しかいねえよな。嫁さんも連れて来たってくらいだ」


「む・・・」「確かに・・・」


「『人の国』って、魔の国以外の所、一緒くたにそう呼ぶけどさ。今、世界中に魔族いるよな。じゃあ人の国ってどういう意味かな」


「・・・」


「ここに来るまで、この国の貴族と会ったよな。魔族の貴族、いたか?」


「いえ」


「そういう事。人族が政治のほとんどを握るから人の国なのさ。昔は人だけの国だったからって事じゃないのさ。俺はそう考えてる」


 ん、とマサヒデが首を傾げ、


「あの、マツさんは王宮魔術師でしたが」


「いい質問だ。なぜマツ様が王宮魔術師になれたか。バックがあるから? 違う。王宮魔術師は政への発言力が全然ねえからさ」


「なるほど」


「だが、昔の人の国じゃ陰陽師って奴はすげえ発言力があった。なぜだと思う」


「昔の・・・あ、そうか。魔術を扱える者が少なかったから?」


「そうだ。今は国中に、世界中に魔術が普及した。魔術なんて珍しくもねえ。ガキでも魔術で遊んでる。今の王宮魔術師ってのは、エリート魔術師候補の教育係とか、研究員みたいなもんさ。政治的な目で見ればお飾りだ。何か封印する時くらいしか派手な活躍の場はねえ」


 キノトと難しい顔で話をしていると、宴もたけなわ。そろそろいい時間になってきた。皆、酔も回って気分も上々、という感じだ。


「貴族とは・・・付き合う連中を考えろって言ったな」


「はい」


「俺も味方の振りして、本当は強烈な排斥派で、仲良くなった所でって腹づもりかもしれねえぞ。実はさっき黒っぽいなって言った3人こそが、あんたらの力になる奴らかも・・・近付けたくなくて、あんな話したのかも・・・ってな!」


 にやりとキノトが笑って、


「さあて、ここからが本題だ。勿論、見せてもらえるよな?」


「はい」


 マサヒデが雲切丸を差し出す。


「では拝見」


 キノトがすらりと雲切丸を抜き、ぐっと腕を伸ばして立ち姿を見て、顔に近付けて上から下までゆっくりと眺めていく。

 ふ、と鼻で笑って、


「なるほど。酒天切となら交換か。なるほどな。ふふふ」


 鞘に納めてマサヒデに返し、ちょっと凄みのある笑顔で、


「さっき王子が取り上げないって言わなかったら、文科省で無理矢理買い上げたぜ。それ、コウアンだな。しかもただのコウアンじゃあねえ。号は」


「さて。よく出来た偽物に銘を切るなど、よくある話です」


「言うねえ・・・確かによくある話だ。だが、俺にも王子にもバレてるぞ。教える気になったら鑑定に出せよ。取り上げやしねえからな。俺は、だけど。他に取り上げられてもそれは責任持てねえぞ。大事にしろよ」


「勿論です」


 ふ、と笑って、キノトは背中越しに手を振って歩いて行った。


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