表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
最終章:エストリプス銀河最大惑星『ノワリクト』最終決戦編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/97

第76話 地獄の始まり

最終章:エストリプス銀河最大惑星『ノワリクト』最終決戦編

 バルエクスでの戦いから数日。

 エストリプス銀河最大惑星ノワリクト――その中心に位置する銀河政府の中枢、「統治の間」は、いまや戦場と化していた。


 大理石の床には無数の血溜まりが広がり、鎧をまとった兵士たちの亡骸が散乱している。燃え上がる炎が柱を焦がし、天井から落ちた装飾が瓦礫と化して積み重なっていた。その惨状のただ中に、エリムスは立っていた。


 焔と血の匂いをまとったその姿は、女神を思わせる優美さと、悪鬼を思わせる凶暴さを同時に宿していた。


「うふ。ごきげんよう、ジザーランド様。うふふ……」

 冷ややかに微笑むエリムスの視線の先、玉座にはノワリクト現統治者ジザーランドが腰を震わせながら座っていた。


 その瞳には、かつて見せたことのない恐怖が宿っている。


「エ、エリムスよ……な、なぜこんなことを……余に逆らうと言うのか……」


 声を絞り出すも、足は勝手に後ずさり、威厳を保つ余裕など微塵もない。


「わ、わかった。お、お前の指名手配は取り消そう……! ポストも今のまま四人衆のひとりとして優遇を……いや、四人衆の最高権威として迎えようではないか……!」


 必死の命乞い。しかしエリムスは、薄い笑みを深めるだけだった。


「うふ。ジザーランド様……ご存じでしょう? 四人衆のドギガイズとリリークスは、すでに死にましたわ」

 優美な仕草で神器の杖を持ち直す。

「残るはラークラと……そしてワタクシ。ですが、四人衆などという枠組みはもはや不要。ワタクシが欲しているのは――皇帝の座。銀河を統べる者としての玉座ですの」


「なっ……」

 ジザーランドの額から脂汗が流れる。


 エリムスはゆっくりと歩み寄りながら、淡々と告げる。


「大人しくその権力を譲渡くださるのでしたら……」


「や、やめ……」


 玉座から転げ落ち、腰を抜かしたジザーランドは、後ずさりしながら必死に命乞いを続ける。

「わ、わかった! 権力は渡す! 渡すから……助けてくれ、命だけは!」


 その言葉を聞いた瞬間、エリムスの表情がねじれた。

「――うふ。せめて苦しまずに殺して差し上げましょう」


 神器の杖を振るった刹那、水の竜が顕現し、鋭利な刃をもった鱗がジザーランドの身体を一瞬にして切り刻んだ。


「ぐぶぉがぁぁ……!」

 鮮血を撒き散らしながら倒れる統治者。だが次の瞬間、エリムスの左手から放たれた焔がその肉体を焼き尽くし、黒い灰と化した。


 燃えさかる玉座に腰を下ろし、エリムスは狂気を孕んだ笑みを浮かべる。


「愚かな男。ワタクシがしっかりとエストリプス銀河全体を征服し、もっともっと、うふ。最高に狂った面白い世界にして差し上げましょう」


 ――その一部始終を陰から見つめていた影があった。


「くっ……!」

 その影は懐から一枚のカードを取り出しかけた。が――。


「うふ。無駄なことはおやめなさい」

 血に濡れた玉座に優雅に腰かけたまま、エリムスが声をかける。


 影の持ち主――長身の男は息を呑んだ。


「……!」


「分かっているのでしょう。あなた一人では、どうにもなりませんわ」


 エリムスの目が妖しく光る。

「ねぇ……四人衆最後の一人。銀河政府筆頭秘書官――ラークラ」


 名を呼ばれた男は沈黙した。やがてカードを仕舞い、ゆっくりと歩み出て玉座の前に跪いた。


「すぐに惑星放送の準備をなさい」


 命じる声は甘く、同時に絶対的だった。

「新たなるノワリクトの統治者として、ワタクシ自らがご挨拶いたしますわ。……そして、新たな星の在り方についても。うふふ」


 ラークラは深く(こうべ)を垂れ、震える声で言葉を紡いだ。

「……おおせのままに。新統治者、エリムス様に……栄光あれ」


 統治の間を満たす焔と血煙の中、ひとつの銀河の権力構造が完全に塗り替えられた瞬間であった。

第77話『最後の希望』に続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ