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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第五章:禁止惑星『バルエクス』戦争編

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第67話 回想:古代レスポリア王国-二千年前- ①

第五章:禁止惑星 『バルエクス』戦争編

 二千年前。古代レスポリア王国。

 その王城奥深くにある重要会議室には、重苦しい空気が充満していた。


「ノワリクト様。試算結果が出ました。この銀河は……おそらく持ってあと一、二年で完全に消滅するでしょう。既にいくつかの星はブラックホールに飲み込まれ、跡形もなく消え去っています」


 白衣の学者が淡々と告げる声は、重く石壁に反響した。


 最奥の席に座る王、ノワリクトは深く目を閉じ、低く言葉を吐いた。

「……覚悟を決めねばならぬのかもしれんな。国民には黙っておけ。避けられぬのならば、わざわざ無用な混乱を招く必要はない」


 王の言葉に、長机を囲む重臣たちは一斉に俯いた。


「真実を知っている我々こそが、冷静に国の行く末を見据えるべきだろう」

 その一言で、部屋の空気は氷のように固まり、誰もが口を閉ざす。


 重苦しい沈黙を破ったのは、荒々しい声だった。

「なぜ俺様たちが、破滅を大人しく待たなきゃならない」


 言ったのは筋骨隆々とした巨躯の男、武将ギリガン。


 その傲然たる声に会議室がざわついた。


「銀河が消えゆく運命だからといって、ご丁寧に道連れになってやる必要もねぇだろうが」

「……どういうことだ?」ノワリクト王が険しい目を向ける。


「決まってんだろう! この銀河が消えるなら、別の銀河へ星ごと転移しちまえばいいんだよ!」


「馬鹿な! そんなこと……できるわけがなかろう!」


「戯言を!」

 重臣たちが一斉に声を荒げる。


 しかしその中に、冷静な響きが割って入った。

「……いや。ギリガンの言うことも、一理あるやもしれぬ」


 重鎮のひとりが呟く。

「星ごとではなく、真実を知る我々だけなら……不可能ではないのではないか?」


 その言葉に会議室はさらに騒然となった。


「国民を見捨てるというのか!」

「国民は所詮、働き手だ。転移先で新たな住民を支配下に置けば良いだけのこと」ギリガンが吐き捨てるように言った。


「なんと非道な……それでは侵略と変わらぬではないか」

「弱きものを強きものが支配する。それは自然の摂理だ! このまま死を待つなんざ御免だぜ!」


 会議室の空気が荒れる中、ノワリクト王は一度、深く瞼を閉じた。

「だとしても……空間転移など不可能だ。ましてや銀河の跳躍など」


 静かに応じたのは、一人の青年だった。

 白衣をまとい、研ぎ澄まされた知性の輝きを瞳に宿す青年科学者――シャクイガ。


「……いいえ。可能かもしれません」


 その一言に、会議室の視線が一斉に集まった。


「おぉ! 可能なのか、シャクイガよ!」ギリガンが椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がった。


「ブラックホールの力を吸収する“器”を作るのです。その神器に、膨大なブラックホールのエネルギーの一部を閉じ込める。全てを飲み込む破滅の力を利用し、時空間に歪みを生じさせれば……別の銀河に穴を空け、転移することは理論上、不可能ではありません」


 静かな声だったが、言葉は鋭い刃のように響いた。


「……しかし、神器などどうやって作り出す?」王が問い返す。


「神器の材料は暗黒物質(ダークマター)。ブラックホールが星を飲み込む際に、稀に物質化する結晶体。それを加工すれば、神器の基盤となる結晶核を作り出せます。そこから先は、レスポリアの技術で造形が可能でしょう」


 会議室が再びざわめいた。

「できるのか……?」王の声は震えていた。


「やってみる価値は、大いにあるとお答えさせていただきます」


 その瞬間、ノワリクト王は玉座から立ち上がった。

「最近消滅した惑星の周辺をすぐに調査せよ! 結晶化した暗黒物質(ダークマター)を一片残らずかき集めるのだ!」


「くくく。なら俺様が行ってやるよ!」ギリガンが獰猛な笑みを浮かべる。

「その代わり……俺様は貢献した男として、転移先の新国家でそれなりに暴れさせてもらうぜ。構わねぇだろ?」


 ノワリクト王は一拍の沈黙を置き、低く答えた。

「……検討しよう」


 こうして、古代レスポリア王国の歯車は大きく軋みながら、新たなる破滅と狂気の道を歩み始めた。

第68話『回想:古代レスポリア王国-二千年前- ②』に続く。

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