第61話 中央塔リリークス戦(前編)
第五章:禁止惑星 『バルエクス』戦争編
広間の階段を駆け上がった一行は、重厚な扉を押し開けた。
目の前に広がったのは、予想を超える異様な空間だった。天井へと伸びる円柱群が幾何学的に並び、その全てが特殊金属で組まれている。ドームの中央には白く脈動するように輝くエネルギー結晶体が浮かび、広間全体を神聖にも妖しくも見せていた。
その結晶体の前――透き通るように美しいクリスタルのテーブル。その椅子に足を組み、左手で頬を支えながら肘をついて悠然と腰掛けている男がいた。
「……リリークス」
コルトが唸るように名を呼んだ。
「くく……あははははは」リリークスは愉快そうに笑い声を上げる。
「どうだい? ここに着くまでの余興は楽しめたかい? 銀河指名手配の諸君と、目障りな白キ戦艦の人間よ」
「余興だと……ふざけるな!」コルトが叫ぶ。
「少なからず、ここに来るまで俺たちの前に立ちはだかった兵隊たちは命を懸けていたはずだ。それを余興と笑うとは……性根が腐りきっているな」ミルトが続いた。
リリークスの笑いが止まる。
「……あぁ、せっかく楽しい気分になっていたのに……興覚めだ。やはり人間は愚かで下等な生き物のようだな」
椅子から立ち上がり、結晶体を背にしながら一歩、また一歩と前に出る。その眼差しには、底知れぬ光が宿っていた。
「はん! お前も人間じゃねえのかよ」イクサが挑発する。「俺からしたら、あんたの方がよっぽど愚かで下等にしか見えねえぜ!」
「……ヒューたちはまだ辿りついていないみたいだな」ロックが低く言う。「油断はするな。見たところ、このフロアにはリリークスの姿しか見えないが、交戦が始まればどこから伏兵が出てくるかわからん。それに、やつ自身も相当な腕前だろう」
「あぁ……余計な邪魔が入る前にリリークスをねじ伏せて、白の結晶体を確保する」
コルトが武器を構える。その動きに応じ、仲間たち全員が武器を構えた。
リリークスが不敵に嗤う。
「いいだろう……実力の違いというものを虫けらに見せてあげようか。それに、お前たちはいい実験体になりそうだ! 新たな複数同位体を作り出すなぁっ!」
その言葉と同時に、リリークスの両手の形状が不気味に変化していく。
右手の天使の掌は淡い光を放ち、左手の悪魔の爪は黒い刃を伸ばしていた。
「あれが……ヒューベルトが言っていた一部の複数同位体化か」ハリーが息を呑む。
「悪魔の爪と天使の掌……来るぞ!」ミルトが叫んだ。
瞬間、リリークスの右手が振り抜かれた。
横一面に無数の光弾が降り注ぐ。
ナコたちは一斉に左右へと散開し、武器を構え攻撃態勢に入る。
「短期集中でぶっ倒してやるぜ!」
跳躍したコルトがすぐさまフリーズガンを撃ち放った。氷の塊がリリークスを襲い、その瞬間にロックが変幻自在の鋼鉄の糸で足下を狙う。
「ほう。小賢しい」糸は避けられたが、その瞬間にはイクサが既に懐まで走り込んでいた。「くたばりやがれぇ!」強烈な右足がリリークスに叩き込まれる。
しかし――渾身の蹴りはリリークスの左手、悪魔の爪に弾かれ、すぐさま右手の天使の掌がイクサの腹部に向けられた。
「ぬぉあぁぁ!!」「カマイタチ!」
瞬間、ミルトが地面を叩きつけ、瓦礫を撒き散らし、ナコが魔杖銃を振り抜くと、風の刃に瓦礫の塊が乗って、リリークスを切り裂くように襲う。
「ふん!」
リリークスは軽やかに後方へ跳び、刃と瓦礫を避けたが、そこに待ち構えていたのはハリーだった。
「くらいなっ!」
チャージガンから放たれた光弾が直撃し、爆煙が広間を覆う。
「やったか!?」コルトが叫ぶ。
しかし、煙の中から現れたリリークスは無傷だった。背中から生えた白と黒の羽――天使と悪魔の翼が、盾のように彼の身体を覆っていたのだ。
「くく、あははははは! 面白い……面白いじゃないか!」
リリークスの笑いが広間を震わせる。「もっと抗え……私に抗ってみせろ!」
「ち、そう簡単にゃいかねぇか……」コルトが低く唸る。
「あぁ。白と黒の羽……やつが自称している通り……もはや人間じゃないな」ロックが呟いた。
第62話『中央塔リリークス戦(後編)』に続く。




