第81話 再びリムスタングへ(前編)
最終章:エストリプス銀河最大惑星『ノワリクト』最終決戦編
ストラトバティスでの採取を終えた白キ戦艦は、漆黒の虚空を切り裂き、既にリムスタング宙域へと航路を伸ばしていた。
積み込まれた希少鉱物は即座に化学技術班へと運び込まれ、成分構造の解析と同時に、武器開発区画では加工工程が始まっていた。熱気を帯びた炉心の音と、技術者たちの短くも張り詰めた掛け声が、緊張感のあるリズムで響いてくる。
バルエクスでの壮絶な戦いから数十日。深い傷を負っていた仲間たちも、ようやく戦列に戻りつつあった。
静かに休憩スペースに腰を下ろし、窓の外の星を眺めていたミルトがぼそりと呟いた。
「次の目的地はリムスタングか……まさか、またあの星に行くことになるとはな」
その声音には、懐かしさと同時に、かすかな緊張が混ざっていた。
「ドギガイズの使ってたあの剣は……まだ保管されてるだろうか」
ハリーが言葉を重ねる。
「黄色の結晶体の力が消える前に採取された鉱物も、残ってるといいよね」
アゲハも同意するように小さく笑みを浮かべた。
「そうだな。ストラトバティスの鉱物よりは純度が落ちるだろうが、簡易武器としては十分使えるはずだ。俺たちに必要なのは、少しでも多く結晶体の力を引き出せる手段だからな」
コルトの低い声に、場の空気が再び引き締まる。
ナコが続けて、懐かしい名前を口に出した。
「ヒョウガさんや『蒸気の狼煙』のみんなは元気かな?」
「元気なんじゃない?」
ふいに軽快な声が響いて、ルクスが顔を覗かせる。
「ま、今回はほとんどが顔見知りだ。タワーにいるヒョウガに会えば、何かと融通も利くだろうさ」
コルトは肩を竦めて笑った。
一方その頃、リムスタングでの戦いに参加していなかったイクサは、既に完全に傷を癒やし、再び鍛錬を重ねていた。
白キ戦艦の訓練場。
乾いた木剣の音が甲高く響き渡る。
「やあぁっ!」
トックスの二刀から繰り出される斬撃。左右から襲いかかる刃筋を、イクサは軽やかに身体を捻り、足運びで流す。
回転とともに間合いを詰めると、素早くトックスの腹部へと拳を突き込んだ。
「ぐっ……!」
即座にバックステップで衝撃を逃がし、距離を取るトックス。その目は爛々と光り、次の動きを狙っている。
後方に跳ねて壁を蹴ると、反動を乗せた体勢から一気に斬撃を畳みかける。木剣が閃光のように走り、怒涛の速さで振るわれる。
イクサもまた、その一つ一つを受け流し、時に弾き返し、あるいは紙一重でかわす。稲妻のような剣閃と、風のように舞う体術。応酬は止まることを知らなかった。
「よっと!」
最後に大きくバク転して距離を開けたイクサは、汗を拭いながら大きく笑った。
「やるじゃねぇか、トックス!」
「へっ。イクサが寝込んでる間も、俺はずっと鍛えてたからな!」
互いに肩で息をしながらも笑い合う二人。
「よし! ならもう一丁いくか!」
「おう、まだまだいけるぜ!」
再び両者は構え合った。鍛錬の場に満ちる熱気は、やがて迫る戦いの前触れを告げるもののようだった。
それぞれが己の時間を過ごしながらも、白キ戦艦は着実にリムスタング宙域へと接近していった。
やがて、観測窓から見える惑星の姿に、誰もが黙り込む。
ここは、かつてドギガイズと死闘を繰り広げた場所――。
ヒューベルト、ルクス、コルト、ナコ、ミルト、ハリー、アゲハ。
七人は小型艇に乗り込み、大気圏を抜けて星の表層へと降り立った。
砂塵を巻き上げる風が彼らを迎え、リムスタングの大地が再びその姿を晒していた。
第82話『再びリムスタングへ(後編)』に続く。




