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勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
第十一章 亡国の危機

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第100話


 翌朝、トミヤス道場。


 カゲミツがにやにやしながら浪人と向き合っていた。


「道場破り! 良いねえー。こないだもサカバヤシ流が来たけどさあ。抜けなかったもんな! な?」


 な? と門弟達にカゲミツが笑顔を向ける。


「・・・」


 が、門弟達はただならぬ雰囲気をこの浪人から感じていた。

 何だか変な・・・これは何人も斬っている者か?


「あんた、その辺のと、なーんか雰囲気違うなあ。出来るっつっても、まあそこそこ。俺には腕じゃあ届かねえって、あんたくらいの人なら自分で分かるよな? じゃあー、このー、嫌ーな感じはー・・・な、に、か、なー・・・」


 カゲミツが男の腰の物を指差す。にやり。


「それだ」「ふっ!」


 同時に抜き打ち。浪人の気合の声が響く。

 一瞬空け、ばら、とカゲミツの後ろの『勝即正義』の掛け軸が落ちた。


「はーっはっは! 当たらなきゃあ意味ねえなあ!」


 カゲミツが天井を仰いで笑う。


「うっ・・・つ・・・」


 浪人が目を見開いた。

 カゲミツは座ったまま動いていなかったのに、カゲミツの後ろの掛け軸が斬れた。

 いや、動いたのだ。が、見えなかった。


 浪人は道場の真ん中。

 カゲミツは上座。

 間合いの遥か外。


「おお怖い! 魔術が籠もった品だな。かまいたちの術でも掛かってるのかなあー。もう魔剣に近いくらいの得物だ。魔剣登録の申請、してみたかい?」


 よっこらせ、とカゲミツが立ち上がり、刀架から愛刀の三大胆を取る。

 隙だらけ!


「はあっ!」


 ふん! ふん! ふん! と浪人の刀が空を斬る。


「中々良い筋だ」


 にこにこ笑うカゲミツの後ろで、がららん、と小さく斬れた壁が落ちた。


「どうだい。刺客稼業なんか辞めて、うちに来ねえか?」


「何!?」「刺客!?」「おのれ!」


 刺客と聞き、門弟達が驚いて腰を浮かせる。

 カゲミツは門弟達に軽く手を挙げて押さえ、


「あんたの腕ならすぐ高弟になれそうだ。うちの理念は勝てば正義! 今の仕事と大して変わらねえだろ」


 言いながら、カゲミツがすらりと三大胆を抜き、浪人の前まで歩いて行く。


「一応、考えてはいたんだな。俺の三大胆は遠くを斬れる刀じゃねえ・・・が」


 にやにやしたまま、カゲミツの目がぎらりと光る。


「遠くを斬れても、当たらなきゃ意味ねえぜ。遺品を送る相手はいるかい」


「・・・」


「そうか」


 くるりとカゲミツが振り向くと、ずるっと浪人の上半身が斜めにズレて、どったん! と大きな音を立てて落ちた。


「はあ、大した事なかったな。得物に腕が全っ然追いついてねえ。やれやれ、マサヒデの野郎、がっかりさせやがる」


 ふん、と鼻を鳴らして三大胆を納めるカゲミツの後ろで、天井まで派手に血を吹きながら、斜めに両断された浪人の『下』が崩れ落ち、血と臓物が垂れる。


「誰か、その刀は直に触らねえように納めて、ヤセキ神社に持ってってくれ。急げ。明らかに変なの乗ってるから、箱とか袋とかに入れて、絶対に直に触るなよ。籠もってる魔術消えても良いから、祓ってもらってくれ。封印が必要なら封印してもらえ。馬あ使って良いが、走らせて落とすなよ」


「はい!」


 よ、と刀架に三大胆を置き、道場の方を振り向いて、はあ、と溜め息をつく。


「今日は掃除で終わっちまうなあ・・・誰か、今すぐ町に行って、冒険者ギルドでマサヒデに1人は片付けたって連絡入れろ。こっちも馬使って良いぞ」


「はい!」


 別の門弟が手を挙げ、


「カゲミツ様。マツ様は如何されましょう? もうお戻りされても平気でしょうか?」


 カゲミツが首を傾げて、


「ん? んー・・・一応、2、3日は居てもらおうか。他にも来るかもしれねえし」


 もう1人の門弟が手を挙げ、


「カゲミツ様、私は寺へ行って参ります。無縁仏の供養の用意と、大八車を」


「頼む。さーて、掃除掃除。掃除の用意! ったく・・・天井までかよ・・・マツさんに壁直してもらわねえとな」



----------



 不安で眠れない夜を過ごしたマサヒデ達であったが、冒険者ギルドから報せが届き、ああ、と胸を撫で下ろした。

 レストランで皆がテーブルを囲み、マサヒデが報せを皆の前で読む。

 カオルは念の為に以前のメイド姿に変わって、クレールの後ろに立っている。


「刺客は父上が言うには全然大した者ではなかったようですが、魔術の籠もった得物を持っていたそうです。かまいたちの術だったそうですが、掠りもせず終わった。だが、道場の壁が壊れてしまい、派手に血が飛んだので、掃除が大変。お陰で父上は不機嫌極まりないとか・・・マツさんは念の為、もう数日は道場に居ると。以上です」


 はあ、と皆が安堵の表情に変わる。

 シズクはがっくりと肩を落とし、


「やっぱ・・・全然心配いらなかったね」


「シズクさん、昨日、頭抱えてたじゃないですか」


「キノトさんが凄い刺客送るって言ってたろお! ビビっちゃったんだよ! マサちゃんも凄い顔してたじゃんか!」


「まあ、それはともかくですね」


「もう!」


 マサヒデがクレールの方を向いて、


「クレールさん。クラヨシの方は」


「まだ見つからないです。屋敷は首都の外にありますから・・・首都内の別邸にはいないみたいです。どこかに潜伏しているとなると、首都内でも何日かはかかるかも」


「ううむ」


 アルマダが腕を組み、


「城内に居るかもしれませんよ」


「えっ」


「クラヨシ様は陛下の養子。元々陛下のご親戚、ヒラマツ一族です。城内にも顔パスで入れます。絶対に安全な潜伏場所ですし、長く滞在してても全く不自然でない。クレール様の配下の皆さんでも、侵入は難しいでしょう? 城内、考えられませんか」


「あ・・・あるかも」


「もし居るとしたら、奥の居宅の方です。侵入は更に難しい。出来たとして、中で見つけたとしても、連れて出てくるのは無理では。のんびり尋問なんかしてたらすぐ見つかりますし、かと言って始末するのは以ての外」


 ぴいー! ぴいー! ぴいー!

 これは犬笛の音。レイシクランにしか聞こえない音だ。

 は! とクレールが顔を上げ、窓の外を向く。


「あ! 見つかったかも!」


「え?」


「今、忍の笛が聞こえました! レイシクラン一族にしか聞こえない音です!」


 すぐにレストランのドアが開き、船員姿の忍が入ってくる。


「クレール様。見つけました」


「ご苦労様。連れて来られる場所ですか?」


「ちと。あの方角と音の響き、おそらくアリミヤ邸におります」


 む、とアルマダが眉を寄せる。


「そっちか・・・アリミヤ様も親王、ご親戚ですから、ありますね。陸軍大将の屋敷、しかも陛下のご親戚。潜入は難しいでしょう」


「はい。潜入は出来ますが、連れ出すのはとても無理です」


「出来るんですか・・・」


 にやりと忍が笑う。


「ふふふ。レイシクランの忍も世界随一でございます。被害を出しても良いのでしたら連れ出す事も」


 ぴいー! ぴいー! ぴいー!


「む?」「あれ?」


 クレールと忍が窓の外を向く。


「発見の合図・・・むう、影武者であったか・・・しかと確認してから合図を出せ」


 ぴいー! ぴいー! ぴいー!


「何!?」「ええー!?」


 また発見の笛の合図。

 マサヒデ達には聞こえないので、驚く2人の顔から察するしかないが・・・


「どうしたんです? まさか、何人も居るんですか?」


「・・・3人、姿を確認出来ましたな」


「3人? 3人もですか?」


「これは他にもおるやもしれませんぞ。いくつも影武者を用意し、とても潜入出来まいという所に皆が潜んでいる。どれが本物か、ついぞ分からぬうちに」


 アルマダがにやりと笑う。


「良いことを思い付きました。全員捕まえて来れば良いのですよ。堂々と侵入出来て、必ず捕まえられる方法があります。例え城内であろうと」


「何ですと?」


 皆の目がアルマダに向く。


「潜入が難しい所は、キノト侯爵に連絡をして下さい。あの方は、陛下とも今の政権のほとんどの皆様とも、さらに軍とも懇意です。陛下のご即位前から奔走していた、苦楽を共にした仲間ですよ。普通に訪ねられます」


「なるほど! さすがハワード様!」


「ここで逃げ出す者がいたら、それが本物。ついでにキノト侯爵に、トミヤス道場に来た刺客は軽く返り討ちにあった、と教えておいてあげて下さい」


「承知致しました!」


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