第44話 蒼黒の神殿と動く巨象(中編)
第四章:禁止惑星 『グリムジャガー』編
巨象の拳が床を砕き、瓦礫が飛び散る。咄嗟に転がり避けたコルトが叫んだ。
「ふざけんな! あんなもんどう対処したらいい!」
「あれも……結晶体の力なの?」ナコが力いっぱい声を張る。
「どうりでよ! あんなんが守ってりゃ警備兵なんざいらねぇだろうよ!」コルトは身をひねり、飛んでくる石片を回避しながら叫ぶ。
「どうする! 一旦退くか!」ハリーが素早く転がって瓦礫を避け、銃を構えて巨象に連射を浴びせる。
反対側からアゲハも二丁のブーメラン型銃を放ち、光弾が巨象を叩いた。だが、石の体はびくともしない。
「無理だ! 石の巨象に銃弾は効果ないだろう!」
イクサが巨象の足元に滑り込み、振り向いて鉄拳を叩き込む。石片がわずかに飛ぶが、巨体は揺るがない。
「いってぇぇ! 固すぎだろ、このデカブツ!」
「俺も行く!」ミルトが強化手甲を構え、同じく足を狙って渾身の一撃を打ち込む。しかし飛び散るのはほんのわずかな破片だけ。直後、巨象の足が振り上がり、二人はその風圧だけで吹き飛ばされた。
巨象は巨大ゆえに攻撃の軌道は読める。だが、一瞬でも気を抜けば潰されかねない。
「くそっ……! 対処法が浮かばねぇ! いったん神殿から離脱して立て直しだ!」コルトが皆を手招きする。
その瞬間、巨象は広間の唯一の通路を叩きつけた。轟音とともに石壁が崩れ落ち、瓦礫で道が塞がれる。
「おいおい、逃げ道を……塞ぎやがった!」
続けて巨象の足が、固まっていたコルトたちの上に振り下ろされる。
「ちぃ! 間に合わねぇ!」
「カマイタチ!」
少し離れていたナコが魔杖銃を振り回す。巻き起こった風が仲間を吹き飛ばし、巨象の足が地面を叩く直前に散開させた。床が砕け、石片が雨のように降り注ぐ。
「危機一髪かよ! ナコ、ナイスだ!」それぞれ受け身を取り、再び立ち上がる。
「だが、逃げ道は塞がれた。攻撃も効かねぇ。こりゃ本格的にやべぇぞ……」コルトの声は低い。
「あの……巨象の額から結晶体を外すことができたら、なんとかならないかな!」アゲハが叫ぶ。
「確かに……動力源は間違いなく結晶体だろうな」ミルトが頷く。
「だがどうやってだ! あの高さだぞ! 動き回る巨象相手に、額まで登りきるのなんて無理だ!」ハリーが歯を食いしばる。
「それに……結晶体だってそう簡単には外れねぇだろ」コルトが唸った。
だが、イクサが拳を握りしめる。
「いや……いけるかもしれない。さっき足を殴った時、ほんの少しだけど一部を削り取ることはできた。石は石だ。俺とミルトで渾身の拳を叩き込めば、結晶体のまわりを削って分離させられるかもしれない!」
「いけんのか!」コルトが叫ぶ。
「どのみちそれしか生き残れる道はない!」
「だが、どうやって額まで行く!」ハリーが声を張る。
「俺とミルトが渾身のジャンプで飛ぶ! その瞬間――ナコ、お前が魔杖銃で俺たちの背中に全力の風を叩き込め! その勢いで額までぶっ飛んで、一気に拳を打ち込む!」イクサの目がギラついた。
「でも……!」ナコが口を開くが、
「どのみち最後の賭けだ! やるしかない!」イクサがミルトを見据える。
「いけるか!」
「あぁ……やってやる!」ミルトの手甲が唸る。
「よし、次に奴が拳を地面に叩き込んだ時がチャンスだ!」
巨象が咆哮のように地を揺らし、拳を振り上げた。
「来るぞ!」
轟音とともに石の拳が床を叩き砕く。
「今だぁぁぁぁぁっ!!!」
イクサとミルトが全力で走り、跳躍する。
「ナコっ!」
「カマイタチ!!!」
背中に吹き込む風が爆発的な推進力となり、二人を宙へ押し上げる。
「うっしゃぁぁぁ!!!」
「いっくぜぇぇぇ!!!」
二つの拳が巨象の額を打ち抜いた。石が砕け散り、青色の結晶体が弾かれて飛び出す。
その瞬間――アゲハがブーメラン型の銃を投げ込む。回転しながら飛んだブーメランが結晶体を弾き、床に叩き落とした。
巨象の動きが止まった。次の瞬間、両膝をつき、全身が亀裂に覆われ、音を立てて崩れ落ちていく。
石の巨体は粉砕され、広間には瓦礫の山だけが残った。
第45話『蒼黒の神殿と動く巨象(後編)』に続く。




