表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第一章: 『ノワリクト』脱出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/97

第7話 第五層侵入作戦(前編)

第一章: 『ノワリクト』脱出編

 銀河環内線の貨物専用ルートを走る非正規鉄道は、都市の底層をくぐり抜けるようにして滑る。車輪の軋みひとつすら抑え込んだ静寂の中、外壁のすぐ向こうを、光を撒き散らす巨大配管や動力炉の冷却管が通り過ぎていく。壁面の赤錆色が、非常灯の薄い朱色に滲み、列車の影と溶け合っていく。


 中央車両の円卓には、ナコ、コルト、ハリー、ミルトの四人が腰を下ろしていた。円卓の上には小型ホログラム投影機が置かれ、淡い青の光がふわりと広がる。その中心に、銀河中央図書館第五層『留置の間(ジェイル・ルーム)』の三次元構造が現れた。複雑に絡み合った通路、搬入口、監視ルートが網目のように浮かび上がる。


 コルトは腕を組んだまま、低く言った。

「作戦の流れは確認しておこう。貨物専用ルートは、都市の心臓みたいなもんだ。食料も書物も燃料も、全部ここを通って運ばれる。当然、重要施設には個別のセキュリティがある」


 ホログラムが切り替わり、赤くマークされた二箇所のゲートと、その周囲を巡回するドローンの軌跡が示される。

「銀河中央図書館第五層の場合、最初に立ちはだかるのは二箇所の生体認証ゲートだ。それと、監視ドローンの巡回エリア。この二つについては、今俺たちが乗ってる列車のステルス機能が効いてる限り問題ない。奴らのセンサーには、この車両は“存在しない”」


 ミルトが頷き、椅子を回転させながら言葉を足した。

「ただし、搬入口に着いたら話は別だ。そこにも認証ゲートがある。昼間は警備員が詰めてるが、夜間はゼロ——コルトが図書館技師だった頃から変わってないはずだ」


 ハリーが指先でホログラムの搬入口を拡大する。

「ここから先は時間との勝負。搬入口に到着した瞬間、コルトが図書館のシステムにハッキングをかける。セキュリティのプロトコルは把握済み、多少の更新なら対応できるはずよ」


 ナコは黙ってその言葉を聞きながら、膝の上に置いていた拳を握った。緊張から少しの汗が滲んでいる。


「システム制御を奪ったら、おまえの出番だ」


 コルトがナコに視線を向ける。

「館内のデータルートからアゲハの居場所を割り出し、最短ルートで行ってもらう。そのために——」


 ミルトが懐から小さな銀色のイヤリングを取り出し、ナコの掌に乗せた。冷たい金属の感触と、内部で微かに震える動力の脈動。

「通信型だ。館内を進む間、ハリーが安全なルートを逐一指示する。耳元で声がするから、迷うことはない」


 ナコは頷き、イヤリングを握りしめた。

「……わかりました」


 ハリーが淡々と言った。

「ただし、『留置の間(ジェイル・ルーム)』内では深夜でも人間の警備が配備されている可能性がある。ドローンやロボット兵ならシステムで抑えられるけど、人間は無理。異変に気付かれたら、即刻警報が走るわ」


 コルトの声が鋭くなる。

「使える時間は、ハッキング開始からおよそ十分程度が限界だろう。五分でアゲハのいる場所に到達、五分で戻る。それ以上は——逃げ切れないと思え」


 列車はなおも静かに進む。外壁をかすめる光の流れが、ナコの横顔を淡く照らす。心臓の鼓動は高鳴っていたが、その奥底には、冷たい決意が沈んでいた。

 ——絶対に、アゲハを連れ戻す。

第8話『第五層侵入作戦(後編)』に続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ