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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第五章:禁止惑星『バルエクス』戦争編

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第52話 ヒューベルトの過去ー十五年前ー(後編)

第五章:禁止惑星 『バルエクス』戦争編

「……これが、俺がバルエクスの内部に詳しい理由だ」

 ヒューベルトの声は低く、重く響いた。


 コルトたちは息をのむ。


「そんなことが……」ナコが静かに俯いた。

「……あんたの、あの強さの納得がいったよ。結晶体の力か……」コルトが呟く。

「あぁ。だが俺の結晶体の力は完璧なものじゃない。中途半端なものだ。だからこそ自我をなくさなかったってのもあるだろうがな」


 再び沈黙が場を支配した。


「その海賊帽子は……もしかして」ミルトが口を開く。

「シゼルの帽子だ」

 その答えに空気がさらに重く沈み、言葉を失った。


 しばしの間を置いて、椅子に腰かけていたミカエルが静かに語り出した。


「……あの日、白キ戦艦は銀河政府の闇を暴き、非人道な扱いを受ける人たちを救うために、バルエクスへ突入しました。結果は今、ヒューベルトが話した通りでが、あの時救出できた人々は今も白キ戦艦の住民区画で暮らしています」

 ミカエルは視線を落とし、続ける。

「だが、銀河政府の非人道な実験は今も続いている。その行いを到底許してはおけない。白キ戦艦のもと、そうした惑星を少しでも救い、そしてその行いを主導しているノワリクト政府を裁くために我々は動いているのです」


「……あんたたちの目的、か」コルトが小さく頷いた。


「だけどよ」イクサが腕を組む。「なんでその白キ戦艦を、今はあんたが仕切ってるんだ?」

「志を継ぐことが、俺にとっての生きる意味となったからだ」ヒューベルトが静かに答えた。


「ヒューはよくやってくれてるよ」ロックが短く口を挟む。


「もとはミカエルが継いでいたんだけどね」イリナが穏やかに補足する。

「我々全員で決めたことだ。ヒューベルトは今じゃこの艦に住む人たちの希望だからな」ミカエルがわずかに笑みを見せた。

「……わかっている。その責に恥じぬよう、俺は行動するだけだ」ヒューベルトの声には重みがあった。

「そういうことだよ! キャプテンは皆に信頼されているんだから!」ルクスが場を和ませるように明るく言った。


 その声に、ナコがふと視線を向ける。


「でも、ルクス……くんも、治療の手際の良さとか、リムスタングでの尾行能力とか、何気にすごいよね。身のこなしも……」

「キャプテンの役に立ちたいから色々努力したんだよねー」ルクスは笑って答える。

「実際、ルクスはこんな風に見えるが、相当な努力をしてきているし、勉強家でもある。我々も見習うべき点は多い」ミカエルが真顔で言う。

「いっつもヒューにくっついてるしな」ロックが茶化すと、

「にひひ。そこが定位置だからね」ルクスが子どものように笑った。


 そのやり取りを受けて、ヒューベルトは皆を見渡した。


「これで俺たちの目的はわかったはずだ」

「あぁ」コルトが頷く。「俺たちの目的は結晶体の秘密を知り、銀河政府の闇を暴く。そしてジャコウの目的を知ること」

「利害の一致だな」ハリーが短く言った。


 ヒューベルトの声が再び重く落ちる。


「だが気を付けろ。おそらくバルエクスは着いた瞬間から戦場となる。俺たち白キ戦艦、お前たちに加え、銀河政府も最大の戦力を総じてくるだろう。そして未だみえないジャコウの動き。単独で動いているエリムス……かつてないほどのたくさんの思惑が動いている」」

「……あぁ。万全の準備が必要だな」ミルトが表情を引き締めた。


「とはいえ、バルエクスはエストリプス銀河の果て。到着まではまだ時間の猶予がある」ヒューベルトが息を吐く。「あまり気負わず、身体を休めておけ。作戦がまとまり次第、こちらからもまた連絡する」


 ミカエルが優しく続ける。

「皆さんには住民区画の宿泊施設を用意しました。大浴場もありますから、まずはゆっくりと身体を休めてください。アゲハさんも間もなく回復するでしょうから」


「風呂っ! 最高だよ! 早く行こうぜ!」イクサが声を弾ませると、緊張の場にわずかな笑顔が広がった。

第53話『決戦前夜(前編)』に続く。

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